塾生限定講座「座・高円寺」見学

2015年02月03日

2014年8月18日、座・高円寺の館長である桑谷哲男氏と伊東豊雄建築事務所の東建男氏にご案内いただき、「座・高円寺」を見学させていただきました。「座・高円寺」は地域に根差した芸術文化活動の拠点として伊東豊雄建築設計事務所が設計し、2009年にオープンしました。演出家・劇作家の佐藤信氏が芸術監督を務めていることでも有名です。

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外観は布を貼ったテントのようなかたちです。鉄板のつくり出す曲面がとても動的で、「ハコモノ」という劇場の固定概念が覆されました。思わず中をのぞいてみたくなるような衝動に駆られます。

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全開放できる正面の扉をくぐると、床に映し出された円形の照明が空間を満たし、まるで自分がステージに立ってスポットライトを浴びているかのような、華やかなホワイエが広がります。

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地上1階にあるホール「座・高円寺1」は、“舞台人のための四角い箱”であり、自由なレイアウトが可能です。客席、照明、舞台、反射板、入り口さえも自由に変更できるため、公演ごとに配置を変えることができます。このような可動性の高い空間にすることで、“劇場に合わせて作品をつくる”という従来の方法から、“作品に合わせて劇場をつくる”ことを可能にした点が大きなメリットだと桑谷氏は仰っていました。

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地下2階のホール「座・高円寺2」は、主にアマチュア向けの固定型劇場で、楽屋が舞台袖と直結したつくりになっています。座席は固定席ですが、各席の肘掛けに協賛企業のプレートが埋め込まれており、座・高円寺がたくさんの地域の人々に支えられていることを物語っていました。

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同じく地下2階にある「阿波おどりホール」は、天井が高く、壁には鏡が張られた明るい空間です。ここは主に阿波踊りの練習や会議などに使われており、地域の方々の文化振興・交流のための場として活用されています。

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地下3階にはけいこ場や衣裳、小道具の製作工房、そして映像や音響などの編集室が並んでいて、企画から公演までに必要な機能がすべて凝縮されていました。

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最後に、地上2階のカフェを見学しました。カフェにはステージ用の照明が使われ、壁沿いには地域の子どもが読むための絵本が並べてありました。平日も近所のママさん同士がランチやお茶を楽しんでいるそうで、「まちのえんがわ」のような空間として利用されているそうです。

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塾生からの質疑応答の際、桑谷氏は「劇場の利用者は、地域住民の約3割ほどなんです。残りの7割の人のために何ができるかを考えています。劇場には行かないけれど、おもしろいから支持する。そんな人が多くなるように、劇場を飛び出して地域に働きかけるんです」と仰っていました。座・高円寺は、地域に溶け込むことで“完成してゆく”劇場なのだと強く感じました。

塾生 川見拓也