子ども建築塾 前期2回「自然のようないえはどんな感じ?」

2013年05月13日

5月11日、雨がポツポツと降るあいにくの空模様の中、子ども建築塾前期2回目の授業が行われました。
今回は「外とのつながり方」を考えてみるため、実寸大の開口部の模型をつくって体験しました。しかも、世界的に有名な5つの建築の開口部がモチーフとなっています。
「どんな感じ??」、それが今回のキーワードです。

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「外のつながり方」を考えてみる

はじめに太田先生のお話が始まるかと思いきや、スタジオの電気がパッと消えて、暗くなってしまいました。スタジオの窓がボードで塞がれて、さらに外が雨なので、いつも以上に真っ暗なスタジオ。
かすかな外の音が聞こえるくらいシーンとなると、太田先生から
「どんな感じ??」
と唐突な質問が投げかけられます。

「真っ暗」「空気が重い」「何か音が聞こえる」…と子どもたちなりに考え、答えが上がってきます。続いて、太田先生がスタジオから外階段につながる鉄の扉に手をかけて、
「いまからこの扉、建築ではこういった<外とつながるもの>を“開口部”っていうんだけど、開口部で部屋の中が<どんな感じ??>に変化するか考えてみよう」
といって扉を少し開けました。
すると、薄暗いスタジオに一本の光の縦線が浮かんできました。

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「どんな感じ??」…「明るくなった」「空気が和らいだ」「つめたい空気」「雨の音が聞こえる」…。

さらに、扉を開けて。
「どんな感じ??」…「外の景色が見える」「なんか変な臭いがする」「湿った空気が入ってきた」…。

扉を開けただけなのに、光、風、景色、におい、音、温度、湿度など、いろいろなものが変化していることに気付きます。

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実寸大の開口部の模型をつくる

次に、開口部の違いによる「どんな感じ??」を知るために、5つの開口部の模型をつくってみます。つくる開口部は、
①障子
②いろいろなかたちのまど
③色がついた光
④光の大砲
⑤ひらく・とじる
の5つ。子ども建築塾史上初(?)のグループ制作です。

130511 教材

「色がついた光」のグループの作業の様子をちょっと覗いてみましょう。まず4枚の板を布ガムテープで組み合わせて箱をつくっていきます。箱が5つ出来たら、黄色い紙で箱をクルッと包み、上下の2枚の板で挟みます。他のグループに比べて作業の工程が多いせいか、「もう少し作業のスピードあげてください」と指示が…。「早くだって」「え~」「紙(両面テープの剥離紙)が取れな~い」「焦らないでいいよ」…意外にもそうした指示がグループの結束を強めるのです。

きれいに並んだ5つの箱を横から覗き込んで「これ面白いね~」「こんな“いえ”もいいんじゃない??」と子どもたちなりの感想を述べます。最後に不透明な板を貼り付けて完成です。

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グループ作業によってお互いの距離がググッと縮まりました。みんなで協力してひとつのものをつくるため、自然とコミュニケーションが生まれ、遠慮がちだった子ども同士もお互いに得意な部分は相手に教え、道具の貸し借りやどうやってつくっていくのかと活発な議論も起こりました。いつの間にかにぎやかになったスタジオには、5つの実寸大の開口部の模型が出来上がりました。

5つの開口部は「どんな感じ??

いよいよここからがメインイベントです。今回は、スタジオの窓をボードで塞ぎ、そのボードに模型をはめ込めるよう穴を開けた仕掛けを準備しました。つくった模型をはめ込むと、なんと本当の開口部みたいに体験できます。

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まずは「障子」のグループから順番にスタート。すっぽりときれいにはまると「おお~」「きれい~」と歓声があがりました。先ほどまで開いていた四角いはっきりとした穴が、格子状の陰影と和紙による淡い光が広がる開口部に大変身しました。
「障子」は、きっと一度は見たことがあるかたちなので、「田舎のおうちみたい」などの声も聞こえてきましたが、改めて観察すると違って見えてきます。近くに寄ったり、遠くから眺めたり、斜めから見たりと、いろいろなところから観察し、風や景色、光はどうかな、とみんなで考えます。

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続いて「いろいろなかたちのまど」。大きさもかたちも違い、透明な部分もあれば不透明な部分もある開口部からは、いろいろな光が入ってきます。

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「色がついた光」を取り付けると、先ほどまでの2つと違って黄色い窓なので、見る角度で黄色い光が見えてきます。白い光に黄色い色がついた光景は、とっても神秘的。太田先生から「色のついたガラスを使わなくても、光に色をつけることもできるんだよ」と説明を受けます。

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今度は、いろいろな色が見える「光の大砲」。白・赤・青・黄の4色の光が見えます。「黄色が一番明るく見える」「色によって明るさが違うね」「青も角度によって明るくなるよ」など、これまた新たな発見がありました。

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さて、最後は「ひらく・とじる」です。これまでのものと違って、「ひらく・とじる」は文字通り、取り付けた板が動きます。ブラインドのような感じで、光をさえぎったり、取り入れたり。しかも、これまでの窓と違って、透明(または不透明)な板がついていないので、外の空気が入ってきます。板をひらいてあげると、風が入ってきたり、音が入ってきたり…目に見える変化だけではなく、身体で感じる変化も体験、いろんな「外とのつながり方」があることが分かりました。

開口部と一言で言っても色々な種類があります。今回のように同じ場所で5つの開口部を体験すると、「どんな感じ??」が違うことを、身体を使って知ることが出来ます。これぞ建築の醍醐味、ちょっとした違いで様々な「どんな感じ??」をつくり出せるのです。

5つの開口部は実際にある5つの建築の開口部

5つすべての模型を体験した後は、太田先生から写真を交えてのレクチャー、ここで種明かしです。実は、今回つくった模型たちは、
①障子 → 数寄屋 障子/堀口捨巳
②いろいろなかたちのまど → まつもと市民芸術館/伊東豊雄
③色がついた光 → ヒラルディ邸/ルイス・バラガン
④光の大砲 → ラ・トゥーレット修道院 光の大砲(カノン・ルミエ)/ル・コルビュジェ
⑤ひらく・とじる → ティバウ文化センター/レンゾ・ピアノ
の開口部だったのです。

「まつもと市民芸術館」では、夜の外観写真が印象的でした。中からの光が溢れ出し、「光る石ころ」「星空みたい」と声が聞こえてきました。「ヒラルディ邸」では強烈なピンクや黄色に「え~」とびっくりした声が、「ラ・トゥーレット修道院」では「きれい!」と20世紀の巨匠がつくり上げた最高傑作に感動していました。

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レクチャー後、グループごとに今日の感想と次回のことについて話し合いました。今日一日で、急に子どももTAも雰囲気が変わりました。子どもたちもTAも一緒に一年を通して成長していくのが、子ども建築塾のひとつの大きな特徴でもあります。

個人的には、今回のプログラムがこれまでの子ども建築塾のカリキュラムの中で一番<建築>らしものだったように感じました。自分自身の身体を使って、空間の違い、「どんな感じ??」の違い、について考えられたことは大きな収穫だったと思います。<建築>を考える上での最も重要な基盤は、自分の身体で考えること、自分が体験した「この感じいいなぁ」ということをどうやって表現できるかです。

次回は、「自然のようないえ」を考え、絵にして、発表を行います。

根岸博之