塾生限定講座「戦後モダニズムの建築から学ぶ|前川國男邸の見学」
6月15日、塾生限定講座第5回の講座は「戦後モダニズムの建築から学ぶ」のカテゴリーの1回目として、講師に建築史家の藤森照信先生を迎え、前川國男自邸及び堀口捨己設計による小出邸の見学を行いました。
場所は、都心から西に位置した東京都小金井市にある江戸東京たてもの園という施設で、ここには江戸時代から昭和初期までの文化的価値が高い歴史的建造物が移築・展示されており、その中の2棟に前川國男自邸と小出邸が含まれています。
まずは小出邸の見学から。外観は白を基調とした当時の「デ・ステイル」のデザインを取り入れつつも、傾斜のついた瓦屋根の和風の面も残るものです。
最初は1階の応接間から。大人数ではさすがに狭かったものの、何とか全員が中に入り、藤森先生の言葉に聞き入りました。この部屋は天井がグリッドで構成されており、壁には銀箔が使われるという、和風にはない要素が取り入れられていました。
続いて寝室と茶の間へ移動。座ると天井が若干高いことや、床の間もなく独特な割付の棚や障子など、一般的な和室と明らかに違って興味深いところが多かったです。
最後に2階の和室へ。2部屋が連続した大きな空間であり、壁の鮮やかな緑色がとても印象的でした。藤森先生によると、当時の流行色だったそうです。1階と同じく少し高い天井となっていました。
次に、前川國男自邸を見学しました。正面のファサードを前にして説明を受けます。戦中の限られた材料しか手に入らない時期に竣工したこの建築は、伊勢神宮から影響を受けた切妻屋根と一本柱の構成でシンメトリーのファサードを持つ木造住宅です。
横道を抜けて裏側の玄関から中へ入り、中央のリビングへ集まりました。吹抜けがあり、住宅にしては大きな空間で、塾生が全員入っても余裕がありました。一時は前川さんが事務所としても使っていたそうで、その空間で藤森先生を囲んで解説を聞きました。前川さんの話から、丹下さんや坂倉さんの話と、話題は次々に飛び交い、貴重な話からたわいのない話までひとしきり盛り上がり、見学は終了しました。
個人的には、小出邸は当時の歴史背景の影響を受けながらも堀口捨己独自の作風をつくり上げようと試みているようで、非常に挑戦的な印象を受けました。前川國男自邸は外観の美しさも素晴らしいですが、それ以上に中央のリビングの豊かな空間が印象的でした。実在した場所は景色も素晴らしかったそうで、是非見てみたかったと思いました。
また見学全体を通して、藤森先生の話が大変面白く、書物や講演会などでは決して得られない貴重なものでした。塾生だけの少人数で近い距離感のおかげであると思います。
今年度の講座はまだまだ続いていきますが、とても貴重な経験となるプログラムでした。
塾生 竹田 功