子ども建築塾 後期第5回「中間発表をしよう!」

2017年04月05日

こんにちは。今回は、2016年12月24日に恵比寿スタジオで行われた子ども建築塾後期の中間発表会の様子をお伝えします。

前期のテーマは「自分の好きな素材でいえをつくろう!」でしたが、後期のテーマは、「まちの中で、自然とともにくらそう!」でした。スタジオから歩いて行ける距離にある恵比寿のまちを敷地として、みんながまち探検の中で発見した自然とともに、楽しく暮らすための「まち」を考えます。今日は、練習模型にして考えてきたアイデアをお友達や先生の前で発表します。

はじめに発表するのはAグループ。このグループの敷地の特徴は、高い建物があること。グループのテーマは、その高い建物を丘の頂上に見立てて「えびすの丘」にしたそうです。みんながつくった建物から丘の頂上が見渡せるようなまちを考えているようです。

また、ソメイヨシノのある広場や、ムベ(アケビに似ている植物)の棚、屋上全体を池のようにしてスイレンを浮かべる屋上庭園、斜面に沿うようにかかる藤棚の屋根などのアイデアを発表してくれました。

みんなが選んだ植物については、ランドスケープデザイナーの山﨑誠子さんから専門的なおもしろいヒントをたくさんいただきました。例えばソメイヨシノについては、「どれくらい大きく育てるかで、土の深さが変わってくる。10メートルの木にしたいのなら根っこは大体2メートルくらい。でも、ソメイヨシノは丈夫で、横にも根を張れるから、1メートルくらいの深さの土があればできるかもね」とのアドバイスをいただきました。ムベやぶどうについては、「みんなが食べられるようにしようとしても、みんなが食べる前に鳥が食べちゃうよ。屋根をかけなきゃいけない。でも例えばキウイだと、東京でも育つし、鳥さんにはおいしそうに見えないらしい」と話してくださいました。

伊東先生からは、「もっと緑がウワーーーって広がったほうがいい。壁の面もテラスも使って、もっと大きいスケールでのびのびやってね」とアドバイスをいただきました。このグループは比較的、屋根の上を使うアイデアが多かったですが、もっと広がりを持って緑が増えていくまちを考えられるかもしれません。

ここで、田口先生から「まち探検のときにどこが気に入ったのか、どこがもっと変えられると思ったのか、という発見を教えてほしい。そうするとみんながつくったものの理由が分かってくるよ」とのコメントをいただきました。

続いての発表はBグループ。グループのテーマは「森へかえる坂」です。この敷地はとても特徴的なジグザグの坂があります。しかし、この斜面は北向きです。少し肌寒くてじめじめした雰囲気の坂を、だんだんと緑が溢れる森にしていくイメージです。

100日間花を咲かせる百日紅(サルスベリ)を中心に、四季のお花の咲く提案や、大きなケヤキの木の上を集会所のようにして使うアイデア、ヒカリゴケが光る部屋、屋根と屋根の間に張り巡らせる道などの提案を発表してくれました。

伊東先生からは、「せっかくこの場所の坂のかたちは面白いから、今のものを大事にしながら、もっと道の周りをデザインしてみたら?」とのアドバイスがありました。もしかしたら、新しい道を空中にたくさんつくるより、今の道をもっと楽しくする方法があるのかもしれません。
みんなで共同作業しながら、四人の案がそれぞれにこの道を活かしてくれるといいですね。

続いてはCグループ。Cグループの敷地には、自然の緑が少なかった模様。「外の美術館」というテーマで、今あるたくさんの建物の隙間に緑を増やしていく提案です。

畑のかたちはいつも四角くてつまらないから、螺旋状の畑にベリーなどを植えたい、というアイデアに始まり、日本の雀は警戒心が強いけれど、パリの雀はそうではないから、きっと環境を整えてあげれば人と一緒に暮らすことができる!という提案、狭いところには湿気が多かったというまち探検の発見から、壁面一面をコケで覆い尽くす提案など、このグループは、アイデアに行き着くまでの自分たちの考えも一緒に発表してくれました。

山﨑さんからは、都会でも育つ「強い植物」についてのアドバイスがありました。「強い植物」というのは、乾燥に強い植物なのだそうです。サツマイモは屋上でも育ちます。また、恵比寿ガーデンプレイスにはオリーブやタイム、ローズマリーなどが植えてありますが、それらのハーブなども強くて手のかからない植物のようです。

屋上の畑や、雀のために屋上に水場をつくるというアイデアに対して、アストリッド先生は、「屋上はわざわざ行かなくちゃいけない。模型は上から見ているけど、実際は階段を登らなきゃいけない。下でどれだけ楽しくさせるかを考えてもいいね」とおっしゃいました。BグループもCグループも比較的屋上や空中の提案が多いですが、自分がこの模型の中でまちを歩いている気持ちになったときに、歩いていて楽しいまちになるのか、考えてみる必要があるかもしれません。

