塾生限定講座「伊東豊雄の実作から考える|座・高円寺(ディスカッション)」

2013年07月02日

4月下旬から5月上旬にかけて「座・高円寺」のレクチャーと見学会を終えた後の5月21日、塾生が書いたレポートをもとに、伊東塾長と伊東豊雄建築設計事務所の東さん、古林さん、そして塾生全員でディスカッションを行いました。およそ2時間という限られた時間の中で、各自思い思いに意見を交わしました。今回話し合われた「座・高円寺」の5つの箇所について、レポートしたいと思います。

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“あえてとじる”

文化活動の拠点として地域に開かれるという劇場のコンセプトに対し、「あえてとじる」という提案で挑んだ「座・高円寺」。塾生は“とじる”から連想される負のイメージではなく、「親しみ」「安心感」というイメージを建築から得たようです。

5017Photo:Manami Takahashi

“丸い窓”

「外壁の丸い窓のパターンはどのように決められているのか?」という質問に対し、「あれは感覚的な開け方で、もともとはもっと開口を空けるつもりだった」という回答をいただきました。そこから話はまつもと市民芸術館の窓の話題にうつり、まつもとの窓は松本城の石垣の石から連想したのだというエピソードを伺いました。

“フレキシブルな劇場”

演出や使い手によって様々なかたちに変化するという劇場構成に、多くの塾生が可能性を感じているようでした。中には「座・高円寺1を、プロの劇団だけでなく、一般の人も使えるようになったら良い」と言う意見もありました。

5057Photo:Manami Takahashi

“大きな階段”

劇場の入り口を入った奥にある階段は建築雑誌でもよくとり上げられており、多くの人に好まれる空間性を持っていると感じました。塾生の中でも、大半の人が印象的だったと答えていました。しかし、伊東塾長自身は「もっとそっけなくつくりたかった」とおっしゃっていました。

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Photo:Manami Takahashi

“エントランス”

前項の階段と同様に、伊東塾長は「そっけなくつくりたかった」そうです。しかし、「エントランスのライトがスポットライトのようで、自分も演者のひとりのような気分になれて、その場に親しめる感覚があった」という感想もありました。

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最後に、私自身の感想としては、今までひとつの建築について意見を交わすという経験がありませんでしたが、同じ意見を持つ人がいて改めて納得したり、「こんな考え方もあるのか」と意外な意見に驚かされたり、多くの人と意見を交わすことの大切さを学びました。そのようなたくさんの意見の中で、一番印象に残ったのは伊東塾長の「もっとそっけなくつくりたかった」という言葉でした。多くの人から好かれている空間に満足いかないというのはどういうことなのだろう?と。

1週間ほど考えていたある日、ヤオコー川越美術館をおとずれた時に気づいたのです。「そっけなくつくる」というのは、建築に自由をもたせることなのではないかと。その自由さがあることで、使う人によって様々に空間は変化するのです。私の個人的な見解ではありますが、伊東建築の「人を中心においた建築のあり方」のようなものを感じ、新しい空間のつくり方を知ることができた貴重な機会となりました。

塾生 五月女和香