子ども建築塾 前期第2回「『みんなの家』の敷地を見に行こう!」
4月29日、快晴で敷地調査日和となった日に子ども建築塾前期第2回の授業が行われました。
今回の授業は、2班に分かれて行動し、それぞれ最初の1時間で「みんなの家」の敷地を実際に見に行き、その後、スタジオに帰って1時間、1〜2種類の素材を選んでスタディ模型をつくり、思いついたアイデアをかたちにするという流れでした。
前回は「みんなの家」のイメージを各グループで話し合いましたが、今回は「みんなの家」を建てる敷地を見に行きました。実際に足を運んで、周りの家にはどんな人が住んでいるか、どんな人が通るのか、どんな音や匂いがするか、五感を使ってどんな敷地か感じとれるように、というアドバイスがありました。子どもたちは急な斜面に座ってみたり、上り坂と下り坂を交互に行き来したりと、筋覚など、五感以外の感覚も使いながら、敷地調査を行っていました。中には坂道を転がってみるという、大人にはなかなかできない敷地の感じ方をしている子もいました。
坂道の上下で、見える景色が異なったり、「アスファルトに座ると、少し硬いけど、日向だとおしりが暖かくて、日影だとひんやりしていて気持ちいい」など、さまざまな発見がありました。また、敷地調査の最中は、あまり通行人がいなかったのですが、敷地周辺に自転車が11台も駐車されていることから、自転車が移動手段に使われていることや、猫よけのペットボトルから、野良猫がいることなどが分かりました。
この敷地は昨年度の後期のBグループの敷地の一部であり、昨年度から引き続き子ども建築塾に参加している子が去年発見したことを他の子に教える姿も見られました。今回が、新しいメンバーになって2回目の授業ですが、この敷地調査で同じグループ以外の子とも話し、少しずつ子どもたち同士での交流も生まれてきたように感じます。
実際に、前回考えた自分の「みんなの家」を想像して、「ここに高いものを建てたら圧迫感を感じるからやめよう」とアイデアを練り直したり、敷地周辺の住宅からの景色を想像し、窓からどんな景色が見えるといいか考えたり、小さい敷地の中で、「ここは好きだけど、ここは変えたい」などと、子どもたちそれぞれの敷地調査の仕方がありました。
スタジオに戻ると、すぐにスタディ模型の制作に取りかかりました。今回は、「ひとまずアイデアをかたちにする」という目標で、短時間で模型をつくり、それに対して意見を出し、手を動かしながら考えるという作業を行いましたが、全体的に、機能とかたちがまだ結びついていないように感じました。
今回の敷地調査で、想像以上に敷地が小さくて驚いたようで、前回は「バスケをしたい」や「カフェをつくりたい」などの意見がありましたが、この小さい敷地で何ができるのか、何をする場所をつくるかという問題に悩まされていました。恥ずかしながら、TAの私にとっても今回の課題は昨年以上に難しく、子どもたちと一緒に「ああでもない、こうでもない…」と考えております。
前回の授業でも考えましたが、「みんなの家」の「『みんな』とは誰か」という問題にも突き当たります。その「みんな」が、どれくらいの人数かによっても、そこでの行動が変わるでしょう。
自分の一番したいことをもう一度考えてみると良いかもしれません。
例えば、「バスケをしたい」と言っていた子は、「体を動かすこと、汗を流すこと、友達と力を合わせること…」や、「カフェをつくりたい」と言っていた子は、「おいしいものを食べること、友達と会って話すこと…」など、バスケやカフェのどんなところが好きなのか、次のスタジオでの授業で一緒に考えていきたいと思います。
犬など動物も含めた「みんな」を考えた子もいましたが、その動物にとっての坂道と、人にとっての坂道は違うかもしれません。子ども目線と大人目線でも坂道の捉え方に違いが出るかもしれません。前回の授業で、伊東先生や、アストリッド先生は「老人が楽に歩けるように工夫したら、どんどん歩けなくなってしまう。老人は坂道を歩かなきゃいけないんだ。」と少し笑いながらおっしゃっていました。
次回の授業は住宅の見学会なので、次にスタジオに集まるのは少し時間が空きますが、敷地調査で発見したこと、感じたことを他の子とも共有し、各々の「みんな」の捉え方について考えられるといいですね。
「みんなの家」の敷地は、恵比寿スタジオから歩いてすぐのところにあり、確かめたいことがあったら、すぐに足を運べます。授業中行き詰まったりしたときに、敷地に足を運ぶのも良い気分転換になったり、そこで新たに何か発見できるかもしれません。私も子どもと一緒に大いに悩んで、話し合いながら「みんなの家」について考えていきたいと思います。
日本女子大学住居学科4年 下田彩加