塾生講座 レビュー⑨

2017年03月30日

この1年間の活動も終盤に差し掛かる、2月18日に行われたレビューでは、3月に行われる公開発表会の内容を検討しました。今年度の発表会は、大三島のプロジェクトを東京のみなさんに知っていただくとともに、今治市に向け来年度への取り組みをアピールすることを目的とします。

私も塾生講座に参加して1年間、周囲の塾生のみなさんの苦労話を聞いたり、相談をしたりしながら活動を進めてきましたので、そんな回顧も含めながら報告します。発表内容はネタバレになるので割愛です。

農・食は、伊東建築塾が最も力を入れている分野です。

農業チームは、ほぼ月に1回の頻度で大三島入りし、野菜の苗植え・収穫、島産食材を使った料理教室から、島最高峰の鷲ヶ頭山で「わしがとうさん」と叫ぶイベントまで、現地の人と触れ合いながら、さまざまなイベントを立ち上げてきました。そのエネルギーはすごいの一言でした。

おおみしまーけっとチームは、島の食材をコーディネートして料理としてパッケージ化し、販売することを目指してきました。伊東建築塾には物販の経験がないため苦闘しながらの活動でしたが、このチームがつくったイノシシレモン鍋は絶品です(夏でもスープとして楽しめます)!ぜひ多くの人に食してもらいたいと思います。

両チームの共同で以下のプロジェクト提案を行います。

プロジェクト① 農家をつなぐ、ゆるやかな共同体をつくる「みんなの農業プロジェクト」
プロジェクト② 農業と食のスクールを行う

衰退が進む大三島神社参道の活性化は、伊東建築塾が長年試行錯誤をしてきた分野です。

屋台チームは、ハーバード大学デザイン大学院の学生が発案した参道をにぎわす移動式屋台を、いかに具現化するかという、チャレンジングなプロジェクトに挑んできました。“エリート大学生には負けられない”という意地とプレッシャーもあったでしょう。初めて参道で屋台が動いたときには思わず喝采したものです。その後参道を盛り上げる立場から、参道を花々で埋めようという新機軸を打ち出しました。屋台とハナミチを増やしていってもらいたいです。

下記の提案を予定しています。

プロジェクト③ 大三島をみんなの家を緑や花で彩る

大山祇神社参道の真ん中に位置する「大三島みんなの家」に駐在している久保木祥子さん。彼女の発想で、お金を介さない物々交換で、島民の間に新たな人間関係をつくっていくという取り組みが進められています。この活動の拡大を提案します。

プロジェクト④ 都市と島をつなぐ物々交換の仕組みをつくる

参道活性化チームは、大三島公民館のエントランススペースのリニューアルを検討してきました。地元の関係者と膝を付き合わせた話し合いを進め、信頼関係を構築し、推進力に変えていった粘り強さには頭が下がります。本プロジェクトは市の予算が下りない限り何ともならない話。市に向けたアピールに精力的に取り組んでいます。

プロジェクト⑤ 大三島公民館・図書館を人びとが集う場にリデザイン

古い建築物の改修、新たな施設の設計は、伊東建築塾が得意とする分野です。

神奈川大学曽我部・吉岡研究室の学生さんからなるチームは、頻繁に島に行き、古民家の改修、休憩所の設置などを精力的に進めています。先生の推進力に学生さんのパワーが加わり、塾の中でも技術力・実行力No.1です。この研究室の助教を務める吉岡さんと伊東豊雄建築設計事務所が協力し、昔の小学校から改築された「大三島ふるさと憩の家」という民宿の改修も来年度より本格的に動く予定です。

プロジェクト⑥ 大三島ふるさと憩の家を改修する

オーベルジェチームは、アイデア豊富なチームで、ぶどう畑の休憩小屋、イノシシ被害を防御する柵、国内のワイナリー調査など、多彩な活動を行ってきました。伊東先生とともに一番多くワインを楽しんだ羨ましいチームでもあります。昨年のTokyo Design Weekでは伊東建築塾のブースの目玉となる「建築みくじ」の神棚もつくってくれました。

このチームからは、周辺の植生、ぶどう畑とのバランスが取れたとオーベルジェの提案がなされます。

プロジェクト⑦ 大三島みんなのワイナリーの充実とオーベルジェの設計

近年取り組みを始めた分野として、島の生活の充実につながるソフト面での提案があります。昨年度から検討を進めてきた下記のプロジェクトが再提案されます。

プロジェクト⑧ 空き家を改修し、シェアハウス・シェアオフィスとして再生
プロジェクト⑨ 新たなトランスポーテーションの可能性を広げる

また、ガイドブックチームは大三島の魅力を発信する仕掛けの検討を進めてきました。ガイドブックのコンセプトについて相当悩みながら、いくつも案を作成し、最終的に都市住民に対する情報発信手段としての「大三島の未来新聞」という方法に帰結しつつあります。

私も所属しているブランディングチームは、“大三島をブランディングする”というざっくりしたテーマの下、“島に密着するか”、“都市向けにブランディングするか”などの方向性に悩みました。最後には“島がこんなふうになったら私たちも愉しい。そんなことを提案・プロモートする”というコンセプトに到達し、参道マーケットのPR支援、地域産品イノシシ肉のプロモーションイベントの企画開催やブランドマークの作成、Tokyo Design Weekへのコンテンツ制作などを進めてきました。

両チーム共同で、以下の提案を行います。

プロジェクト⑩ 大三島への旅(近未来編)

3月18日の発表会は、今年度のフィナーレ。今年度の試行錯誤を踏まえた、未来型の提案を行いますので、お楽しみに。

塾生 中野浩介