[福岡]2024年度 伊東子ども建築塾 福岡第 10 回 『風と暮らすいえ 最終発表会』後編
前半に引き続き、最終発表会後半の様子をお届けします。
Dグループ
Dグループはアイデアが豊富で、スケッチや模型もどんどん進むグループでした。井手先生は「想像したものがかたちや絵で表現しにくいものがたくさんあったけれど、それをどのように表現するか、手を動かしながらやっていたのが印象的だった」とおっしゃっていました。
「風の色」
光と風と色の表現が美しい作品です。都会と自然の間に家があり、家の中で色々な風が混ざり合って新しい暮らしが生まれる様を柔らかくカラフルに光る模型で表現していました。
当初から風の色に着目していた彼は、中間発表では都会と田舎の間で暮らしたい、という考えがあったものの、まだ断片的なスケッチにイメージが留まっていましたが、たくさんの試行錯誤を経てドームと風と色の建物が生まれました。明かりをつけると幻想的になり、伊東先生は「スケッチもいいし模型がすごくきれいでピーター・クックという建築家を思い出させる。」とおっしゃっていました。
「気分屋な風との旅」
感情を家の形で表現していて、風の気分によって形が変わる家を発表してくれました。大空に浮かんだ様々な気分の家が独創的なスケッチです。このような風任せの生活も楽しそうですね。
「ここまでにたくさんのスタディ模型を作っていて、どんな気分の時にどんな風の形になるか、その試行錯誤が素晴らしい」と坂口先生。伊東先生は「全体の構図がきれいだし、感情を家の形で表現するというのは驚きました」とおっしゃっていました。
「大海原で育つ家」
大迫力のスケッチを発表してくれました。海底の冷たい風と火山の暖かい風が混ざって快適な空間を作っています。自然の大きな力を表現したスケッチが地球の生命力を感じられる力強い作品です。 伊東先生は「岡本太郎の絵のように爆発している感じで勢いやエネルギーを感じる。いつまでもそのエネルギーを失わないで欲しい。」とおっしゃっていました。実は発表してくれた以上のアイデアがあったようですが、それをなんとか頑張って紙面に収めたそうです。
Eグループ
Eグループは、それぞれの好き嫌いがはっきりしており、言葉や絵の表現が幅広いグループでした。それぞれが独自の視点でアイデアを深めていき、好きなことがにじみ出る作品になったようです。
「上空音楽室」
風と音の楽しい世界観を発表してくれました。木が音楽に合わせて虹色になり、複雑に絡み合った木の枝から音楽が聞こえてくるというアイデアは、空間に構造の美しさと生き生きとした印象を与える素敵な模型になっています。
「当初から風と音に着目していて、スケッチの段階では風に音が合わさると色がにじむという独自の表現をしており、それが人の活動に影響していて、人の活動もにじませると言っていたのが印象的。」と坂口先生。風が木に当たることで音が出る楽器のようになっており、伊東先生は「音楽と決めつけないで、どんな音が出るのか想像してみるともっと楽しくなるような気がする。」とおっしゃっていました。
「新幹線の旅で感じる風」
新幹線の旅で感じる風を発表してくれました。新幹線から見える様々な景色をスケッチと大きな模型で表現していて、たくさんの場所に行きたい気持ちが伝わってくるダイナミックな作品です。
「自分の気持ちを模型にしていることが伝わる模型。」と伊東先生。
中間発表時の巻物のスケッチから大人はびっくりしていましたが、模型では独自の素材使いや表現で海や山を通る新幹線ができました。旅の楽しさが伝わってきますね。
「風の通り道」
風の流れや自然の変化を取り入れた家を発表してくれました。人と暮らしを共有し、常に変化している自然を感じて溶け込むような建物となっており、場所ごとの生活を想像する楽しさを感じさせてくれる魅力的な作品です。今年の最年長塾生である中学1年生の彼女ですが、問題提起から始まる思考の過程がとても論理的でした。
「論理的なことと空間のイメージが合っていて、風を感じさせる模型だった。」と伊東先生。また彼女がつくろうとしている空間はまさに“よどみ”だとしたうえで、「自然はいつも流れている。人間は変わらないようでありながら細胞は毎日少しずつ変わっており、流れているものの一つの状態(=よどみ)でしかない。自然の中に溶け込む“よどみ”のようなそういう建築を自分も作りたい。」とおっしゃっていました。
全ての発表の後、伊東賞、坂口賞、井手賞が選ばれました。
坂口賞は、きらきらと輝く深い青い海の模型を発表してくれた「風で変わる海の家」、
井手賞は、常に迷いなく自分の考えを表現し続け、壮大な都市計画にまとめた「風巡る雲の町」、
伊東賞は、しゃぼん玉の儚さや透明感を幻想的に捉えた作品「しゃぼん玉みたいな家」が受賞しました。今回、どの発表も独創性に溢れ、大人には想像できないバラエティに富んだ作品ばかりでしたが、受賞した3作品に共通していたのは、見る人の心を動かす作品だったことだと思います。
今回のテーマは講師陣にとっても難しく、TA、講師が子どもたちと一緒に対話しながら考え、手を動かしながら進んできました。
特にTAのみなさんは子どもたちの個性あふれるアイデアに寄り添い、最後は一緒に模型を作り、発表の補助まで行い、子どもたちが自信を持って自分の作品を紹介できるようにサポートしてくれました。
伊東塾長からは、「難しいテーマだと思っていたけれど、みなさんすごく良かった。いろんなことを考えさせられた。自由な自分の気持ちをそのままスケッチや図面にするということを大人になっても大切にしてほしい。そして、自分の気持ちを伝えるということを大切にしてほしい。」とのお話がありました。
その言葉を聞き、最初の授業で伊東塾長が言われた「いろんな体験をすることが大事」という言葉が思い出されました。
私も半年間子どもたちと一緒に考えていく中で、様々な体験を重ねることが、自分の感性を豊かにし、創造の源となることを実感しています。心の中に芽生えた「こんなものを作りたい」という思いは、スケッチや図面を通じて形を持ち、最終的には自分の言葉で人に伝わります。それが、人の心を動かす力になるのだとあらためて思いました。
発表の後は、講師、TA、保護者も含めた恒例のティーパーティです。
発表が終わって晴れ晴れとした顔の子どもたちとTA、講師たち。ジュースで乾杯し、お菓子を食べながら最後のひとときを楽しみました。
最後に、子どもたち全員に伊東塾長から記念品の三角スケールと講師からのメッセージカードが手渡されました。
半年間の学びを通じて、子どもたちはそれぞれの個性を発揮し、創造力を育んできました。
発表会での晴れやかな笑顔は、彼らの努力の結晶です。
これからも子どもたちが様々な体験を重ね、感性を豊かにし続けることを願っています。全ての子どもたち、TAの皆さん、講師の方々、半年間お疲れ様でした!
『伊東子ども建築塾福岡2024「風と暮らすいえ」』の作品は、2025年の年明けに福岡市内で作品展示会を予定しています。子どもたちの作品を実際に見ていただける貴重な機会になりますので、ぜひ足をお運びください。
「風と暮らすいえ」伊東子ども建築塾 福岡2024作品展示
日時:1/4(土),1/5(日)10時~18時(予定)
会場:アーティストカフェ
〒810-0043 福岡県福岡市中央区城内2−5 三の丸スクエア内
https://maps.app.goo.gl/u9BNP4esP28sWCnx7?g_st=com.google.maps.preview.copy
佐藤 茜(ブログ取材担当)