建築家養成講座 2012.1.20
ブログをご覧くださっている皆様、遅れましたがあけましておめでとうございます。伊東建築塾の活動に興味を持っていただき誠にありがとうございます。
伊東建築塾が始動してから、9ヶ月近くがたちました。去年は拙いことも多々あったとは思いますが、今年はよりいっそうの飛躍を目指して参りますので、暖かく見守っていただければ幸いです。
最近は子ども建築塾の活動に終われ、養成講座に関して執筆する時間があまりなかったのですが、年もあけ、養成講座もかなりの進展を見せています。
建築家養成講座では、岩手県釜石市に新たな「みんなの家」を設計する計画を進めています。震災から早くも9ヶ月経ち、奇しくも伊東建築塾の進展と震災復興とはシンクロしています。釜石市に限らず、どの被災地もまともな復興はまだ到底実現できてはいません。仮設住宅、避難所で生活している人は当然のことながらまだ沢山います。
そんな人々に対して今私たちにできることはなんなのか。
それを養成講座という場を介してみんなで議論し合った結果が、少しずつ形に反映されはじめようとしています。
養成講座では、学生達みんなで一棟の「みんなの家」を提案することになりました。建物の機能を既存の職種や要素で規定したくはないのですが、表向きには「みんなのインターネットカフェ」を作ることが決まりました。しかしそれは、いわゆる現代都市に蔓延る個室型のネットカフェではなく、いろいろな交流や行為が交錯する場としてのネットカフェである必要があります。
建物を建てることは、そう容易ではなく、そこに到達するまでには様々な障壁を通過していかねばなりません。例えばお金のこと、誰がお金を出し、それをどう集めるのか、例えば機能のこと、そこで何をし、そのための維持費はどうするのか、などなど。そうした諸々の要因を話し合いながら設計がなされます。
形としても、なるべく容易でローコストに、しかし震災のことを考えるとある程度の耐久性が欲しい。ただそれを追求するがために、従来の仮設住宅のような、利用者の感覚を高ぶらせるような味わいの一切無い、無個性なものになるのも避けなければならない。そこで塾生の吉岡さんの提案で、RCの壁を2枚向かい合わせに建て、そこを様々な工夫によりインフィルしていくことになりました。2枚の壁にかけられる屋根や、内部空間を生み出すためのもう2枚の壁の素材をどうするかなどは現在議論中です。
このように、困っている人々のために何かをしたい、そしてそのための建築を生み出したいという衝動は、建築家が建築家であるための最も純粋な動機である気がします。というのも、そもそも住宅が自然発生的に生産されては壊されて行く現在、あえて個人の建築家として生計をたてていこうという背景には、現在の社会構造を変革してやろうという意気込みがないはずがないのです。(現実には残念ながらそうでない人も沢山いるようですが。)それはすなわち、現在の社会に不満を持ち、それを変革する、つまりはそこから迫害されている人を救済する道標ともなりえるわけです。
建築家は宗教祖ではないし、権力者でもありません。そのことに自覚的になりすぎた建築家は、他者を変革することに怯えています。
しかし他者を変革させること、それは服従させることとは本質的に違います。
「みんなの家」が進展を見せて行くにつれ、塾生達にもそんな意識が増したように、端から見ていると感じます。