塾生限定講座 台湾ツアー(2日目)

2014年02月15日

台湾ツアー2日目の朝は、ホテルの1階にある食堂で朝食をいただきました。少々甘めの味噌汁と白米を食べながら、台湾に来ていることを実感しました。8時過ぎにホテルを出発し、本日午前中の見学先、台中メトロポリタンオペラハウスの現場へバスで向かいました。

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現場到着後、まずは会議室に集まり、伊東豊雄建築設計事務所の藤江さんから台中オペラハウスの概要説明をしていただきました。

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10年前のゲント市のコンペティションに端を発する「エマージング・グリッド」は、水平にも垂直にも連続するチューブからなる空間構成システムです。そのシステムが今回のオペラハウスの設計の下地となっています。敷地は古い市街地からは離れており、比較的新しいエリアにあります。市政府公園から延びる軸線上にオペラハウスのファサードがあり、その間は緑豊かな空間が広がっています。建物は地下2階、地上6階建てとなっており、屋上には眺めの良いカフェが設けられます。その他の平面計画や3つのホール、構造など、一通りの説明をしていただき、いざ現場へ向かいます。

初めにメインエントランスから入り、左回りに1階部分を見学しました。その後、屋上を目指し、1層ずつ階段を上がっていきます。要所では伊東事務所のスタッフによる解説をしていただきました。2階部分は平面をつくるのが難しく、出入り口の開口を四角くするのが大変とのことでした。

続いて、中劇場と大劇場を見学しました。伊東事務所の水沼さんの解説によると、良い建築音響のためには、ホールの形状を調整することで、望ましい反射音分布と残響時間を実現しなければいけないとのこと。ところが、構造体をそのまま音響反射板として利用しているので、音響的に望ましい形状が構造的にはNGという兼ね合いが出てくるとのことでした。この矛盾する関係の中で、設計が行われていることを知りました。竣工した暁には、是非ともここでオペラを鑑賞したいと思いました。

階が上がるにつれ、太陽光の密度が増してきました。頭上に広がる楕円の天窓から差し込む光から、ローマの『パンテオン』を感じました。また、コンクリートを流し込む際のメッシュ型跡が残る壁面からは、バルセロナの『サグラダ・ファミリア』を想起しました。塾生の中にも同じ感想を持った方がいて、皆が天空から差し込む光と建物のシルエットに心を奪われていたような気がします。

光に導かれるように螺旋の階段を上ると、台中の街並みが見える屋上へ辿り着きました。この日は快晴で、屋上部分の鉄筋を溶接している方も暑そうでした。クレーンや溶接器具などから、建設途中の様子が伝わってきました。

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全階層の見学を終えた後、会議室に戻り、質疑応答を行いました。その日打合せのため偶然現場に居合わせた家具デザイナーの藤江和子さんからは、劇場で使用する椅子について解説していただきました。

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そして、最後は現場を担当しているスタッフひとり一人からのコメントがありました。「最初はまったく完成イメージが湧かなかった。設計だけでなく工事そのものが難しく、予算も足りなかったが、何とかここまで来た。最近では施工のスピードや精度も上がり、完成が見えてきた。歴史的な建物になると確信している。」といったお話に、全員が自信と誇りを持ってこの建築と向き合っているのだと感じました。

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最後に皆さんで記念撮影をして、現場の方々に見送られながら、名残惜しさを感じつつ、バスは台中駅へと向かいました。予定通り、12:22台中発の台湾高速鉄道に乗車し、車中でお吸い物付の台湾風駅弁の昼食をとり、およそ40分で高雄駅に到着しました。

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台中の天気とは打って変わり、高雄に着くと小雨が降ってきました。バスで見学先の高雄ワールドゲームズメインスタジアムに向かいます。到着後、はじめにプレスルームで高雄市政府の秘書長やスタジアムの責任者の方のご挨拶がありました。

