塾生限定講座 夏期合宿(2日目)

2013年08月15日

7月21日、夏期合宿2日目も盛り沢山の一日でした。

朝起きて瀬戸内の海面を眺めながら露天風呂に入り、朝食を取った後、バスに乗りフェリーで大三島へ向かいました。晴れた日の海路はとても気持ちの良いものです。

4624Photo:Manami Takahashi 

大三島到着後、大三島町立宗方小学校の跡地にある大三島ふるさと憩の家へ移動し、敷地内の岩田健母と子のミュージアムの見学へ。ここでstudio-Lの山崎亮さんが合流されました。

伊東塾長と、伊東事務所の担当スタッフ・近藤さんから建築について説明していただきました。広々と閉じられた、とでも表現したくなる中庭に沢山の彫刻が展示されています。それぞれの彫刻の基壇の高さは、重機で彫刻を上げ下げして検討したのだそうです。

4673Photo:Manami Takahashi

続いて、今治市伊東豊雄建築ミュージアム(TIMA)へ。
まずはかつては都内に建っていた伊東塾長の旧自邸・シルバーハットを見学しました。
伊東塾長からは、現シルバーハットとかつてのシルバーハットとの違い(アプローチの位置や柱の太さなど)や、設計時に考えていたこと(「住宅の要素全てをゼロに戻して考えた」)などが語られました。
家具は故大橋晃朗氏デザインのオリジナルのもの、もしくはメーカーに残っていたものが展示されているそうです。
三角形のトップライトが赤青黄に彩られており、ル・コルビュジエのラ・トゥーレット修道院を思い浮かべましたが、伊東塾長いわく、光の三原色を意識したとのこと。

4728Photo:Manami Takahashi

続いて、多面体が集積したスティールハットを見学しました。
オスロの図書館のコンペの際に作った案が元になっている、というこの建築について、伊東塾長は「建築を考えるときには中から膨らませていくのが普通だけど、例外的に外から彫刻的に考えた」とおっしゃっていました。
伊東事務所の担当スタッフ・矢吹さんにミュージアムの内部や展示等について色々と説明していただきました。
内部の壁に、さまざまな建築家や文化人の建築についての言葉があしらわれていたのが印象的でした。

4798Photo:Manami Takahashi

例えば、

人はすべてを失っても集い、飲み、食べ、語り合う
その憩いの場に「かたち」を与えること ―――伊東豊雄

といった感じです。
私がいいな、と思ったのは、

何もない方が自由と思うかもしれない。
でもそこに何かがあることによって自由を獲得することもある ―――御手洗龍

という言葉でした。

4820Photo:Manami Takahashi

瀬戸内海を臨む、みかん畑の中にスティールハットとシルバーハットは建っています。道路脇に植えられたローズマリーが力強く枝を伸ばし、季節はずれ(?)のウグイスがさえずっている、そんな場所でした。ミュージアムを建てるにあたり、今治市は希望の場所を用意してくれたといいます。

陽光の下、青い海や島の緑を眺めていると、風光明媚な場所には別に建築や人工物は必要ないのではなかろうか…、と思ったりしつつあったのですが、TIMAに来て、やはり良い景観の中に良い建築が在ると一層魅力的な場所になるのだ、と建築の力を再認識しました。

4841Photo:Manami Takahashi

その後、大山祇神社の参道入り口へ移動し、参道を通って大山祇神社を参拝しました。参道入り口からすぐのところに桟橋があり、かつては島の玄関だったそうなのですが、しまなみ街道が開通した影響から航路が廃止となり、島の玄関ではなくなってしまい、それに伴って参道も賑わいがなくなってしまった、というのが現状です。それに対して昨年度の伊東塾塾生有志がプロジェクトを行っているそうです。

4866Photo:Manami Takahashi

大山祇神社には、重要文化財の本殿、拝殿や、樹齢数千年とされるクスノキの巨木など、見所が沢山ありました。さらに宝物館には国宝8点をはじめさまざまな文化財があるとのことで、見応えがありそうでしたが、時間がなかったので諦めました。次の訪島時には拝観したいものです。

4966Photo:Manami Takahashi

午後は大三島ふるさと憩の家に戻り、本日のメインプログラムのワークショップと対談『デザイナーは地域にどう関るべきか』(山崎亮×伊東豊雄)に参加しました。

前半のワークショップには大三島の方だけでなく、今治や四国、広島など多くの地域から参加者が集まり、8つのグループに分かれて、熱心な議論が交わされました。中には休憩時間まで作業を続けるグループもありました。

5074Photo:Manami Takahashi

後半の始めにワークショップのプレゼンテーションが行われ、その後に山崎さんと伊東塾長お二人の対談が始まりました。

山崎さんからは、企業の経理部門だけ大三島に移転したらどうか、というアイデアの例や、「気になる事例シート」のつくり方、地域で活動を始める際の心得など、コミュニティデザイナーのお仕事のリアルな話を沢山聞くことができ、大変為になりました。

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対談終了後、塾生から「ファシリテーターとしての予習を前日に行ったことにより、ワークショップの進行がスムーズになりすぎたのではないか?(予想外の展開が生まれにくかったのではないか?という意味だと思います)」という質問がありました。それに対して山崎亮さんが「スムーズに進まず気分よく終わらないワークショップをしてしまったら、住民の方は次から絶対に参加してくれなくなってしまうので、スムーズに進むことはとても大切」と迷い無く回答されたことに感銘を受けました。現場の最前線で活動されているんだなあ、と。

5265Photo:Manami Takahashi

その後、マーレ・グラッシアで海水風呂に入った後、夕食、夜塾となり、ワークショップの反省や今後の大三島での活動についてなど、参議院選挙の開票速報を眺めつつ、塾生達は夜遅くまで語り合ったのでした。

塾生 イトウジュン