子ども建築塾 後期第1回「まちの敷地を見に行こう!」

2017年12月18日

みなさん、こんにちは。1021日に行った子ども建築塾のレポートをお届けします。後期第1回の授業当日はあいにくの雨でした。しかし子どもたちは久しぶりの授業ということもあってか、早くからスタジオに集まり、TAたちと色々な話をしていました。後期のテーマは「まち」、全10回の授業でまちの建築をつくっていきます。

グループに分かれて席に着き、はじめにスタッフの古川さんから課題の説明がありました。今回の敷地は恵比寿スタジオから徒歩1分と、今までで一番近い敷地です。ここにみんなでまちをつくっていくのですが、敷地は5つのエリアに分けられており、それぞれテーマが与えられています。テーマはAグループから「知らせる」、B「音楽を聴く」、C「つくる」、D「本を読む」、E「休む、くつろぐ」。例えば、Aグループの「知らせる」であれば、この場所がどんなところで、先に行くとどんなことができるのかを伝えるエリアになるのです。5つの敷地が坂道沿いに並ぶ場所で、互いが何をしているのか、どんな関係が生まれるのか、そんな“みんなのまち”を考えることがとても大切です。

説明の後は太田先生のレクチャーの時間です。テーマは「まちあるきの極意」。最初は先生が以前つくられた「PopulouSCAPE」という映像作品を見せていただきした。


この作品は世界中の都市にどれくらいの人が住んでいるのかを建物の高さで表し、地球儀上にマッピングしたもので、一目で都市の人口がわかるようになっています。飛行機のフライトのような映像はまず日本からスタート、アジア上空にくると日本の近くでは東京、ソウル、上海の人口がとても多いことが分かります。インド付近ではムンバイが多いのですが、そのほかにも人口の多い都市がたくさんあります。子どもたちが知っている都市もありましたが、知らない都市もたくさんで、意外な都市にも人が住んでいることが分かりました。ヨーロッパに近づくうちに地図には空路も追加され、特にロンドンは世界中からたくさんの飛行機が集まっています。そして、さらに主要な陸路、インターネットケーブルなどが地図に表されてゆき、世界を一周見たところで約10分の映像は終わりました。先生はこの映像をつくる際、「試みなければならないのは山野の間にぽつりぽつりと光っているあのともし火たちと心を通じ合うことだ」というサン=テグジュペリの「人間の土地」の一文に着想を得たそうです。

映像を見た後は「世界都市調査」のお話。これは先生が2003年から世界中のどれくらいの都市に行けるかを試しているもので、今まで行ってきた都市の中から数か所を紹介していただきました。海外ではイギリスのゲーツヘッドのおもしろい動き方をする橋や、メキシコ・グアナファトのカラフルな家々、コロンビア・メデジンのロープウェーなど。

そして日本の郡上八幡を紹介する際、「まちあるきの極意」その1の「たくさん歩いていろいろ気付く」を教えていただきました。例えば、郡上八幡は水を使った暮らしが今も残っているまちで、共同の洗濯場や、家の前の水路をせき止められるようにする板、芋を水路で洗っている人など、歩いてみると水を使った生活の知恵がいっぱい見つかったそうです。

続いて、極意その2「おもしろそうな場所を見つける」。ここではトルコ、イスタンブールの商店が並ぶ曲がった道を見せていただきました。先生はその曲がり角の2階、一番眺めのいい場所にカフェがあるのを見つけたそうです。

そして、極意3「ゆっくり観察する」ということで、そのカフェからの映像をみせていただきました。その映像からは道路の真ん中でずっと話している男性や、通りを行き交う人々、清掃車が走っていく様子などが写っており、たった3分でもまちの中でいろいろなことが起きているということを改めて感じました。

最後に、極意4と5の「その場所の歴史を調べてみる」と「場所の未来を考える」。ここではブラジル、リオデジャネイロで先生がまちを歩いている際に見つけた不思議なかたちをした建物の話をしていただきました。レストランの建物で食事も兼ねて中を観察し、その不思議な建物がとても気になり、何だったのか調べてみると、もともと市場だったいうことが分かったそうです。さらに、歴史を辿ると市場はずっと昔、高速道路を建設する際に分断され、その後もまちの発展とともに徐々になくなってしまったのだとか。その過程で4つあった塔の建物のうち一つだけが残ったそうです。今はRestaurante Ancormarというレストランが運営されているこの建物ですが、街中にあった将来予想図の中ではまちのシンボルとして描かれ、さらに高速道路はなくなる予定になっていて、高速道路を造る時には想像もしなかったような未来のまちができつつあるということを教えていただきました。

5つの極意を教えていただいたところで、先生の事務所がある下北沢の映像を使って、まちあるきのシミュレーションをした後、早速敷地調査に向かいます。

相変わらず雨が降りしきる中でしたが、1分も歩くと敷地へ到着し、グループごとに分かれて調査スタートです。まず驚かされるのはとても急な坂。地図では分かりませんでしたが、BグループCグループの間は特に傾斜が急で、さらに大きく曲がっています。

さらに敷地ごとの標高も変わるため、場所によって見える景色が変わります。どのグループも先ほど教えていただいた“極意”を参考に、何が見えるのか、どんな音が聞こえるのか、どんな人が住んでいるのか、周りに何があるのかなどを調査し、たくさん面白そうな場所やものを見つけたようでした。30分ほどの敷地調査が終わるとまたスタジオへ戻ります。

帰ってみるとスタジオにはTAさんたちが制作した1/30スケールの敷地模型が置かれていました。テーブル一面に広がったこの模型を見ると、地形やそれぞれの敷地の関係がよく分かります。早速子どもたちは模型で自分のグループの敷地を確認しながら先ほど見つけたポイントや、どこに何をつくりたいかなどを話していました。最後に先生から「みんなで一つのまちをつくっていくので、他のグループの人と話しながらまちをつくってください」とコメントがあり、今日の授業は終了となりました。

次回は敷地調査の感想や見つけたポイント、どんなものをつくるかなどをみんなで話し合います。それぞれが感じ取ったこと、ここにほしいと思ったものなどをしっかりと伝えみんなで共有することで、より素敵なアイデアが生まれるはずなので、どんどん意見を出してほしいです。

後期はチームで考えることが求められ、前期よりさらに難しい課題となるかもしれませんが、周りを意識したり、自分と違った捉え方を取り入れたりしながら建築を考える、いい機会になるでしょう。素敵なみんなの“まち”をつくれるように、子どもたちと一緒に様々な角度から建築を考えていきたいと思います。