塾生限定講座 台湾ツアー(3日目)

2014年02月15日

12月15日、台湾ツアーもいよいよ最終日となりました。2日目午前までは晴れており、見学に支障はありませんでしたが、最終日は本格的な雨となってしました。朝、ホテルの1階に集合してバスに乗り込み、一路、台湾大学のメインキャンパスに向いました。大学らしい、歴史を感じさせるキャンパスを横に見ながら、社会科学部新校舎脇に到着しました。この新校舎は、図書館棟と教育棟に分かれています。まず教育棟1階、図書館へのエントランスに集合し、伊東塾長や伊東事務所の古林さん、設計を担当された矢部さんの説明を聞きました。

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この施設の設計は2006年11月から始まりました。別のキャンパスにある社会科学部の建物をメインキャンパスに移す計画に基づき、建設されました。歴史ある建物が立ち並ぶメインキャンパスの中に建てる新しい校舎とあって、調和と革新が求められる建物です。そこで、単に敷地の一部として空けられていた緑地を近傍の既存校舎と新校舎の中庭となるように計画し、その木々の中で本を読んでいるような図書館、自然と人が集うコミュニケーションスペースをつくることが主要なコンセプトとなっています。設計が大学側に受け入れられるまでには時間がかかり、全く違う案を3回に渡って提示し、ようやく最終プランとなりました。施工は2010年2月〜2013年5月、2014年5月にオープンする予定です。

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続いて図書館棟を見学しました。図書館棟は約50m四方の1階建ての建物です。この建物の特徴は、従来の直行軸にしたがう構造グリッドによらず、自然界に見られるダブル・スパイラルのアルゴリズムにしたがって柱を配置させている点です。88本の柱が密に集まっている部分と疎の部分が生じ、森の中に本があるように感じられる設計になっています。

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図書館の家具は藤江和子さんのデザインです。スパイラル状に配置された柱を繋ぐように、曲線状の書棚が設置され、館内に流れができています。藤江さんは、「勉強する人の意識が宇宙にまで飛翔する」ことを考えてデザインしたと言っています。書棚の材料には、台湾の伝統工芸技術である、竹の集成材が使われています。

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まだ書籍が配架されておらず、奥まで見渡すことができましたが、書棚が本で埋まったときは、見通すことができなくなり、目的の本がどの棚にあって、その棚にはどのように行けばいいのかを示すディレクションが非常に重要になると思われます。

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また、大学の施設とあって、空調などは省エネルギー化を行う必要があります。この図書館棟には、床輻射+床下冷房方式が採用されています。輻射熱により居住区の温度を穏やかに冷やすことができ、必要となるエネルギーは従来方式の約60%に削減することができます。

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次に教育棟の見学に移りました。教育棟は長辺160 m、地上8階、地下2階という巨大な建築で、通りに面して配置されています。最上階には教授室、その下に研究室、低層には教室が入っています。教室は、他の学部の学生も利用しやすい西側に配置され、キャンパスの門に面する東側には社会科学部のオフィスが入っています。研究室や教室としての目的で使われるため、教育棟は非常にシンプルなグリッド構造の建築になっています。

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教育棟においても、空調の省エネルギーを図るために、随所にテラスや吹き抜けを設置し、自然換気ができるようにしました。8階から1階ずつ降りてきましたが、各階ともテラスや吹き抜けには風が通り、環境のよさを感じることができました。

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テラスの壁は、キャンパス内の他の建物や周りの緑と調和するようにアースカラーや緑色に配色されています。心地よい風の通るテラスでは、学生や教師が集い、熱い議論を闘わすことでしょう。

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そして、図書館は、その大学の中枢であり誇りです。ここから新たな智が生まれるからです。この社会科学部の新しい図書館が、学生たちに愛され、台湾の未来に資する場となることを期待したいと思います。
最後に、この建築の工程記録という貴重な資料をいただき、見学を修了しました。

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見学後は再びバスで移動、小籠包で有名な鼎泰豐で昼食をとり、台北松山空港へ向かいました。16時発のエバー航空で帰国し、羽田空港で解散となりました。

この3日間の見学は非常に濃密で貴重な体験でした。このツアーを企画していただいた伊東建築塾の皆さんに感謝いたします。

塾生 長谷川一英