子ども建築クラブ③「〜あう」まなび場をつくろう

2014年09月26日

みなさま、こんにちは。子ども建築クラブTAの山口絵莉一です。
8月31日に子ども建築クラブ3日目の授業が行われました。
今日はとうとう成果発表の日。どんな作品が仕上がるのでしょうか!

模型制作
午後から発表会のため、午前中の模型制作の予備時間に模型づくりを行いました。
スタジオへやってきた子どもたちは、よい作品に仕上げるための期待や、発表会への緊張、時間までに完成できるかの不安など、様々な表情をしており、先週のワイワイした楽しい雰囲気とは打って変わって引き締まった空気の中、作業スタートです!

IMG_5225

お昼までの時間は短いですが、完成に間に合うでしょうか?

発表会
模型制作の時間はあっという間に終了!
慌ただしく片付けと昼食を終え、午後からは発表会に移りました。

ブログ用敷地

Aグループ「本の場」
まずはAグループの発表です。
Aグループの敷地は打瀬小学校に近く、また他の3グループと接する辺が大きく、細長いかたちをしているのが特徴です。
今日は男の子2人がお休みだったため、女の子2人での発表となりました。
Aグループの目玉は『足湯』があるところ。ここでは足湯につかりながら本を読むことができます。足湯の内側には敷地を1周するようにスロープが設けられ、スロープ沿いにつくられた本棚から本を取り、好きな場所で本を読むことができます。真ん中に広がる広場には広々としたソファが置かれ、雲型の屋根によって屋内と屋外が仕切られています。
1人でゆっくり本を読みたい人のためのキューブ型の個室もあります。中をのぞくと床には柔らかいじゅうたんが貼られており、何とも癒されそうな空間となっています。
本の置き場にも工夫があり、隣接するそれぞれの敷地のテーマに合わせた本が配列されているのです。3つの敷地すべてを眺めることができるので、利用者にはそれぞれの好みに合うように自由な使い方をしてほしいと発表してくれました!
工藤先生からは「他の全ての敷地に面しているという土地の強みを生かしたプランになってますね。足湯と本との組み合わせが意外な発想で面白い!みんなで本を読めるよう家具もしっかりつくり込んであるのが空間をイメージしやすくしているね。」と感想をいただきました。

IMG_5239

Bグループ「音楽の場」
Bグループの3人は、とにかく仲良しで、発表も楽しそうに話してくれました。
敷地の中央には大きな円柱の音楽ホールがあり、ホールの外側には季節をイメージした色とりどりのスロープがホール入り口にまで円柱を囲むように続きます。
音楽ホール内は演奏側に向かって弧を描きながら段が下がり、その段の上でもお客様が座って音楽を聴くようになっています。
天井には、前回の建築クラブの際に制作したような竹網のシェルターからヒントを得た天蓋があり、そこから照明が吊られています。
スロープの下にはBOXの個室があり、個室の中でも音楽が聴けるようになっています。(実はこのBOXは、2011年度子ども建築塾で見学に行った、森山邸のオマージュだそうです!)このBOXは、幼稚園側に向けて開いているので、幼稚園児も音楽で遊べるように工夫されていました。
ハキハキとした発表が終えると伊東先生から辛口のコメントが!
「円いホールだと音が真ん中にたまっちゃうからいびつにした方が良いね。」
さすが、塾生OB、OG。評価も少し厳しめですが、これもみんなの理解度が高いからこそのお言葉です!
太田先生からは「他の敷地に開くようにホールを向けてあるのがとてもよいですね!」
工藤先生からは「牛乳パックの殻を上手に使ってつくられたスロープがとても効いてるね。」とそれぞれお言葉をいただきました。

IMG_5245

Cグループ「食の場」
リズミカルな配置の円によって構成された土地や建物が特徴のCグループ。作る、育てる、調理する、食べる、売る、全てのアクティビティが敷地内でできるように、それぞれの円には畑、池、販売棟、調理スペースの要素が詰め込まれています。
平面のみならず立体的な構成も工夫されており、屋根上に畑があったり、2階に飛び出た木から実をとって食べたりと、食べる場所も固定されていないので、お客様の好みで楽しみ方が変わる空間になっています。
「『食』は全てのテーマに繋がる要素だから、この場を起点に他の敷地とも繋がりを持つようにしました。例えば、工房で作ったお皿をこのお店で使ったり、本を読みながら食事したり、音楽イベントのときには移動販売車で売りに行きます。」と説明をすると、移動車が実際どのように販売するのかを実演しながら説明をしてくれました。
つくり込まれた移動車をのぞくと、なんと中には伊東先生がおりました!!伊東コックのつくるご飯はとても手が込んでそうですね!
そして、池では釣りもできます!よく見ると釣った魚に人が食べられている、、、その人を指しながら「これ食べられているの私なのよ〜!」と笑いながら工藤先生。まさかの発表に会場も、どっと笑いが起きました。
太田先生からは「調理、販売スペースのカフェみたいなところが柱を中心に円状に座れるようになっているから、みんな顔を向かい合わせる関係性がいいよね!」との講評をいただきました。
他の先生も同じ意見のようでした。建物だけではなく、座ったときの人間の関係性まで突っ込んだご意見をいただくのは本当に大学の合評のようでした!

