伊東子ども建築塾 福岡 第1回『オノマトペのいえ』授業編

2025年05月13日

いよいよ今年で3年目となる“伊東子ども建築塾福岡”が始まりました。
4月5日(土)に行われた第1回の様子お届けします。

はじめに、実行委員長の古森先生から子ども建築塾について説明がありました。

この建築塾は、単に建築を学ぶ場というだけではなく、子どもたちはもちろん、大人や講師も一緒になって「学び合うこと」を大切にしているということ。そして、何よりも「楽しかった!」と思える時間をみんなでつくっていくことを目指していると語ってくださいました。

次に伊東先生から年のテーマ「オノマトペのいえ」が発表されました。

「日本語には『ワクワク』『ドキドキ』『キラキラ』のような、音や気持ちを表す言葉(=オノマトペ)がたくさんあります」とお話ししてくださいました。

そして、『建物を見たときに、どんな音や感覚を思い浮かべるかな?』と問いかけながら、日本や台湾など、さまざまな場所で手がけた作品を紹介してくださり、スクリーンに映し出された1枚1枚の作品の写真の印象から、自由にオノマトペを考えるという楽しいワークショップが行われました。

最初は不安げではずかしそうにしていた子どもたちも、周りの雰囲気や先生の声かけに背中を押され、少しずつ手を挙げて発表してくれるようになりました。

『ぐるぐるしてる!』『ふわふわかな?』『パキーンって音がしそう!』など、のびのびと自由な感性で、感じたことをたくさん言葉にしてくれました。

建物を“目”ではなく“耳”で感じてみる。それだけで、空間の印象がぐっと豊かに、立体的に広がっていきます。
『建築って、音でも表現できる』──そんな気づきを、子どもたち自身が見つけていく過程を、私たち大人も一緒に楽しませてもらいました。

こうして、子どもたちの感じた“ことば”を手がかりに、建築を新しい視点で見ていく。

それが、今年の塾で挑戦する楽しい学びです。

続いて、グループごとに集まって担当TAの自己紹介と伊東先生への質問のための作戦タイムを行いました。

はじめは少し緊張気味だった子どもたちも、講師やTAのやさしくてユーモアのある問いかけに、だんだんと表情がほぐれていきました。

子どもたちの自由な発想や純粋な好奇心に対し、伊東先生がユーモアを交えながら真摯に答える、温かく学びの多い時間となりました。

ここではその一部を紹介したいと思います。

● 好きなオノマトペは何ですか?
「そんなことは考えずに設計しています。“シーン”とした空間が好き。静けさを大事にした建築をつくりたいと思っています。」

● 建築で何を伝えたいですか?
「人と人がつながる場所をつくりたい。家族が自然にコミュニケーションできる家、地域の人たちが集まれる公共の場。そんな“人と人がつながる建築”をつくりたいと思っています。」

● 模型はどうやってつくっていますか?
「設計のために何十個もつくります。模型をつくることでアイデアが広がったり、“こうした方がいい”なと思えるんです。図面ができてからつくるのではなく、模型そのものが設計の道具。上手じゃなくても、考えていることが伝わる模型がいいですね。」

● 好きな建築は?
「自分がつくった建築が好きです。」

● 子どものころの夢は何ですか?
「野球ばっかりしていました。建築家という職業があることすら知らなかったんです。でも、野球を通してチームワークの大切さを学び、それが今の建築の仕事にもつながっていると思います。」

● 建築のアイデアはどこからでてきますか?
「新聞を読んだり、世の中のことに関心を持つことが大事です。そして、一つの建築が完成したあと、“もっとこうすればよかった”と思うことが必ずあります。そうやって次の作品に生かしていくんです。」

● 建築をしている時、何が楽しいですか?
「最初にチームでテーマを決めて、それぞれ案を考えます。日々変化していく中で、“これがいいかも!”という方向を探りながら進める。その変化自体がとても楽しいですね。」

● 自分のいえをつくるとき、何を大事にしていますか?
「実は、奥さんの意見が一番強いんです(笑)。キッチンや掃除のしやすさなど、日々家で過ごす人の意見を大切にするのが、一番の工夫かもしれません。」

● 大事にしている空間は?
「南向きのリビングルームですね。暖かくて明るいので、食事も読書もスケッチも、全部そこになってしまいます。昔飼っていた犬が、家の中で一番居心地の良い場所をいつも見つけて移動していたのを思い出します。建築も、そんな“居心地の良い場所”をたくさんつくりたいです。」

最後に、伊東先生から子どもたちへ向けて、こんなメッセージをもらいました。

「今は“建築家になりたい”とか思わなくてもいい。毎日友達と話したり、考えたりすることが、将来きっと役に立つと思います。」

子どもたちの気持ちに寄り添う、あたたかいメッセージが心に残る時間となりました。

対談のあとは平瀬先生より、宿題の発表がありました。

『生活の中にあるオノマトペを見つけてくる。見つけたらスケッチブックにメモする。』

具体的な取り組み方について、まんがや本、会話などいろんなところから見つけられるはず、とのヒントがありました。

「建築って難しそう…」と思うかもしれません。でも、この塾では、何を感じて、何を思ったかが一番大切。答えは一つじゃないし、正解なんてありません。
だからこそ、思い切り、楽しく、全力でぶつかっていきましょう。

どうぞよろしくお願いします!

佐藤 茜 (ブログ取材担当)