子ども建築塾 千駄ヶ谷のまち 公開発表会

2015年04月14日

3月28日、桜が見ごろの東京大学先端科学技術研究センターで、「子ども建築塾 千駄ヶ谷のまち 公開発表会」が行われました。
会場は、塾生の子どもたち、講師の先生方、スタッフやTAの皆さん、保護者の方々、お客様で満員に。子どもたちがつくった色とりどりの「まちの建築」の模型と、「まちの建築」の提案場所を示す千駄ヶ谷のまちの大きな敷地模型が、早くからご来場くださった方々の目を楽しませていました。
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Photo:Manami Takahashi

伊東豊雄塾長の挨拶の後、講師の村松伸先生から後期の課題が説明されました。後期の「まち」の授業では、東京の色々なまちを探検し、観察して、「まちの建築」を提案する敷地を決めることが特徴の一つです。今年度は千駄ヶ谷のまちを対象としました。千駄ヶ谷は、都心にありながら緑や水、生き物、人々、地形、新旧の建物等が豊かな風景をつくり出している場所であり、また2020年の東京オリンピックに向けた国立競技場の建替えの是非が問われた場所でもあります。今回、東京オリンピックは課題の焦点ではありませんでしたが、「~とともに」(水とともに/植物とともに/人とともに/まちなみ・建物とともに/生き物とともに)という課題を通して、子どもたちが千駄ヶ谷のまちを歩いて感じ取ったことから考え、まちの様々なひと、もの、ことと共生する方法を「まちの建築」によって提案する、ということがねらいとされました。
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Photo:Manami Takahashi

さて、課題説明の後はいよいよ子どもたちの発表です。
「ぼくは明治公園のスダジイを見て、葉っぱは枯れていても迫力があり、生きている花と同じくらい魅力があることに気づきました。この建物は、そうしたことを伝えたいと思って考えました。」
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Photo:Manami Takahashi

「ぼくは千駄ヶ谷のまちの人々に馴染みのある富士塚の形から建物を考えました。いくつかの場所に建て、歩いている人の目印になるような高さを考えました。」
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Photo:Manami Takahashi

「私は外国から来たお客様のための旅館を考えました。普通の四角い窓はカクカクしていて、暖かい感じがしないので、丸い窓にしようと思って、上の階に太陽と月の窓をつけました。」
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Photo:Manami Takahashi

「私は坂を上りながら千駄ヶ谷のまちの歴史を知ることができる、道を巻きこんだような建物を考えました。まちで出会った千駄ヶ谷の歴史をよく知っているおじいさんが、ここに来て話すことができるようにしました。」
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Photo:Manami Takahashi

「私はトンネルを抜けると、違う世界が広がるような不思議な感覚をおぼえます。馬に乗って千駄ヶ谷のまちのトンネルを抜けて、皆の『まちの建築』を巡るルートを考えました。」
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Photo:Manami Takahashi

子どもたちは皆、千駄ヶ谷のまちで注目した場所、ひと、もの、ことを個性豊かに紹介してくれました。一人一人の「まちの建築」の発表を聞いていると、子どもたちが自分の気持ちや感覚と実際のまちとを結び付け、その結び付きを切り取って見せることに如何に長けているかということに気づかされます。
そうした子どもたちの気持ちの伝わる発表に対して、講師の伊東先生、太田浩史先生の講評にも熱が入ります。
伊東先生は、「ぼくも水の波紋のイメージをよく考えるけど、例えば一本の木があったらその木が力を発している。もう一本木があったらその木も力を発して、磁力のようなものができる。何か一つのものをつくったら、そこから広がっていく力があるんだよ。」と講評しました。
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Photo:Manami Takahashi

太田先生は、「プレゼンに、まちで人と人が出会って仲良くなる様子がきちんと描かれていて、こんな風に人付き合いをすることを忘れていたなと、ほろっとしました。5つの道の交差点を利用して人が出会うという仕組みがいいですね。都市建築になっています。」とおっしゃいました。
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Photo:Manami Takahashi

村松先生の質問は少しいじわるでしたが、子どもたちは負けずに答え、会場を盛り上げました。発表は丁寧に練習してあっても、質疑応答はその場次第です。どんな質問が来ても答えられる子どもたちの自信と強さは、TAと話し合いながら、時間をかけ、こだわりをもって作品をつくりあげてきたからこそ生み出されるものでしょう。
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Photo:Manami Takahashi

全ての発表が終わり、3名の作品に、伊東賞、太田賞、村松賞が授与されました。そして、この公開発表会は今年度の子ども建築塾生の卒業式でもあり、伊東塾長から一人一人に桜の木のスケッチが入った卒業バッジが手渡されました。
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Photo:Manami Takahashi

さらにこの日は、4年前の開講、それ以前から、子ども建築塾を築き上げてきてくださった太田浩史先生がご卒業される日でもありました。皆から感謝のメッセージを受け取った太田先生からは、「子ども建築塾のプログラムは皆とつくりあげた作品です」というメッセージを頂きました。
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Photo:Manami Takahashi

最後に、昨年度と一昨年度に子ども建築塾に通ってくれた卒業生の坂本桃佳さん、『伊東豊雄 子ども建築塾』(LIXIL出版、2014年)の出版に携ってくださった高田知永さん、デザインエディターの関康子さんからお祝いの言葉を頂き、公開発表会と卒業式は閉会しました。
子ども建築塾では、色々な年齢や経験をもつ人が出会い、一緒に時間を過ごし、学び合って卒業していきます。それは子どもたちと一対一で一緒に建築を考えてきてくれたTAの皆さんも同様です。卒業の日は寂しいものですが、各々が小さな種をもって巣立ち、その種がどこかでまた芽吹いてくれたらと祈るばかりです。私もこの春大学の博士課程を卒業しましたが、子ども建築塾が私の学び場だと胸を張って言いたいと思います。
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Photo:Manami Takahashi

さて、公開発表会の感動も束の間、子ども建築塾では2015年度の開講準備真っ盛りです。これまでの「~のような」「~とともに」の課題、プログラムもリニューアルされます。
新年度の子ども建築塾ブログも、皆様に楽しんで頂けるよう続けてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

子ども建築塾 助手 田口純子