伊東子ども建築塾 福岡 第2回 オノマトペで表現してみよう
4月19日(土)、伊東子ども建築塾福岡 第2回目の授業では、九州産業大学のランドスケープをデザインした古家俊介さんをゲストにお招きし、実際に外に出てフィールドワークをしながら、オノマトペを探しました。
一時は雨になるのではと心配していましたが、今日は見事な晴天。レクチャーやフィールドワークでさまざまな発見をする子どもたちの様子をお伝えします。

◆授業の主な流れ
・古家俊介さんレクチャー「創造のタネの在りか」
・オノマトペを探すフィールドワーク
・見つけたオノマトペのうち、お気に入りをグループごとに発表

「想像のタネの在りかは、君たちの中にある」ランドスケープデザイナー:古家俊介さん
ランドスケープデザインの辞書的な意味は、「都市や公園、広場における空間のデザイン」ですが、古家さんは、福岡山王病院の広場やハウステンボスの夏季ウォーターガーデンなど、作品を説明しながら、ご自身の仕事を「外に遊ぶところや居場所をつくりながら、外を楽しくする仕事」だとおっしゃいました。
そのなかで、レクチャー後に実際に見てまわった九州産業大学のランドスケープデザインでとくに大切にされたことは
・たくさんの居場所をつくること
・歩いて楽しい場所にすること
・今あるものを大切にすること
の3つだそうです。

これが計画前の敷地の写真です。もとの広場にはこれといった特徴はなく、広場の中を走る水路が人の行き来を邪魔するような状態でした。それでも水路やもともとある大きな木を一本も切ることなく尊重し、むしろそれを手掛かりにしてデザインしたとのこと。
その一例として挙げていたのが、桜の木に絡まるようにつくったベンチ。元々あったものと新しくできたものが、切り離されているのではなく、共存しあうようなかたちにしたかったそうです。
これらのデザインは、すぐにデザインが浮かんだわけではなく、スタディー模型を重ねてきた結果だったそうで、これからいえをつくる子どもたちに、「頭の中で考えるのではなく、手を動かして、頭を使って考えてほしい。また自分の中で楽しいとか、ワクワクするものを大事にしてほしい。」とエールをいただきました。

レクチャーの後は、お待ちかねのフィールドワーク。グループごとに自由散策だったのですが、まず多くのグループが引き寄せられたのがギザギザの広場です。見た目の「ギザギザ」だけでなく、段差を使って並んで「カキカキ」したり、寝転がって芝生が背中にあたったときの「チクチク」を感じたり、階段を駆け上がって息が「ゼイゼイ」したりと、五感を使って様々なオノマトペを発見しました。

一方、広場に向かう大勢をよそに先に水路で秘密の居場所を見つけた子もおり、「チョロチョロ」など静かに水音を感じながら、優雅にスケッチを描いていました。フィールドワーク後半の水路は、広場を見終えて流れてきた子たちで「ワラワラ」と大混雑。植栽や水音、水路を泳ぐ魚など自然のものからもたくさんのオノマトペが見つかりました。

教室に戻ってからは、大きな学内マップに自分が見つけたオノマトペを貼りながら、グループごとに、お気に入りのオノマトペを発表し、みんなで共有しました。
カタチから、自然から、感情や行動からオノマトペを発見していましたが、意外なことに、このランドスケープのシンボルであり、大人が真っ先に目を向けがちなパーゴラ(ブログトップの写真)を選んだ子が少ないのには驚きでした。子どもならではの視点や地面に近い目線で風景を捉えているのですね。
実際の建築の仕事でも、初回に敷地を観に行く際は、「直接そのプロジェクトに関わらない者も、とにかく手が空いているものは一緒に行きなさい。複数の視点で見ることが大事だから。」と教わったことがあります。各々でこんなにも見方や感じ方のバリエーションがあることや、自分にはなかった視点を共有して取り入れていくことは、これからいえを考える際に想像のタネを育てるための豊かな土壌になりそうです。
次回は引き続きこのみんなが見つけた「オノマトペ」について、さらに理解を深めていくところからスタートします。

編集後記
古家さんが全体のランドスケープに携わって15年を経た間に、オブジェ(上記写真参照)や和風庭園など、別のデザイナーさんらの手によって新たに整備された箇所もいくつかあるそうです。それでも全体のバランスが崩れることなくデザインされた多様な居場所の1つに見えるのは、当初古家さんが大切にされていた「元々あったものと新しくできたものが共存しあえるかたちにしたい」というコンセプトが生き続け、既存の木や水路だけでなく、将来的に加わる新たな要素をも受け入れうる包容力のあるデザインになっているからなのだなと感じました。
古野 尚美(ブログ担当)