[福岡]2024年度 伊東子ども建築塾 第7回授業『表現方法を決める』

2024年08月20日

7月6日(土)に行われた伊東子ども建築塾 福岡第7回の様子お届けします。

前回は中間発表を終えての振り返りとカタチにするための試行錯誤の時間になっていましたが、残りの授業回数と成果物が一人ひとり異なることを考慮して、今日の授業では「作品まとめシート」を埋めていくことを目標に作業を進めました。

「作品まとめシート」は、タイトルやこれまで考えてきたことを振り返る欄とこれからやることやつくるもの(模型・スケッチ・立体スケッチ・その他)などを書く欄があり、子どもたちだけでなくTAや巡回する講師も最終発表会までの目標が共有できる仕組みになっています。

授業のはじめに、「風のカタチ」というタイトルで、風を含む地球環境をテーマにこれまで数多くの建物を手掛けてこられた株式会社SUEP.の末光弘和先生からレクチャーがありました。

風のイメージを膨らまして物語を考えよう
風自体にはカタチがないけれど、風によってどうなるか、その先の物語を考えるカタチになりやすい。

“風で〇〇→?(その先どうなる?):実例”という公式の下、以下のような実例が挙がりました。
・風になびく→?   :こいのぼり・凧・カーテン
・風で動く→?    :ヨット
・風で音が鳴る→?  :風鈴
・風で飛んでいく→? :パラグライダー・気球・たんぽぽ
・風を取り込む→?  :バードギール(採風塔)
・風向きを知る→?  :風見鶏
・風で回る→?    :風車・かざぐるま

授業前半で子どもたちが考えてきたことの振り返りのような内容だったので、子どもたちの方から先に実例が上がる様子もありました。

風の個性を知ろう
風はとても素直に動きます。風の動きは一見複雑のようですが、障害物がなければ風はまっすぐ進みます。また障害物があると、一番楽な方向に流れていく様子がわかります。

これまでの風の多様性や様々な側面を考えてきたからか、風が素直に動くという特性は意外と盲点だったのかもしれません。先生が見せてくださった風のシミュレーション動画に、子どもたちもTAも釘付けでした。

その他にも風と煙突のかたちのシミュレーションや自然界(プレーリードッグの巣)の風の形状、風とトンネルのかたちの説明から、風の個性について学びました。

ありの巣のような家」:丘をあがってくる涼しい風をスムーズに取り込めるように、部屋の配置をシミュレーションしながら、アリの巣のような間取りの住宅を作り上げていくプロセスを見せていただきました。

空飛ぶ絨毯のような家」:風の上を飛んでいるような心地よい空間を作りたいというイメージから生まれた住宅で、床から効果的に風を取り込むために、模型と線香を使って実験されたそうです。シミュレーションツールがない時代から先生が風と向き合ってこられたのがわかります。

「風を求める窓」:コンピューターで採光・通風等が各部屋最適になるように窓の向きをシミュレーションして設計した集合住宅は、結果として部屋ごとに窓の向きが少しずつ異なっており、その様はひまわり畑の花の向きのよう。自然界のカタチにヒントがあるという一例でした。

風の目線になって考える」:人や家のことを考えるだけではなく、風の気持ちになって設計された住宅とのこと。ドローンを使って、完成した建物のなかを風目線で撮影した動画が心地よく魅力的で、引き込まれました。

最後に末光先生から「風の気持ちになる/自然界のカタチに着目してみる」というカタチを考える際のヒントをいただき、イメージが広がった勢いで、そのまま今日の作業に入りました。

つづいては、子どもたちの作業風景の一部をご紹介します。

「しゃぼん玉の家」というタイトルで、ブルーを基調とした綺麗なドローイングを見せてくれた彼女は、割れないシャボン玉(プラバルーン)を使って研究中。

背景には、前回の授業後に自宅で色付けしたシャボン玉を実際に飛ばしてつくった模造紙が貼ってあります。前回は、中間発表を経てどのように展開するか試行錯誤している様子でしたが、一気に表現方法が見えてきましたね。

中間発表では、最年少ながらそのドローイングが伊東先生の印象に強く残っていたようで、最終発表会もその色彩感覚を生かして、夢のある世界を見せてくれそうです。

同じく青を使った表現にこだわり、夢のような世界観を膨らませているのは、「海の中の風」。今日は、海の表現のために袋に入れる詰め物をトレーシングペーパーにするか、ビニール袋にするか、TAと一緒に検討していました。

メインとなる球体状の建物は、海中と海上を行き来して、海上では風の影響を受けて変形し、そのカタチによってアクティビティが変わるそうで、物語も固まりつつあります。当初から一貫して大切にしてきた海の中の風のイメージを、カタチとストーリーでどこまで表現してくれるのか期待が膨らみます。

「かぜのろてんぶろ」というタイトルで中間発表のトップバッターだった彼は、アイデアが浮かびすぎて、まとまらなくなってきている模様。

中間発表時点では、風のドームに覆われたタワー状の案と、それぞれ異なる種類の風を集め、時に組み合わさる乗り物のような案の2案を発表していました。

平瀬先生が「どんなにおいの風をどれだけ集めようか?」「給食室のにおいはあり?」と会話をしながら彼のイメージを引き出して一緒に整理していきます。

最終的には、何種類もの乗り物状の家を巻物のように連ねて描くことに決まったようで、巻物の芯になりそうな材料を準備して張り切っている様子に一安心しました。

この先はぐんと作業の手が進みそうですね。

また今回は、作業と並行して最終発表時に使う点景用の写真を撮影しました。多い子は10ポーズ以上写真を撮っていましたが、そのポーズにも個性が出ますね。

撮影の現場には立ち会えませんでしたが、前後に並んだTAと塾生の2枚の写真を見て、この二人の間にどんなやりとりがあったのかを想像して思わず笑ってしまいました。

撮影がこれからの人は、ぜひポーズのバリエーションを考えてきてくださいね。

次回もよろしくおねがいします。

古野 尚美(ブログ取材担当)