塾生限定講座 東北「みんなの家」ツアー(2日目)
白熱した夜塾から一夜明け、かつて宝来館さえも飲み込んだ海に震災への想いを馳せながら、東北「みんなの家」ツアー2日目が始まりました。
2日目の午前中、最初に訪れたのは宮城県東松島市の「こどものみんなの家」です。
伊東塾長と若手建築家の大西麻貴さんにより設計された「こどものみんなの家」は、Tポイント・ジャパンが運営・展開しているポイントサービス「Tポイント」による寄付を建設資金としており、内観までこだわった「テーブルの家」、トンガリ屋根の「あたたかい家」、まるい屋根の「お話と演劇の家」の3つの特徴的な建物が集まってできています。
©KAI NAKAMURA
“子供たちの記憶に残るもの”というテーマのこの家は、子どもたちに視点をおいて、可愛らしい外観だけでなく、わくわくするようなものが至るところに組み込まれていました。たとえば、「テーブルの家」の掘りごたつへと変身するテーブル。低めの天井の子ども用のトイレ。大西麻貴さんデザインの照明や、安東陽子さんデザインのカーテンなど。この場所で、子どもたちが笑顔で明るい声をあげながら遊んでいる様子が目に浮かびました。
「こどものみんなの家」にて昼食を済ませた後、続いて向かったのが東松島市宮古島の「みんなの家」です。坂を上ると見えてくるこの建物は、SANAAによる設計で、小学校に隣接して建てられています。外観・内観ともにとてもシンプルで、きれいな曲線が印象的でした。私たちが訪れたときは、完成当初よりも家具が増えたり、マットレスがひかれたりといった工夫が多く施されていました。
何より住民の方が嬉しそうにお話されていて、建物が非常に愛されているのが伝わってきました。隣接している小学校は数年後には廃校になってしまうそうで、この「みんなの家」の役割もまた少しずつ変わっていくような気がします。
三軒目に訪れたのが、仙台市宮城野区の「みんなの家」。被災後、最初に建てられた「みんなの家」です。こちらでは伊東豊雄建築設計事務所の設計担当者である高池葉子さんと、歴代の管理人の方々にお話を伺いました。「コミュニケーションをとる場所が必要だった」と語る管理人さん。
この「みんなの家」の木材は、伊東塾長がコミッショナーを務める「くまもとアートポリス」を通じて、熊本県から寄付していただいたもので、そのご縁で熊本の学生さんたちもしばしばここを訪れ、周辺地域の人々だけでない幅広い方々とコミュニケーションをとれる場所となっていました。
東北「みんなの家ツアー」の最後に訪れたのが、宮城県岩沼市の「みんなの家」。こちらは農業支援を目的として建てられた「みんなの家」です。
木造平屋で、柔らかい土色の壁に土間、そして現代ではあまり見られないかまど。どこか懐かしくも感じられ、低めの屋根の下、おばあちゃんが「おいでおいで」と待ってくれているような、そんな安心感のある家でした。
ここでは、作りたてのみそピーナッツ(カリカリで美味しいんです!)を試食させていただいたり、ここを拠点に活動するNPOがんばッと!!玉浦副理事長の氏家義明さんと理事の谷地沼富勝さんが、震災直後の避難所でのリアルな体験や、当時の想いをお話しくださいました。
”何か新しいものを作り出していく”そうおっしゃっていた氏家さん。
現在、様々な企画を考え中ということで、これから「みんなの家」を中心に輪が広がっていくことを願います。
2日間にわたって開催された「みんなの家」ツアーも、これにて終了。仙台駅に向かう帰りのバスの中では、塾生1人1人が、この2日間で感じたことを発表していきました。
震災の土地で、同じ痛みは分け合えないけれども、何かきっかけを生み出すことはできる。私はこのツアーでそう強く感じました。
震災とともに建築を考えるツアー。
これほどまでに充実し、刺激を受けた2日間はないと思います。
このような機会を与えてくださったことに感謝致します。
震災後、私たちにできることとは。
議論はまだまだ続きます。
塾生 伊藤万里菜