TIMA子ども建築ワークショップ「ハットにハットをつくろう!」

2012年03月09日

3月4日、今治市の小学生を対象にしたワークショップが行われました。
参加した子どもは8人。各自に1人の大人がつき、2人1組で作業を進めていきます。ツアーから引き続き、伊東豊雄、末廣香織さん、曽我部昌史さん、太田浩史さんが講師を務めて下さいました。

最初の作業はミュージアム職員の東さんと今治の建築家・青陽さんがすでに作成してくれた一辺1.5m程度の家型の枠組みに段ボールで壁をはっていく作業。すでに正しい大きさに切り取られた段ボールを、シルバーハットの一部を抜き出したような、屋根が半円ヴォールトになっている枠組みにはっていきます。
 
子ども達にとっての主な作業はその後で、一人一人にあてがわれた段ボールで覆われた家の中にはいり、内側から好きなように窓をあけていきます。特に窓のあけかたに制限はありません。もちろんドアをつくっても良いし、装飾的な施しを設けることも自由です。太田さんのアドバイスで、最初に家の中に入り、何もせずにしばらく内側から空間を眺めます。そして、なんとなくアイデアを固めたら、意を決してカッターでエイヤと切り込みをいれていきます。最初の一刀には子ども達の性格が如実に表れます。
 
慎重にゆっくりと位置を決めて切る子もいれば、まちきれずにでたらめに刃をいれていく子、様々です。
また開口の開け方も人それぞれ。円形に切り出す子もいれば、庇をつける子、鉛筆の先で小さな穴を開ける子、ドアをつける子や、棚をつける子もいました。それぞれが好きなように各自の家を彩ります。

個人個人の家が個性的に生まれ変わった後はいよいよ全体計画をしていきます。はじめに中心にくる家をひとつ決め、そこを起点として、端から順番に家の配置を決めて行きます。やはり眺望を考えて、海沿いは人気があったようですが、狭いシルバーハット内では限界があります。それでも他の子との関係性や、かこったときに家と家の間にうまれる広場などの存在に、それなりに意識的になりながら配置を計画していました。
最後に一人一人が講師の前で、自分の計画した家の魅力についてプレゼンテーションをしていきました。

子ども達は最後まで活き活きとしており、寒い日ではありましたが、活発に動き回っては窓の配置を決めていました。段ボールで覆われた家の中が意外にも暖かいようで、そんなことが建物の内外の違いに目をむけるヒントにもなったようです。一人の男の子は、家の中があまりにも暖かいためか、最初の数分間、窓をあけることそのものを躊躇していました。

雨が降った関係上、屋根がかかるシルバーハット内部でしか作業を行えないのは少し残念でした。また時間の都合上、個々の家のつながりについてまであまり深く言及できなかったのも惜しい。そこまで話が派生していれば、子ども達にとっても建築家という職業がより魅力的なものにうつったかもしれません。

1.5mという規模も手伝ってか、最終的にシルバーハット内に形成されていた風景は非常に魅力的なものでした。ちょっとした集落がそこにはあり、シルバーハットがより居心地の良い空間へとさらなる変貌を遂げていました。
ワークショップが終わった後も、子ども達は離れ難そうで、最終的には自分でつくった家を持って帰るという子までいました。一辺1.5mですからミニバンでも必要そうです。

子ども建築塾でも今回のワークショップのように大規模な作業を一度くらい行ってみても良いかもしれません。神谷町スタジオの中に集落ができたら楽しそうです。僕もその中で仕事をしたら、より効率的に作業ができるかもしれませんね。