塾生限定講座「山梨学院大学 国際リベラルアーツ学部棟」見学

2015年02月05日

昨年11月29日、山梨学院大学(山梨県甲府市)が2015年春に新設する「国際リベラルアーツ学部」の新校舎・学生寮の施工現場見学に訪れました。
塀や門扉のない、街に開けたオープンなキャンパス。そこに、国内だけでなく海外からの留学生も集い、共に学び暮らす場を、建築がどのようにサポートしていくのか、興味を持ちました。
航空写真©清水建設©清水建設

伊東豊雄建築設計事務所の東建男さんによる見学前のレクチャーで、創立70周年記念事業の一環でもあるこの建築は、延床面積約1万平米、RC造七階建てのボリュームながら、わずか10ヵ月の短工期であること。敷地中央上空にはJRの送電線が走り、高圧線のかかる範囲は建物の高さ制限がある中、富士山を眺める景観を大切にすることも課題であったことを伺いました。

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また、今回選ばれた基本構想は、屋上庭園(芝生広場)を持つ円形(直径52メートル)の校舎棟を中心に、東西にタワー状に積まれた三ツ矢型の学生寮がつながることで、ここが学ぶだけでなく共に暮らす「大きなみんなの家」を象徴したものであることも伺い、どのようなかたちでそれが具現化されているのか、見学への期待が高まりました。
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現場に到着し、はじめに訪れた校舎棟は、北側外周部に研究室、南側には食堂とカフェ(1階)、中央には教室・会議室・中庭(アートギャラリー、竹林)、言語学習センター(2階)などで構成され、今回はその構造躯体を見ることができました。

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内部に入ると、曲線・直線・幾何学といった様々なデザインパターンを形づくり、構造を支えるRC耐震壁と細い鉄骨の丸柱に目を奪われつつ、大開口により想像以上に光が内部に届けられ、開放感が得られることに驚きました。

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また、「セルフキッチン」や「日本文化教室」のように、さまざまな国籍の学生が、自国の料理に腕を振るい披露したり、茶道や武術を通じて自国や異国の文化を認識し、気づきや発見をもたらす「きっかけづくりの場」が提供されていること。教室がいわゆる大講堂ではなく20~30人向けのヒューマンスケールで、自在に可動できる家具を用い、対面し議論できるよう工夫されている点などが、この学部だからこそ活かされる場として記憶に残りました。

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次に、送電線を高くし、低層階の校舎棟に設けた屋上庭園に向かいました。一歩足を踏み入れると、紅葉の始まった美しい山々と富士山、光と風の心地良さに包まれ、自然に対して開かれた建築が、学生生活の悲喜こもごもに寄り添い、時に心をほぐし、エネルギーを与えてくれる気がしました。

続いて、校舎棟からつながる学生寮を訪れました。コンパクトな個室と水廻り、共同のリビングなどが設けられ、いたるところにコミュニケーションが気軽に図れる配慮が散りばめられていました。全体を通じて、この建築が「共に学び、生活し、交歓する」ことをもサポートした「大きなみんなの家」であることを実感させてくれました。
学生寮

最後になりますが、今回の見学の前後に、伊東豊雄建築設計事務所と清水建設(共同設計)の方々のお話を伺う機会を得ました。抜群の信頼を得る工事長を筆頭に、各分野のプロの方々が建築に真摯に向き合い、「大きな家族」のように支えあうチームワークの良さが、この短工期ながらボリュームのある現場を支える力であり、魅力でもあると感じました。今回の現場見学を通して、この「大きなみんなの家」にさまざまな国籍の学生が集う今春の完成がますます楽しみになりました。

塾生 田中桃子