子ども建築クラブ「身体で感じる建築の構造ワークショップ」

2014年02月05日

皆様、こんにちは。遠野未来建築事務所の遠野未来です。

1月12日、子ども建築塾の2011年度・2012年度卒業生を対象とした『子ども建築クラブ』が開催されました。今回が初の試みとなった『子ども建築クラブ』は、子ども建築塾で学んだことをベースに、さらにレベルアップしたテーマを設定することで、改めて建築の面白さを体験しながら、講師や卒業生同士の交流を深めるために企画されたものです。今回は構造エンジニアの金田充弘先生を講師に迎え、「身体で感じる建築の構造ワークショップ」を行いました。新年にふさわしい、気持ちが晴れるような素晴らしい内容でした。その様子をご紹介します。

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はじめに参加者全員が自己紹介を行った後、金田先生から「構造って何だろう?」と題したレクチャーと課題説明がありました。ここで金田先生は「構造」という、もしかしたら子どもたちが初めて聞くかもしれない言葉や概念を、自由の女神や阿修羅像、タコ糸や漆などの例を挙げながら、ものの「骨組みと皮膜」、「構造と意匠」の関係をわかりやすく説明してくださいました。それとともに、アポロ計画の宇宙船の最初の木の模型を見せ、建築をつくるとき、みんなでつくりたいイメージと想いを共有することがいかに重要かを説かれ、この日のワークショップの意識付けを行いました。そして「どうやってつくるかを考えるには、まず、試しにやってみることが大切。計算も大事だけど、人間本来の感覚を信頼しよう。今日は縄文時代の建築家になったつもりでやりましょう。」との金田先生のかけ声とともに、いよいよ作業に入ります。

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この日選ばれた素材は「竹」。身近にありながら、かたい・やわらかい、強い・弱い の関係を考えるのに適した素材です。ここから正味3時間で、何ができるのでしょうか。

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作業は肩慣らしとして、まずは竹を切って自分のコップをつくることからスタート。次にナタで竹を4つに割り、節を取り終わったところで午前中の作業は終了となりました。

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お昼ごはんを食べ終えたら、今度は先ほど割った竹を、台形の外形に沿って格子状に並べ、交差している部分を結束バンドで留めていきます。

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「まず一度、試しに立ち上げてみよう」との金田先生のかけ声で、両端を持って立ち上げてみると、あっという間にきれいなアーチが立ち上がりました。「みんなでさわってみよう。これで大丈夫かな?今のままでは、ちょっと弱いよね。どうやったら強くなるだろう?」との問いかけに、子どもたちはどうすれば強度を出せるか考えます。

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考えた結果、今度は両側と中間にさらに割竹を重ね、アーチの補強をしました。立ち上げてみると、先ほどよりも丈夫になった感触があります。「じゃあ、どうやったら自立するだろう?」脚元をどうやって押さえるか、みんなで考えます。骨組みのように竹で結ぶ、レンガを置く・・・色々な答えの出る中「それもいいけど、こんなものがあるよ。」と金田先生が取り出したのが、白いロープです。それを使って竹の足元をしばり、両側から引っ張ると、アーチは見事に自立しました。

さらに、「この状態では、まだシェルターのよう。これを空間として、もっと建築的にするにはどうしたらいいんだろう?」との問いかけに、子どもたちからは「屋根をつくる」「床をつくる」「家具をつくる」などのアイデアが出ました。そこで、再びグループに分かれて、作業を再開します。

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約1時間後、子どもたちがつくったのは、ロープによる屋根の仕上げ、竹の床、文机、いろり、花を生ける竹飾り、そしてベンチ。できあがった空間を見ると、人が中に入って和める、見違えるような空間ができました。私はベンチをつくる作業をサポートしましたが、長い竹を横に渡し、丸竹を何本か脚にしたものの、座るとたわんでしまうので、どうしようかと思っていたところ、子どもたちが見つけてきたのが、スタジオの壁にも使用されているレンガ。それを縦横に並べ、数カ所に補強として入れることで、見事にベンチが完成しました。子どもたちの機転と発想の豊かさに、感心せずにはいられませんでした。

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最後の講評会での子どもたちの感想は「みんなの力を合わせて楽しくできた。」と手応えを感じさせるものが多かったのですが、「構造が縁の下の力持ちだということがわかった。」という子もいて、その着眼の鋭さに先生やスタッフ皆が感心していました。

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伊東先生からは「専門的なことをいうと、このアーチの構造は組み方が三角形なので強く、両端をロープで引っ張っていることがポイント。」また、このアーチは奥にいくにつれてゆるやかにカーブしていますが、「こういうきれいなかたちは構造家でないとできない。」とのコメントがありました。また、今回竹を調達してくださった建築家の吉岡寛之さんが言われたように、次回は子どもたちと一緒に竹を伐採するところから始めると、もっとものづくりの醍醐味を味わえることでしょう。

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最後はみんなで中に入って記念撮影。笑顔が絶えませんでした。わずか一日で心地良い空間ができたことは、参加した子どもたちにとっても良い体験になったと思います。

全体を通して感じたのは、金田先生の気さくなお人柄、物事の本質をわかりやすく説明する姿勢、そして子どもたちへの問いかけ。この3つが大きな成功の要因だったと思います。構造と意匠の意味、試行錯誤して手を動かしながらつくってみること、みんなでつくるイメージを共有すること。それらの全てに触れることができた、充実したワークショップでした。「最初の構想は僕たちだけど、仕上げたのはみんなの力」と、金田先生も満足そうでした。今回の経験も含め、今後もっと建築に触れ、子ども建築塾で学んだことを社会に生かしてくれることを願っています。みんながこの先どのように成長していくのか、とても楽しみです。

ご指導いただいた金田先生、伊東先生、太田先生をはじめ、参加してくれた子どもたち、ティーチングアシスタントの皆様、素晴らしい一日をありがとうございました。ぜひまたこのような機会をつくりたいですね。