子ども建築塾 前期第1回「『みんなの家』ってなんだろう?」
みなさん、こんにちは。
4月15日に行われた子ども建築塾第1回の授業の様子をお伝えします。
さて、今年度もいよいよ子ども建築塾がスタートしました。今日はその第1回目です。私たちTAも塾生の子どもたちと初対面でドキドキしながら待っていました。塾生は少し緊張気味でスタジオに入ってきましたが、グループごとに分かれて、授業が始まるまでにTAとおしゃべりしたり、自己紹介をしたりしました。
はじめに、伊東豊雄先生やアストリッド・クライン先生、太田浩史先生、塾のスタッフからの自己紹介がありました。先生方もこの日が来るのをいかに楽しみにされていたかがよく伝わってきました。
続いて、伊東先生とアストリッド先生から前期の課題である「みんなの家」についてレクチャーしていただきました。今回の課題では、スタジオからほど近い恵比寿の住宅街の一画が敷地となっています。車通りが多く整備された大通りから一変し、敷地周辺は静かで昔からの道や住宅が残っていたり、土地のレベル差があったりと、時代の中で生きてきたまちの様子が感じ取れるような場所です。
今回子どもたちに取り組んでもらう課題は、この恵比寿のまちに「みんなの家」をつくろうというものです。レクチャーでは、伊東先生とアストリッド先生が「人が楽しそうに集まること」を考えながらつくられた建築をそれぞれ紹介してくださいました。伊東先生が設計した「台中国家歌劇院」では、建物前には広場が設けられており、さまざまな人がそこで思い思いに過ごす様子が見られ、暑い日には子どもたちが噴水で水遊びを楽しんでいる様子を写真で見せてくださいました。また、アストリッド先生からは「相馬こどものみんなの家」を紹介していただきました。東日本大震災以降、被災地では放射能への不安から子どもを外で遊ばせられない母親が多い一方、まちの体育館には、とにかく駆け回りたい子どもたちであふれている現状があります。そんな中で建ち上がった「相馬こどものみんなの家」は麦わら帽子のような大きな屋根が特徴的で、建物の中でも野外にある公園のようにいろいろな人が気軽に来られて、一つの屋根の下でみんなが遊べる場所でした。
ところで、塾生のみなさんは今日配られたファイルの表紙のスケッチに気づいたでしょうか。満開の桜の木の下にたくさんの人が集まっています。伊東先生が描いたスケッチですが、木の下の人たちをよく見てみると、犬を連れている人がいたり、足を上げてダンスをしている人がいたり、すごくおもしろいです。桜の木があるだけでこんなにも楽しそうな場所になりますね。これからつくる「みんなの家」にもこのようにいろいろな人がやってきて、みんなで楽しく過ごせる場所になるといいですね。
レクチャーを聞いたあと、「みんなの家」のイメージをグループで話し合いました。誰が来るかな?どんなときに来るのかな?ここではどのようなことをしたいかな?とにかく思いつくままに付箋に書いて、模造紙に貼りつけていきました。
そして、グループごとにみんなの前で発表しました。発表してくれた子の中には、自分たちが絵を描いてそれを飾り、まちに住むおじいちゃんやおばあちゃんにも見てもらえる場所にしたい、と考えてくれた子や、三角形の敷地からインスピレーションを受け、三角チーズのようなかたちの家を考えてくれた子もいました。
他にも日向ぼっこやかくれんぼをして遊べる場所、また、大きなテーブルやお風呂を提案する子もいたりと、自分たちのような子どものための居場所としてだけでなく、恵比寿に暮らすまちの人のことを考え、お年寄りやペットにまで注目して考えてくれた子もいました。
伊東先生のレクチャーの中で、建築家として大事なことの一つに「場所を選ぶ」ということがありました。前期の課題ではこの場所を予め設定されています。ということは、場所に付随してくる社会性や環境を読み取って、それらとの関係性を考えることも大切な行為だと言えます。
次回はいよいよ敷地見学です。実際に敷地を訪れ、周りはどのような環境なのか、この場所に建築をつくるとしたらどのような人が利用してくれそうなのか、あるいは利用してほしいか、そしてみんなが集まるような「みんなの家」とはどのようなものになったらいいか、さまざまな角度から一緒に考えたいと思います。20人それぞれのどんな「みんなの家」ができるのか、今後を楽しみにしています!
日本女子大学4年 菊地ゆかり