子ども建築塾 前期4回「見学会に行こう!」

2014年06月23日

こんにちは。子ども建築塾TAの山口絵莉一です。
6月7日に子ども建築塾前期4回目の授業が行われました。

前回の前期3回目の授業では中間発表が行われ、子どもたちが「自然のようないえ」のスケッチを発表し、伊東先生、太田先生からアドバイスをもらいました。さすがに前回は、始めから緊張した様子で、帰るときも先生からのアドバイスが気になるのか、どこかそわそわした様子でした。
今回は、そんなちょっと疲れた頭を休める、皆がお待ちかねの住宅見学会でした!

先週、梅雨入りした東京。当日のお天気はあいにくの雨でしたが、子どもたとは元気いっぱい!雨の中、傘をさしながらお目当ての住宅を目指して歩いて行きました。

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今回見学させていただいた住宅「coil」は、伊東先生の事務所出身の建築家、平田晃久さんが設計された住宅です。また、「coil」のお施主さんのご実家は、かつて伊東先生が設計をされた「上和田の家」という住宅だそうです。そのようなご縁から、伊東先生にゆかりのある方々に囲まれた見学会になりました。

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「coil」は中央に3本の柱が立っており、壁のない部屋を階段がつないでいるのが特徴的な住宅です。この住宅では、階段は上がるだけではなく、座って本を読んだり、ごはんを食べたり、家族に居場所をつくる役割も担っています。

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玄関を開けると、早速階段が現れます!皆、引き込まれるかのように階段を上がっていきます。一旦、荷物を置くため、奥の寝室へ誘導されるのですが、その部屋に行くには階段を上がって平らなリビングを通り、また下りた先にあるため、皆びっくりしていました。普通、階段は上がるだけ、下りるだけなのに、このお家では上がって下がってが続くのです。そんないつもと違う空間に、みんな「山を登っているみたい」と笑顔で感想を言っていました。

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荷物を置いて、スケッチブックを取り出したところで、平田さんから設計についての説明がありました。この住宅は「限られたスペースをできるだけ大きく広く感じる空間にするために、壁で仕切らないで階段やスロープでつながっていくような家にしたい」とお施主さんから依頼があり、平田さんご自身が小さい頃よく遊んだ山の状況を家の中に置き換えて設計をされたそうです。山を登るときの起伏を階段の上り下りに、場所によって景色がかわる風景を、視界は遮るけど壁をつくらずに、通路の先に部屋を設けることで表現していると話して下さいました。
子どもたちは、平田さんが設計した意図と同じように感じていたからか、平田さんの意見に共感するように聞き入る姿が印象的でした。

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説明が終わると、各自いえの中を探検して、気に入ったところでスケッチを始めました。しばらくすると、みんな階段に座り込んで黙々と作業に取りかかります。やはり階段を見渡せるところが人気のようで、数人の子どもが集まっていました。一つの建物の中なのに、皆違う高さの場所で作業をしている風景は、本当に山でスケッチしているかのようで、それを眺めている大人たちも思わず顔が綻んでしまいました。

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スケッチの途中で、伊東先生も交え、平田さんやお施主さんへの質問・感想タイムが始まりました。

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「ずっと階段が続いて、山みたいで疲れそう!」
「山だと確かに疲れるけれど、いえだと不思議と疲れないです。また、これだけ段差があると、子どもたちが転んでしまわないか心配だったけれど、転ぶことはほとんどなく、遊びにきた子どもたちも楽しそうに階段を走っていきます。」(お施主さん)

「キッチンが一番上の階にあるのが面白い」
「一番日当りがよくて、居心地の良い場所を家族の団らんの場にしました。テラスの先に公園の緑が見えるので、テラスにつなげて部屋からも緑が見えるようにしました。」(平田さん)

「階段で続いているけれど、違う場所がある」
「階段を上げたり下げたりすることで、見えない場所をつくっているんだね。進んだ先に急に別の部屋が現れるのが、山を登るときの風景に重なるようにしているんだよ。」(伊東先生)

「どこで寝ているの?」
「寝る場所は固定していません。その時の気分で窓の近くだったり、暑かったら風通しの良いところに布団を敷いて寝ます。」(お施主さん)

「手すりがロープなのはどうして?」
「山登りのロープをイメージしました。本当は手すりの下に何もつけたくなかったけど、住宅として住むためには落下防止が必要。ガラスでは風が通らず圧迫感を与えてしまうので、空気と視界の通る網を使用しました。」(平田さん)

「普通のいえと違って、幅の広い木の床を使っているのはどう感じるかな?」(伊東先生)
「大きな木の面の床で、いつもと違う感じがする。階段も全部木だから、落ち着くし心も温かくなる。」

他にも様々な意見が出ましたが、皆、他の子の質問や感想に耳を傾け、共感するところや友達の発言を受けて、新しい発見があったのか、ときどき表情が変わる子もいました。
個人的に最も衝撃を受けたのは、寝室がないことです。家に帰ったら、階段の途中で人が寝ている風景なんて、普通だったらありえないことですが、山の斜面で横になる風景と考えれば不思議ではありません。しかし、あまりにも衝撃的だったので、「寝るならどこがいい?」といろんな子に質問しました。皆、「自分だったらここがいい!あそこがいい!」と、お気に入りのスポットを教えてくれました。

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質問タイムも終わり、スケッチのラストスパートに入っていきます。意見を受けて見方が変わったのか、別の場所を見に行ったり、同じ場所でも描くスピードが早くなったり・・・集中すると時間はあっという間に過ぎて、終わりの時間が近づいてきました。
最後に、お施主さんや平田さんにみんなでお礼を言って、見学会は終了となりました。

今回の授業では、みんなの感想通り「山のようないえ」を体感しました。以前の授業では、体験装置をつくって「山のような空間」も体感しました。「いえ」は、寝る、食べる、遊ぶ、お風呂に入るなど、生きる上で必要な機能を備えた空間です。「coil」は、外観や室内に山のように緑があったり、土があるわけではないけれど、設計者が意図した通り、「山」のように感じることができました。どうしてそう感じられたのか、今日描いたスケッチや出し合った意見を参考にして、自分の作品づくりにつなげてほしいと思います。

次回は「coil」の感想を話し合った後、「自然のようないえ」の模型づくりに取りかかります。今まで平面で考えていたことを立体に起こしながら考える作業です。立体で考えると、今よりももっと違う見え方が生まれてくるので、今からどんな作品が生まれてくるのか、またスケッチからどのように変化するのか、とても楽しみです。