子ども建築塾 前期第4回「中間発表会」

2016年07月07日

みなさま、こんにちは。
5月28日、今日はいよいよ中間発表です。
前回までは各自が持ち寄った素材や、友達同士持ち寄った素材をシェアしながら、その素材ではどんなことができるのか、どんな空間、かたちができるのか、手を動かしながら考えてきました。素材は日常に溢れるものからちょっと珍しいものまでさまざまで、中にはマシュマロを使って作品をつくった子もいました。色々試しながらつくっていく中でたくさんの発見があり、同じ素材でも使い方によってまったく違う表情の作品が出来上がりました。

IMG_3849

中間発表では、自分が選んだ1〜2種類の素材を使ってつくった練習模型を一人一人発表しました。
全員の前での発表は初めてで、アストリッド先生や助手の先生も見つめる中での発表は緊張したと思いますが、みんなとっても立派に自分の作品をプレゼンテーションすることができました。ちょっと緊張してしまい、言い足りないことがあった子もいたようですが、自分の言葉で発表できたことが何より良かったと思います。
ふだん学校では、図工の時間などで作品をつくる機会はあっても、大勢の人の前で自分の作品をプレゼンテーションする機会はなかなかないのではないでしょうか。何もわからない相手に自分の作品を言葉で伝えることは本当に難しいことです。私も設計の課題ではいつも苦労しています。しかし、プレゼンテーションは作品をつくるのと同じくらい大切なことです。子ども建築塾ではものをつくるだけでなく、制作した作品を自分なりに説明する力も1つの作品をつくり上げていく中で学んでいきます。

IMG_3883

発表会は、自分だけでなく他の子がどんなことをやっているのかを見る良い機会でもあります。私の担当グループでは、空気の入ったビニールの梱包材に、ボンドをつけた毛糸をランダムに巻きつけ、ボンドが乾いたのちに、梱包材の空気を抜いて繭のような作品をつくった子。食器を包む梱包材をねじってホチキスで留めたマカロニのようなものを大小たくさんつくり、それらを組み合わせてドーム状にしていき、さらにそのドームを色付きの食器洗い用のスポンジと合体させて柔らかい素材同士で作品をつくった子。逆に、薄めのスポンジを帯状に細長く切り、スーパーの試食コーナーで見かけるようなお醤油用のトレーに何箇所か切り込みを入れ、そこに帯状になったスポンジを通して、いくつもつなげて、柔らかい素材と硬い素材という正反対の特性を持つ素材を使って作品をつくった子がいました。また、1枚の紙でも切り込みをたくさん入れることによって、伸ばしたり、縮めたり、ねじったり、色々できるようになることを発見し、一枚の紙から自由に流れるようなかたちの作品をつくった子もいました。アストリッド先生も思わずライトを取り出し、光を上から当てると、切り込みから落ちる影が何とも言えず綺麗で、光や影が映し出す表情についても学ぶことができました。

IMG_3858

他のグループを見てみると、ダンボールや糸、綿、ストロー、アルミホイル、針金、紙コップ、カラーセロハン紙、竹ひご、布のような柔らかい素材、マスキングテープ、果物屋さんでよく見かけるフルーツを保護するネット、と実にさまざまな素材で作品をつくっていて、中には石を素材に選んだ子もいました。素材の組み合わせ方も大きさも一人一人違っていて、同じような素材を使っていても、全然違うかたちができあがっていたことに驚きました。他にも、ダンボールの片面の紙の部分を剥がし、中の波状のかたちを生かして曲面をつくれることを発見し、作品をつくった子もいました。

IMG_3871

発表を終えると、子どもたち一人一人に対して先生方から講評をしていただきました。光や影のお話、実際に自分が作品の中に入ったとしたらどこが一番気持ちいいだろうか、といったアドバイスをいただきました。また、中には「パターンの連続」、「繰り返し」、という建築的な発想の兆しが見られるような作品もありました。次回以降には、それらをもう少し「システム化」し、すき間のパターンや、影のパターンについても考えてみるとさらに面白くなりそうです。

IMG_3898

前回までは、とにかく手を動かし、色々な素材を試しながら、かたちをつくってきました。アストリッド先生の指導により数ある素材の中から種類を2つ以下に絞ったのは、対象の素材とじっくり向き合うことによって、特性を理解し、体感し、素材の良さを活かしたらどんなことできるのか、発見していく狙いがありました。また、2つということは、同じような特性を持つ素材を組み合わせることもできれば、全く正反対の特性を持つ素材を組み合わせることもできます。1つでは自立しない素材であっても、もう片方に助けられることによって、構造体になりうるのです。互いの利点が互いの欠点を補いあう、これは建築においてはとても重要なことです。子どもたちには、作品をつくる喜びや楽しさを感じながら、こういったことも自然と感じとっていってもらえればと思います。

IMG_3913

次回からは、今回の中間発表を経てブラッシュアップした模型つくりに取り組みます。頭の中に描くものをイメージ通りに表現するのは想像以上に難しい作業ではありますが、私たちも知恵を振り絞って、なんとか子どもたちが描く自由な発想をかたちにできるよう、楽しく一緒に頑張りたいと思います。

日本女子大学3年 菊地ゆかり