休憩を挟んで、Dグループの番です。このグループは「色」や「つながる」ことを考えて、「虹の架け橋」とテーマを決めたようです。

アゲハチョウはみかんの木に卵を産むから、アゲハのためにみかんの木を植えるアイデアにはじまり、ツタに右巻き・左巻きがあることに注目して、ヤマフジやナツフジを用いて、マンションで犬が飼えない人たちが遊びに来れる場所をつくりたい!というアイデア、そしてぶどうのカーテン、「つぶつぶハウス」と題したフルーツが食べられる場所の提案がありました。

山﨑さんからは「アゲハチョウにはクロアゲハのように黒いアゲハがいるでしょう。同じように黒い植物もあるんだよ。」とヒントをいただきました。黒い植物「コクリュウ」は黒い葉にピンクの花が咲きます。それだけできっと不思議な雰囲気が出ますね。

最後の発表はEグループです。このグループは、敷地近くの小学校の裏手に区民の畑があることを発見しました。まち探検のなかでは、その区民の畑を使っているおじさんにインタビューをしたそうです。グループテーマは「水の流れ」「物の流れ」。畑を中心として、水や物が他の誰かのところへつながっています。

まちのシンボルでありながら、水を貯めておくようなタワーの提案を中心に、段々畑や鳥が好きという理由からコバノランタナという植物で鳥のための空間をつくるアイデア、ムラサキシキブの仲間であるコムラサキの色水でハンカチを染め、販売し、恵比寿の人に恵比寿の自然を知ってもらうアイデアなどが提案されました。

せっかく水の流れをテーマにしているので、シンボルのタワーを中心に、みんなのアイデアをどのように水が巡っているかがはっきり見えてきたらいい、とアストリッド先生。まちの中で色々なものがつながっていくことを考えるとき、まずグループの仲間たちのアイデアをつなげられるといいのかもしれません。

また、伊東先生からは、「恵比寿のまちに、コムラサキがあったんだ、というストーリーがとてもいい」とお褒めの言葉も。山﨑さんからは、「私はコバノランタナを雑草のように思っていたけど、みんなはそれをきれいな花だと思って、こうやってアイデアに使ってくれたのが面白かった。」と仰っていただきました。

最後に総評として、先生方から、全体に向けたアドバイスや感想をいただきました。

ランドスケープデザイナーの山﨑さんからは、みんなが注目した植物を引用しながら、一言。「例えば、スイレンが出てきたけれど、スイレンはヒツジグサの仲間で午前中に咲く。また、北側の斜面にケヤキを植えるという案もあったけど、実は北向きのケヤキはとっても映える。自然の中でも、そう。あとは右巻き左巻き問題に注目していた人もいたけれど、ヤマフジが左巻きでノダが右巻きだね。植物にはたくさん個性があるので、そういうものをちゃんとわかろうとしていてとてもよかったです」と仰っていただきました。また、授業の最初から気になっていた人もいたかもしれませんが、山﨑さんの手には葉のついた枝が。赤い実がついています。これは「Chinese Holy」、シナヒイラギという植物だそう。恵比寿ガーデンプレイスに生えています。例えば、こういうトゲトゲした植物を植えたなら、人を寄せつけなくすることができるから、柵を置かなくても、立ち入り禁止のしるしにできます。実は植物には、そういう役割をすることもできるのです、と教えてくださいました。

アストリッド先生からは、「もう少しリアリティがあってほしい。もっとみんな自身が住みたいまち、と思えるようにつくってほしい」、柴田先生からは「つくるものは必ずしも屋上ではなくていいから、もっと目線の高さにつくれるといい」、田口先生からは「風がある、湿気がある、明るい、暗い、というまち探検のときに自分で感じ取った、その場所のイメージをふまえて、まちをつくれるといい」と仰っていただきました。

最後に、伊東先生からは、「色々な小さな発見が積み重なって面白かった。今回は、一個の建築を考えるというより、環境を考えるということがテーマ。そうするとアイデアとアイデアを結ぶもう一つのアイデアが大事になってくるね」とTAとしても考えさせられるコメントをいただきました。

次回からは、いよいよ3月の発表に向けて本番の模型をつくり始めます。もう一度、敷地を自分たちの目で見て、改めて自分たちのアイデアを考えてみると、また違った発見があるかもしれません。みんなそれぞれ注目している植物の博士のようになって発表してくれたので、そのように植物博士でありながら恵比寿のまち博士になって、その二つをつなぐ、みんなが本当に住みたい「自然とともにくらすまち」ができあがることを楽しみにしています。

早稲田大学3年 江頭 樹