子ども建築塾 前期第5回
みなさま、こんにちは。東京大学大学院、村松研究室 修士1年の神谷彬大です。
子ども建築塾、前期第5回目の7月7日は、前回図面をトレースした「House NA」という住宅を、実際に見学しに行きました。
雨が降ったり止んだりする、あいにくの天気でしたが、子どもたちはわくわくしながらHouse NAに向かう住宅地を歩いていきました。
すると、突然現れるHouse NA。
玄関を入ると、決して広いとは言えない敷地面積の中に多様な空間が展開されています。
子どもたちも、そして私たちTAも興味津々で、階段を上がったり下がったり、
雨の当たらないテラスまで出て外部空間の気持ち良さを感じたり、この家の仕組みを実体験として理解していきました。
子どもたちも、前回描いた図面を思い出しながら、だんだんと自分のイメージしていたものとの違いを感じていきます。
例えば、トレースした時に思ったよりも柱が細い、ということ。あるいは、重なる床同士の間に、
図面では気づかなかったたくさんの隙間があること、そしてその隙間を介して色々な視線の行き交いが生まれていること。
ひと通り見学してから、House NAに住んでいらっしゃるご夫妻と、設計者の藤本壮介建築設計事務所のスタッフの方への質問タイムが設けられました。
Q「この家に住んでいて、良いことは何ですか?」
A「どこにいても声が聞こえることです。」
上から下まで、ひとつながりの空間では、どこにいても、常にお互いのことを感じることができます。
Q「この家にはじめて入った時、どう思いましたか?」
A「すごく広い、と感じました。」
小さい敷地面積の中に、普通の3階建てを作っても、狭いまま。何階建てとも言えない吹き抜け空間は、この家を何倍にも広く見せています。
そして、子どもたちにとっても、やっぱり気になるのはプライバシーのようです。
Q「まわりから見られたりして、恥ずかしくないですか?」
A「恥ずかしい時も、恥ずかしくない時もあります。」
実は、恥ずかしい時もあるんですね。でも、伊東豊雄先生がその気持ちをうまく代弁してくださいました。
「恥ずかしい時もあるかもしれないけど、朝日がたくさん入るお風呂に入ったり、すごく気持ちのいい風が通ったり、
その気持ちの良さの方が大きいから、少し恥ずかしくても、この家に住むことを選んでいるんだと思うよ。」
壁に囲まれた家に住むことになれてしまった私たちは、このように他にはないような不思議な家を見ると
「ここに住むのは、大変なのではないかな」と思ってしまいます。
でも、House NAに住んでいるご夫妻は、このような新しい住まい方を実践することで、
私たちが知らない楽しみを、たくさん知っているのだと思います。
子どもたちは、最後に自分のお気に入りの場所を見つけて、スケッチや感想を書きました。
風が良く通る場所や、一人分の大きさの場所…ひとりひとりが自分だけの場所を見つけられるのも、House NAのすばらしいところです。
次回からは、もう一度、自分の住みたい家について考えていきます。
今回の見学が、子どもたちの発想にどう生かされていくのでしょうか。とても楽しみです。