塾生限定講座 夏期合宿(1日目)

2014年08月26日

7月26日、快晴。松山空港からバスに乗り込み、2014年度塾生限定講座の夏期合宿がスタートしました。

4017

まずは、今治港湾ビルにて、原広司+アトリエ・ファイ建築研究所の沖野優さん、今治市中心市街地再生協議会 みなとにぎわい部会代表の友田康貴さん、事務局の三谷秀樹さんから、今治市のみなと再生事業について伺いました。

4025

今治では、しまなみ海道の開通後、生活の足が船から車へと変化したこと等に伴って衰退した今治港の再生を目指し、行政が建築等のハード面を、市民が賑わい創りのソフト面を分担し、8年にわたり協働を続けています。みなと再生のテーマは、「交通の港から交流の港へ」。原広司さんが設計するみなと再生区域は、600メートルに及ぶ海のコンコースを持ち、瀬戸内の島々へつながる海と陸とを架橋する自由な空間として、市民ののびやかな活動を受け止めます。他方、市民も、数度の事業見直しを迫られながらも、「新しいみなとに賑わいを創るのは自分たち」という共通の意識のもと、倦まず弛まず数々のプロジェクトを推進しています。何より自分たちが楽しんでいるという爽やかな笑顔のもと、行政側の結論を待つのではなく与条件の下でできることを続け、各々が根を張り、たとえ何年かけてでも、点から線、線から面へつなげていく潔さと深い覚悟が印象的でした。

4042

その後は、塾生の皆で今治の町を散策し、老舗のうどん店でもちもち麺に舌鼓を打ったり、今治にゆかりの深い丹下健三の建築を見学したり。商店街では思いがけず、みなと再生事業についてお話を伺った三谷さんに再会し、更に再興への思いを伺うこともできました。

4110

午後は、今治市民会館において、東洋文化研究者であるアレックス・カー氏と伊東塾長によるトークイベント「美しき日本を求めて」に参加しました。

4159

アレックス・カー氏は、失われつつある日本の美しさに関して、日本では昔ながら景観の美しさを語ることは経済発展の理念に反するとされてきたが、今日、地方では人口が減少し、山、棚田、神社や寺院など、自然や人の営みが築いてきた景観を中心とする観光が最後の救いとなりつつあると述べました。土建国家の日本は、建築土木の公共事業が他の先進国の10倍に及び、必要性の乏しい事業が再検討の機会もないまま営々と行われ、技術力の誇示により景観が破壊されました。アレックス・カー氏は、約40軒の古民家を再生した経験や景観管理の先端技術を紹介し、古いかたちの日本を宿す何でもないものの魅力をいかに残しせるかが課題と語りました。本当の宝物は自らの掌の内にある、それに気づくことが必要、という「明珠在掌」という言葉が、強く胸に残った講演でした。

4297

夜は、皆で食事会。伊東建築塾の塾生に加え、神戸芸術工科大学の齊木崇人学長や学生のみなさん、建築家の遠藤勝勧先生ご夫妻や、同じく建築家の沖野優さん、青陽孝昭さん、今治市の職員の方々、伊東豊雄建築設計事務所の方々など、様々な人たちが入り混じり、杯を酌み交わすとても楽しく刺激的な会となりました。その後は、伊東塾長を囲みカラオケへ。楽しく歌声の響く夜更けとなりました。

塾生 辻 美和

(撮影=高橋マナミ)