IMG_5266

 Dグループ「工房の場」
Dグループはなんと、4グループ中唯一スタディ模型をつくっており、発表で見せてくれた模型は午前中の作業のみでつくりあげた作品です!
アリの巣のようなうねうねした道が、この場所に点在する実験室や売り場、池をつないでおり、さらに高さを変化させることによって通路、テーブル、作業机など様々な用途に変わっています。
工房のメインとなる実験室は、中央に彫り込むようにつくられており、何段か段を下りたところに配置されています。
実験室には指導員が滞在し、実験や工房体験があると指導員を中心に、その周りにお客様が座ってイベントなどを開くそうです!
工房は今回のテーマの中で最も子供達になじみのないもので、想像するのが難しいため、難易度が高かったはずです。。3人とも自分が必要だと思う要素を挙げていき、つくり始めていったものをアリの巣のような道でつなげることで一つの作品に仕上げた、苦労と根性の感じる作品になりました!
先生方からは「オープンな実験室、工房を見下ろせるかたちになっているのが外からの人を呼びやすくなっていていいね!」との総評をいただきました。
工藤先生からの「うねうねした道がテーブルに変わるのが面白い!売り場の屋根だけ繋がっていないのがもったいない!」とのお言葉には、屋根までつなげていいものかと少し困惑してしまった子ども達。
すかさず伊東先生より現在進められているプロジェクトを例に出し「もっと自由に進めても大丈夫だよ!」と次に繋がるアドバイスをいただきました。

IMG_5255

総評
全ての発表が終わると、先生方から総評をいただきました。
太田先生
「みんな模型づくりが上手になっているね。まずボードの切り方が上手い!また、今回どのグループも細かいところまでつくり込んでいるから空間のイメージがしやすいね。4つのグループが合わさったとき、どの敷地に行くか迷ってしまう空間ができ上がっている。さすがOB、OG!」
工藤先生
「中間発表で4つのグループくっつけた後の議論が良かった!そのときにお互いもっとシェアできる工夫をしようと意見が出たけれど、その結果がきちんと最後のかたちに生きているね!グループ制作は大学生でも大変な作業なのに自分に与えられたところだけではなくテーマにあった『〜あう場』がつくられているのが素晴らしいです。これからもその考え方で成長してください!」
伊東先生
「今回は中学生がたくさん参加してくれて、今まで小学生だった子がどうなっているか楽しみだったんだ。話し方がもう大人になっていたね。きちんと相手に考えが伝わるように話していたことに驚いたよ。見学のおかげもあるけど、建築の中と外が曖昧になる空間に違和感がないのがいいね。模型もちょうどいいサイズ感。自分がそこにいる気持ちを持って、つくることができたのがとても良いね。」
力作ぞろいで他のグループの作品や先生からのコメントからいろんなことを学んだのか、総評を聞く間もみんなとても真剣な表情をしていたのが印象的でした。

IMG_5285

総評を終えて授業終了・・・・ではありませんでした!
みんなの苦労をねぎらうお楽しみ会が待っておりました!

お楽しみ会
合図とともにお菓子が並べられると、今までの真剣な表情は一変!ニコニコと笑顔でお菓子を手に取り、見学に来られたご家族や先生方、TAも交えてみんなで今回の子ども建築クラブの歓談となりました。
お楽しみ会終盤には更なるサプライズ!Bグループの男の子が今回の模型づくりのみんなの様子を写した、動画の上映がありました。工夫を凝らした上映作品に会場が沸いた中で、短い中でも濃い時間を過ごした子ども建築クラブのお開きとなりました。
 
私は今回参加させていただいて、子どもたちから驚かされることばかりでした!
まず、子どもたちみんなが『建築や空間』を理解し、つくろうとしているところ。
はじめは、噛み砕いた説明をしていましたが、子どもたちから出た意見を聞いて、同じ作品をつくる仲間として意見を言い合おうと思いました。床や天井の高さが違うだけで見えてくる景色が変わること、感じる空間が変わること、大学1年生でも伝わらないのではないかという微妙なニュアンスをはっきりと理解した上で、自分の考えを伝える姿には本当に驚きました。
先生方もおっしゃっていたように、常に『自分がその空間にいたら』という考えが自然にできるようになったのは、これまで経験した建築塾での成果だと思います。日常にある普通のものにも『これが建築だったら〜』と空間的に考えだすのでしょうか?少し特殊な見方を身につけた子ども達が、これからどんな成長をするのか心から楽しみです!