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ワールドゲームズとは、オリンピックに参加していない競技の世界大会で、オリンピックの翌年に開催されているそうです。このスタジアムは、2009年7月に高雄市で開催されたワールドゲームズのメイン会場として計画されたもので、4万席を収容するスタジアムは、国際陸上競技連盟(IAAF)のクラス1を取得し、国際サッカー連盟(FIFA)の規格を満たした台湾で最初の国際レベルのスタジアムだそうです。大会後はスポーツ競技以外に、コンサートなどにも使用されているとのことでした。

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スタジアムの解説映像を観た後、場内の見学が始まりました。地下1階から地上に出ると、大型スクリーンに歓迎のメッセージが映し出されており、粋な計らいに感激しました。

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伊東事務所の古林さんの解説によると、このスタジアムの特徴は、閉じていないオープンなつくりにあるとのこと。外から中の様子を垣間見ることができ、直径318.5mmの白いパイプがスパイラル状に連続していることで、人々に躍動感を与え、アプローチの先端から観客席へと誘う効果もあるそうです。また、H鋼が組まれたトラスの上面には、太陽光パネルが設置されており、上から見ると鱗状になっているとのことでした。この様子を想像してみると、先端は尻尾で、スタジアムの渦巻きが胴体となり、全体で水神を現す『竜』のようにも思われます。願わくば気球に乗って、上空からその全貌を眺めてみたいものです。

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構造体はサドルと呼ばれており、観客席をくまなく支えています。その上にあるH鋼は、間にコンクリートを挟み、座屈を抑えているとのことでした。また、スタジアムは西日の影響などを考慮し、長軸を南北方向に設計するのが基本とのことですが、ここでは15度傾けているそうです。屋根の庇については、国内外問わずシビアで、設計上注意が必要とのことでした。観客席は東京ドームと同じ型のものを使用しているそうです。トラックレーンは青色にすることで、記録が伸びたという説もありました。また、競技上、風速を2m/s以上出してはならないため、1階レベルを地上レベルより掘り下げる工夫をしたとのことでした。

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場内を一通り見学した後、VIPルームに向かいました。VIPルームへのアプローチは一般客とは異なり、車寄せから直通の専用階段を下ったところに入口があります。室内に入ると、テーブルの上にケーキやマカロンなど、様々なお菓子が並べられ、コーヒーと紅茶が用意されていました。美味しいお菓子に舌鼓を打ちながら、室内でくつろぐ人、外のシートに座ってグラウンドを眺める人と、思い思いにVIP気分を味わっていました。

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優雅なひとときを過ごした後、一行は帰路につきます。スタジアムを出発するときは、雨の中にもかかわらず、高雄秘書長やスタジアムの皆さんが手を降ってお見送りくださいました。

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高雄駅到着後は、再び台湾高速鉄道に乗り込み、台北まで移動しました。さすがに疲れが出てきたのか、車中では短い睡眠をとる人も。台北駅到着後は、バスでホテルまで向かい、チェックインの後、本日の夕食会場であるレストラン「巷弄」へ向かいました。ここは、台湾の現地スタッフの方(ホウ)さんが予約してくださったお店で、ひっそりした住宅地にたたずむシックな門扉を通ると、これまで見てきた台北の雰囲気とは違う、落ち着いた空間が広がっていました。ワインで乾杯し、食事がスタートしました。

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丁寧につくられた美味しい料理をいただきながら、あっという間に楽しい時間が過ぎていきました。後半では、参加者ひとり一人が今回の台湾ツアーについて、あるいは一年間、塾生講座に参加して感じたことを思い思いに述べていきました。その中でも、建築家の古市徹雄さんの「私は大学で教鞭をとっていますが、大学は竹刀で教えているかのよう。伊東塾は真剣で教えているように感じた。」というコメントは印象的でした。

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こうして皆が一堂に会し、伊東塾長や塾生と一緒に過ごせたこの時間は、何ものにも代え難いものとなりました。最後に再び全員で乾杯し、盛り上がりを見せたところでお開きとなりました。

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その後はタクシーに乗って市内へ戻り、カラオケ、マッサージ、建築討論会など、それぞれの夜が更けていきました。

塾生 南宣宏