塾生限定講座 夏期合宿(3日目)

2014年08月26日

7月28日、夏期合宿もいよいよ最終日を迎えました。
この日は、広島大学大学院の岡河貢准教授を講師にお迎えし、尾道建築見学ツアーを行いました。

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まずは、大本山浄土寺に向かい、国宝の本堂や、多宝塔、重要文化財の阿弥陀堂などの解説を受けました。奈良の大工たちが来て造り上げた建物は、当時最先端の造りとなっており、今もなお、その洗練された美しさは尾道の歴史を物語っているようにも見えます。現在は改修中のため、外観の一部のみの見学となりましたが、桃山時代のもので、豊臣秀吉にもらった露滴庵は11月1日~3日に特別公開が予定されているそうです。なかなか見られるものではないので、是非この機を逃すことなく見学したいと思いました。

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次に、新涯歓楽街を歩き、尾道市庁舎の見学をしました。新涯歓楽街は江戸時代の遊郭跡であり、尾道は造船のまちでもあったので、修繕で入港する船の乗組員の集う場としてもにぎわっていたそうです。

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尾道市庁舎の本館は、京都大学教授で当時“東の丹下、西の増田”と呼ばれた増田友也の設計によるコンクリート建築です。外観を見学してある面から見た時、亀裂が入っているところから東側は特に破損もなく、きれいなコンクリート面なのに対し、西側は破損が目立ち、ぼろぼろという状態でした。岡河先生いわく、西側は市庁舎が竣工してから約10年後に増築された部分で、質の良くないコンクリートを使用したため、今こうして目に見えてその差が分かるとのことでした。1970年代の万博景気の影響で、質の良いコンクリートが出回らず、やむを得ない状況だったようです。

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続いて、尾道空き家再生プロジェクトの新田悟朗さんのご案内により、いくつかの再生された空き家を巡りました。このプロジェクトを運営するNPOは、尾道らしい家を残し、景観・地域コミュニティを守っていこうと、代表の豊田雅子さんを中心に発足されました。自分の手でつくったものを販売する店舗兼自宅というスタイルで、陶芸・パン屋・喫茶店・雑貨屋など、様々な職の方がいきいきと生活しているようでした。また、尾道はアートにも関わりが深く、アーティストの滞在制作の場としても空き家を提供しようと活動しています。私事ですが、美術大学に通っている身としては、制作に力を入れている友人たちに広めたいと思いました。

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最後にOnomichi U2を見学し、U2内のレストランにて昼食をとりました。
Onomichi U2は建築家の谷尻誠さんによる設計で、元々海運倉庫だった建物を改装し、今年オープンしたばかりです。ホテルやBar、レストラン、サイクルショップなどが展開されています。倉庫らしさを残しつつ、モダンな仕上がりとなっており、落ち着ける雰囲気の空間でした。ツアー参加者と一緒に昼食をとり、3日間の夏期合宿が終了しました。

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わずか半日で、鎌倉時代から現代までの建築やまちなみを巡ることができた、とても内容の濃いツアーでした。一度にこれだけの建築を見る機会はめったにないので、貴重な経験となりました。また、尾道空き家再生プロジェクトでは、若い人を中心とした尾道の活気を垣間見ることができました。
岡河先生、空き家再生プロジェクトの新田さん、どうもありがとうございました。

塾生 丸山春香

(撮影=高橋マナミ)