塾生講座 ショートレクチャー③

2020年06月26日

今回の塾生講座は、緊急事態宣言が解除され、週明けから分散登校や短縮授業などの対策を取りながらの学校再開や、休業要請の緩和が始まる状況の元、5月30日に、オンラインで開催されました。講師陣、塾生皆それぞれの環境で模索しながらも生活をしているということが画面越しにも感じられました。

冒頭の15分ずつ、担当の講師である安東陽子先生、藤森泰司先生のお二人の仕事内容、生活に対する考え、またコロナウイルスの影響による変化があったかどうかをテーマとしたレクチャーをしていただき、その後、質疑応答の時間で、その他講師の方々と塾生により、各々の意見が述べられました。

安東先生は、ご自身の仕事の転換点、現在制作されている建築の素材となるようなテキスタイルの作品のご紹介を含めたお話をされました。

一つのテキスタイルをつくる過程で、納得のできるものをつくるために、職人たちと直接関わって改良を重ね、ようやく完成するという長い道のりがあること、そして、日頃からの信頼関係があってこそだということを感じました。

プロダクト化することが可能であってもあえてそうせず、建築との関係にこだわったテキスタイルデザインに真摯に携われている様子を垣間見ることができ、とても頼もしい方だという印象を受けました。



一方、藤森先生はコロナウイルスの影響で突如在宅ワークを強いられ、自宅での仕事環境を整える中、事務所のメンバーが各々の状況に呼応する家具を調達するということに着想し、デスクの自己生産に踏み切ったというお話をされました。WORK FROM HOMEと称された、三種類の小型デスクのご紹介、試作品での強度確認などの制作過程をお聞きしました。

その後の質疑応答の際に論点になりましたが、家具の自己生産から浮かび上がってくるモノの値段の歪み、例えば極端に安いモノとは、どこかに強い負担がかかることで成立している側面もあります。こうしたことは、生産者の顔が見えない商品を購入する場面が多く、大量生産、消費、破棄の問題、さらに格差拡大の世の中で、広く認識されるべきでしょう。

その上で、「つくったものに値段をつけて売ることは、作り手の責任である」という藤森さんの言葉は、心に留めておこうと思いました。

全体での話し合いの中で、コロナウイルスの影響をどのように受けられているのかは、それぞれの仕事スタイル、職場と家という環境への考え方や価値観といった要素により、様々だということがわかりました。

総じて、やはりこの状況下で、仕事とプライベートの関係、オンライン(バーチャル)とリアルの意義は考えることが多く、オンラインでコミュニケーションが合理化される利便性もありますが、生身の人間として、リアルをより豊かにしていきたいという思いは、皆が強く持っているのだと感じました。

どのような世の中をより豊かに築いていけるのか、私自身、そのことに関して何ができるか、何をしていきたいかを試行錯誤しながら生きていきたいと願いつつ、稚拙ながらも今回のレクチャーのまとめを締め括らせていただきます。

塾生 大川璃紗