子ども建築塾 最終回
先日の3月24日、子ども建築塾の最終回が行われました。1年間を通しての子ども建築塾のフィナーレです。
この日はそれまでの成果をA1サイズ一枚にまとめたボードを用いて自分の建築のプレゼンテーションを行います。
一人プレゼンテーションの持ち時間3分、講評が2分。全部で20人の塾生たちがいるので、子どもにとってはかなりの長丁場です。
審査員は伊東豊雄、村松伸さん、太田浩史さんが務めます。司会は、私、山本至がおこなわせていただきました。拙い司会ぶりでしたが、3名の先生方のするどい意見と、子ども達から飛び出す不意をつくようなコメントに助けられました。
子ども達のプレゼンテーションはみんな見事です。原稿を見る訳でもなく、ほとんどの子が建築の特徴や、設計理念について、的確に語るのです。正直に、小学生の子達がここまで見事なプレゼンテーションをするというのは予想外でした。
計ったかのように、3分間の時間をきっちり使う子もおり、彼等の努力の成果がボード以外からも感じ取れます。
2分の講評は、大学生達にたいする講評会とほとんど差はありませんでした。先生達からは敷地の特性についての質問がでたり、麻布十番と建物のコンセプトの関連についての質問がでたり、そしてそれらの質問に全く動じずに応答する子ども達。世界でもこんなことをしている小学生達はなかなかいないでしょう。
講評会では、子ども達からも互いのアイデアについての寸評をもらいました。先生顔負けのコメントを残す子もおり、終止盛り上がっていました。
最後に、子ども達全員に卒業証書として、伊東さんデザインのバッジを贈呈。その後村松伸さんと太田さん、そして伊東さんからそれぞれの賞状が贈られます。各賞2人ずつ選ばれました。
選定基準として3人の先生方に共通していたのは、都市的なスケールで物事を見ることができていたか。その一言に尽きるのではないでしょうか。その言葉通り、既存の建物を用いて動物園という機能を都市と共に考えることができていた案、そして植物が都市の中で生成していくように建築を考えていた案、この2つが見事伊東豊雄賞に輝きました。他の子達のアイデアも見事なものばかりで、小学生とは思えないほど洗練された案を披露する子もいれば、歳をとると発想しがたくなるような自由奔放な案をプレゼンする子もおり、非常にバラエティに富んだプレゼンテーションばかりでした。
交番がクリスマスツリーのように設計されており、祭事と共に建物が変化するアイデアはボランティアで来てくれていた学生達からは特に人気がありました。他にも段々状の菜園レストランは建築的にも非常に緻密に計画されており、その鮮やかな模型表現によって、誰もが訪れてみたくなるような雰囲気を持っています。村松賞に輝いたケーブルカーは、みんなの建物を繋ぐ役割を果たしており、都市交通の要ともいえる作品です。太田先生によるとコロンビアにあるメデジンという都市はケーブルカーを街に設置したことによって治安の良さが劇的に回復し、街としての魅力を取り戻したそうです。都市そのものをよりよく発展させる要素は、当たり前ですが建築だけの仕事ではないんだと、しみじみ感じました。
卒業証書授与、及び賞状授与が終わったあとは、お楽しみ会を開きました。お菓子やジュースで乾杯をし、一年間の労をねぎらいます。最後の別れを惜しむように、子ども達はあちらこちら走り回り、終止大騒ぎでした。
お楽しみ会の後は、伊東さん、村松さんを囲んで、ボランティアの学生達と共に懇親会をしました。その間、村松研の田口さんがずっとインタビューを撮影していたのですが、お酒もはいったせいかなかなか白熱した議論を繰り広げる方々が多かったです。
これで子ども建築塾の1年目が幕を閉じました。素晴らしいフィナーレになったと思います。1年間子ども建築塾のブログにおつきあいくださった皆様、誠にありがとうございます。来年度も継続してブログを続けて行きますので、楽しみにしていただけたら幸いです。今後とも伊東建築塾を見守っていただければこれほど嬉しいことはありません。ありがとうございました。
子ども達へ:
この一年間のみんなの成長ぶりには本当に驚かされました。
講評会の最後で、村松先生が言っていた言葉をおぼえていますか?
「良い建築家になりたいなら、建築だけでなく、様々なことをしなさい。」
これは僕もまさしくその通りだと思います。大学生になって、建築をやるということを決意したら、どのみちそれしかできません。以前、伊東先生から言われたがあるのですが、もし建築をやるなら、他のことをしている時間なんかない。ひたすら図面を描き、模型を造り、建築のことだけを考えていなきゃいけない。
だからこそ今のうちに様々なことを経験しておくのはとても重要です。本を読むなり、絵を描くなり、旅行へ行くなり。
正直言うと僕も、もっとそういうことをやっておけばよかったと後悔することがたまにあります。
それは建築の道に進まない人にも、全く同じことが言えます。
何の道に進もうが、様々な経験の総体によって人間はできています。
紋切り型の表現にはなってしまいますが、そういったことを積み重ねて、社会を変えるような人間になってください。子ども建築塾でみんなが学んだことが、その足がかりとなったら、こんなに嬉しいことはありません。
一年間おつかれさまでした。
また会える日を楽しみにしています。
ボランティアのみなさまへ:
一年間おつかれさまでした。
今まで小学生と接することはあっても、小学生と建築について語り合うことなんてなかったんじゃないでしょうか。こちらの拙い手際により、みなさまには苦労をおかけしたと思います。
ただ、この機会を通して、伊東さん、村松さん、太田さんが子ども達に語った言葉はみなさんにとっても大きなヒントとなったはずです。学生に語る言葉よりも子ども達に対して訴えかける言葉ほどダイレクトなものはないでしょう。そこから皆さんが何かを学びとっていただけたら幸いです。
皆様のおかげで楽しい1年間となりました。
引き続きお手伝いをお願いできる方々はよろしくお願い致します。