講座B 塾生レポート 第4回・第5回「建築はどのようにつくられるか|座・高円寺」

2012年07月11日

 

先日行われた講座B 第4回・第5回「建築はどのようにつくられるか|座・高円寺」のレポートを
塾生の牧野恵子さんからお送りいただきましたので、下記にご紹介させていただきます。

この「座・高円寺」の講座を通して感じたこと、学んだことをご報告いたします。

  • コンセプトの実現
  • 技術の活かし方
  • まちとのつながり

 

コンセプトの実現

「芝居小屋」をつくる、その思いがそのまま建築になっていると感じました。
説明が無くても、ここがそうした思いをもってつくられているということが直感的に伝わるのではないでしょうか。 
“ 小屋 ” や “ テント ”が持つ視覚的なイメージだけでなく、仮設的であることや、庶民的な親しみ、そして秘めやかさといったコンセプトが言葉を介在せずに実感できます。

それを可能にするためには沢山の仕掛けというか工夫があって、それを考えるのが建築家の仕事なんだと改めて確認することができました。

コンセプトの実現のために必要で大切なことが何なのか、たとえそれが一般的な建築計画でなかったとしても、
その見極めとそれを信じてやり遂げる力がこのような建築を実現させるのだと思います。

 

技術の活かし方

技術というのはこのように活かされるべきものだということを教わりました。
ホールを上下に配置するというのは、一般的にはご法度とのことです。
しかし、そこを不可能と捉えずに新しい可能性を追求していくことが大切で、その際に技術が最大限の力を発揮してそれを実現していく。
建築を構想するとき既成の考えにとらわれ過ぎず、技術の力を信頼して様々な可能性の中から考えていかなければいけないことと、
またそうした新しい試みに際しては、丁寧な検証や検討が不可欠であることも学びました。

 

先日、まつもと市民芸術館で「立川志の輔独演会」を観賞しました。
そのとき、志の輔さんがこのホールの音響についてお話をされました。
落語向けの会場でないことはご本人も充分承知されており、したがって音響のチェックを入念にされるのだそうです。

ところが、向いていないどころか本当にちょうど良い響き方をするのでとても話しやすいのだとおっしゃっていました。
さすが伊東先生だと大きく頷いていました。

 

まちとのつながり

そのまつもと市民芸術館は、レストランは私自身一度しかいったことがないですし、伊東先生のおっしゃるとおり決して評判の良いものとはいえません。
また、市民にとっての身近さもこの座・高円寺ほどの親しみがないようにも思います。
せっかくこんな素晴らしいホールですから、もっともっと良い使われ方をしていくはずです。
これから、何か積極的にかかわっていけることがないか探ってみたいと思います。

座・高円寺では、館長の桑谷さんのお話ぶりからも本当にこの劇場を愛しておられるのだなあと感じました。
ご夫婦の特別な日のディナーに、カフェ「アンリ・ファーブル」が利用されているなど、地元の方々にとっても身近で大切な場所になっているとのことです。
広場のように街とつながっていくというコンセプトがやはり実現されていました。

 

2回の講座を通して伊東先生の建築ができる過程を教えていただき、それまでは自分の仕事と何から何までまったく違う方法で
つくられているのではないかと考えていましたが、共通する部分も見出せて少し安心しました。「ああ同じ人間なんだ、良かった」というような。
ただし決定的に違うことも実感し、田舎で建築雑誌を見ながら、表面的な意匠性だけを取り扱っているような状況を何とか変えなければならないと実感いたしました。