塾生限定講座 東海林弘靖さんによる照明のレクチャー・ワークショップ

2016年04月15日

2015年10月24日に開催された塾生限定講座では、照明デザイナーの東海林弘靖さんをお招きし、前半は光と人間の生活の関係、ご自身が手がけられた建築物等についてレクチャーしていただき、後半は数名のグループに分かれ、「元気が出る光をつくる」をテーマにワークショップを行いました。

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講義ではまず、光の空間のデザインと人間の生理・心理との関わりや光のイメージについて、自然・人工それぞれの切り口から写真を使って丁寧に解説していただきました。人間と光は原始から切り離せない関係にあり、光の当たり方、色彩、照度、明るさなどは人の活動や心の状況に大きく影響するそうです。例えば、照度の高い朝の光に当たると、私たちはアクティブになり、一日の活力を得ることができます。また、オーロラは多くの人が知っている有名な例ですが、国や地域によっても光にはさまざまな種類があるそうです。

オーロラ

光はまた、経済状況や犯罪の発生率を反映した結果とも言えるそうです。例えば、ニューヨークのオフィスビルには深夜でも煌々と明かりがついています。残業している人が多いと思われることがほとんどですが、実は防犯のためとのことです。一方、フランスのリヨンでは都市計画の中で夜景もきっちりと計画され、光を当てるところ、当てないところのコントラストによって、より一層美しい夜景を見ることができます。

また、ベネチアのグランカナルの夜景をご存知の方も多いと思いますが、ベネチアを訪れた観光客が写真を撮って世界に発信することで、その魅力をさらにアピールし、より多くの人に来てもらおうという工夫だそうです。さらに、ベルギーの王宮広場はとても明るいように思えますが、実は照度はそこまで高くないようです。東海林さんは、王宮広場の例から、光と人間の心地よさとの関係を話していただきました。自分の居場所が暗くても、周りは確実に明るい空間で、多くの人は安心感や心地よさを感じるそうです。

蛍の木
パプアニューギニアにある「蛍の木」

続いて、東日本大震災をきっかけに「照明は何のためにあるのか?」というテーマについて考え始めたことを話していただきました。テレビ番組の企画で、一本の木に多くの蛍が集まり、クリスマスツリーのように輝く「蛍の木」と呼ばれる木を訪ねて、パプアニューギニアに行かれたそうです。もちろん電気はなく、夜はヤシの実から採れるココナッツオイルを使って、4時間以上かけてつくった油を灯す光で生活している地域の人々がいます。そこで、東海林さんが村の長老に「光とは何か」と尋ねたところ、彼は「光は生きている証」と答えたそうです。村人の家に明かりが灯っていると、今日も何事もなく人々が生活を続けている証、光が灯っていないと何かあったのかと家を訪ねると語ったそうです。つまり、光は人々の命がつながっているシンボルなのです。日本という国に住んでいると、電気が当たり前のように夜も灯っています。改めて、空間や光、人との関わりについて見直したい、学びたいと感じたお話しでした。

最後に、伊東塾長と東海林さんが設計した建築について解説していただき、後半のワークショプに移りました。

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ワークショップでは、数名のグループに分かれ、「元気が出る光」をテーマに模型を作成し、発表を行いました。各グループが「どんなときに元気が出るのか」、ああでもないこうでもないと話し合いながら模型をつくりました。グループによって、「万華鏡の光」や「男祭り」、「美しい光」、「自然の光」というタイトルをつけて全く異なる作品ができ、光と建築の可能性を感じることができました。

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今回講義を受講して光から自分が受けている影響を再認識し、私たち人間の生活と光は切り離せない関係にあるということが分かりました。空間を考えたり設計をしたりしようとするとき、前提として必ず「誰が」「どのように」使うかというテーマがありますが、それはすなわち、光について考えるということでもあるのだと感じました。

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自然光にするのか、人工光を使うのか、どのような明るさが一番良いのか、光の色は、どのような光の入れ方をするのか、などなど、可能性は無限だと感じています。もともと空間デザインと人の心の動き方というテーマには関心がありましたが、改めて、人の生活に寄り添った光とはどういうものか考えていきたい、さらに勉強していきたいという気持ちになりました。

塾生 八角四季