伊東子ども建築塾 福岡 第10回『オノマトペのいえ』最終発表会 前編

2026年01月29日

8月23日(土)、九州産業大学のグローバルプラザで、本年度の伊東子ども建築塾福岡の最終発表会が開催されました。

「古森先生から、今年のみなさんの制作の様子を聞いていて、今日を楽しみにしていました。」―伊東豊雄さん―

保護者や関係者、ティーチングアシスタント(TA)など多くの人たちが見守るなか、18名の塾生それぞれが、自分が選んだ言葉の“音”や“感覚”を手がかりに、世界にひとつの「オノマトペのいえ」を発表しました。

それでは、さっそく作品を見ていきましょう。

Aグループ:淡く美しい色の世界と“ボロボロ”の対比
Aグループは、授業の初期から淡い色を基調とした美しいスケッチや模型が印象的なグループでした。そのなかで一人、「ボロボロ」という言葉を選び、自然素材や朽ちていく儚さの中に価値を見いだした子がいました。そのコントラストが、この班の魅力をいっそう際立たせています。

「ふわふわの暮らしとわくわくすいすい遊ぶ家」
海に浮かぶ家。潮の満ち引きで光と空間が変化します。朝は海辺で魚をとり、昼は高い天井の下で家族と過ごす。海とともに暮らす日々のリズムが、心地よい呼吸のように伝わってきました。

平瀬先生は、「天井が膨らんだり低くなったりすることで暮らしが変わるのが面白い。季節の変化まで取り入れるとさらに発展する」と想像を膨らませていました。

「ほっこりはればれみんなの家
「ほっこり」「はればれ」というオノマトペで、世界の“つながり”を表現した提案です。
暖かい国と寒い国、それぞれの人が集い、国境の家で心を通わせる空間をつくりました。
伊東さんは、「比喩的に世界平和を表現している。ほっこりといった言葉のセンスが素晴らしい」と感心していました。

「ワクワク海の家」
浜辺に立つカラフルでワクワクする海の家。同じ屋根の下でも光の色や差し込み方で、遊ぶ・休む・食事をするなど活動が変化するそうです。屋根だけでなく、砂浜にも色を際立たせる仕掛けがあることが作品をより魅力的にしていました。
伊東さんは、「色がとても綺麗。ライティングで気分によって使い方を変えるのも面白い。」と、時間の移ろいや光の変化を感じさせる作品に共感していました。

「ぼろぼろだから楽園になる」
放棄された商店街を舞台に「ボロボロ」にこそ価値を見出した不動産屋が人を呼び込み、動物や虫たちと共に生きる街を描きました。「私、ボロボロっていうのは悪い意味で使ってないんですね!」という彼の力説は、会場を大いに盛り上げてくれました。ボロボロに価値があるという哲学的な発見をしたのは、彼自身の経験や体験によるものとのこと。

末光先生が、「天神とか都心のビルを見ていると、寂しく感じたりするの?」と尋ねると、「だって、スズメとかも見かけないし。」と率直に答える姿に、会場は笑いから一転、息をのむように静まり返ったのが印象的でした。

Bグループ:素材と発想の実験者たち
Bグループは、授業中にゴーヤを開いて観察していたり、天井から吊り下げて模型をつくっていたりなどと、制作中から異彩を放つグループでした。

古森先生は、「僕たち大人が当たり前に考えていることを全部はなから外して、一から自分で考える力があるので、これからも今の延長線上で考え続けてほしい。」とエールを送りました。

「ほっとするふわデコ空間」
ゴーヤの中を観察した体験から、“ふわふわ”と“でこぼこ”を掛け合わせて多様な活動ができる空間を創造しました。ゴーヤのなかに住んでみたいという発想から、実際に本物を観察して、ここまでのストーリーや空間にたどり着いたことに坂口先生も驚かれており、本人やTAさんのこだわりと粘り強さが感じられる作品でした。

「かいだんだんのいえ」
階段でつながる多層空間をカラフルな半立体の模型で表現した作品です。
泥棒が侵入するとサメのいる部屋に導かれるという“防犯のしかけ”も備わっており、遊び心あふれる仕掛けと立体的な構成が印象的でした。

「階段を上り下りする時の、“だんだん”という音が音楽のように響き渡りそう」と、オノマトペが実際に空間に広がる様子を想像する平瀬先生。

「ふしぎな木にあるアイビーハウス!!」
小さな種からツタが生え、やがてからまり大きな木のように成長する家。ツタが地面に届くと、また新しい木が生えてきます。

伊東さんは「終わりから次の始まりまでのストーリーを考えているのが素晴らしい」と自然のように循環する家を称賛しました。

Cグループ:思索する建築へ
Cグループは、昨年に引き続き参加している中学生2名がいるグループです。
他のグループが子どもらしく自由に制作に取り組む中、このグループは制作過程のなかで、皆なんらかの壁にぶつかっており、そこを悩みながら乗り越えた姿に感動をもらいました。

「思い出シェアハウス」
楽しい記憶をシャボン玉に閉じ込め、訪れた人にも楽しんでもらう家。シャボン玉を吹くことで込められる思い出は、他の思い出とぶつかったり、はじけたりするとどうなるのだろうと想像を掻き立てられる作品です。
伊東さんは、先祖代々の記憶が詰まった旧家を例に挙げ、「記憶はかたちある器があるから残るのでは?」と尋ねます。すると彼女は首をかしげ「その時の匂いとか、手触りとか、音とか、そういうものを詰め込みたいから……」と答えます。

記憶を“静=カタチや媒体”ではなく、“動=感覚の再現”として捉える瑞々しい発想を前に、さすがの伊東さんも「いやぁ参ったな。僕にはちょっと想像がつかなかった。」とコメント。その表情は驚きながらもどこか嬉しそうでした。

「ぽかぽかゆっくり旅するふわふわハウス」
雲の中にある家を淡い色使いで表現しています。太陽の光や風が満ち溢れる、とても心地よい空間になることが、多くは語らずとも模型を一目見ただけで想像できます。

講師陣も「すごくきれい。もうそれだけでなんか行ってみたい感じがする。」と、誰もが一度は夢みた雲の上の生活を思い起こさせる色遣いや表現を絶賛していました。

「オノマトペの心の家」
中間発表で伊東さんに問われた「君にとって心とは何か?」に真っすぐ答えようとした彼は、制作中からずいぶん悩んでいたとのこと。
最終的には自分の心が癒される空間を追求し、建築と自然そのものの中間のような作品にたどり着いたそうです。人工的な要素の中にも自然物をちりばめられ、多様な居場所をつくっています。

伊東さんは「半分大人が考えそうな建築になりかかっているが、一方で子どもらしいやわらかい発想も残っていて、そこが中学生らしくて面白い。建築とはなにか、もっと悩んで考え続けてほしい」と激励を送っていました。

「ドクドクの街」
子ども建築塾2年目の中学生の彼は、都市を生き物のようにとらえ、体内を縦横無尽にめぐる血管のように、インフラが“ドクドク”と脈打つように巡る街を構想しました。
彼の発想はとどまることを知らず、写真に納まらないほどのスケッチが並びます。
伊東さんは、「なんだか新しい都市のビジョンが見えてくるような気がした」と目を輝かせていました。

ここまでブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。
引き続き後編をお楽しみください。

古野 尚美(ブログ取材担当)