塾生限定講座 遠藤勝勧「実測スケッチから学んだこと」

2014年08月13日

6月21日、今年度5回目の塾生限定講座が恵比寿スタジオにて行われました。今回は、菊竹清訓建築設計事務所に39年間勤められ、伊東塾長の先輩にあたる遠藤勝勧先生を講師にお迎えして、レクチャーをしていただきました。

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今回の講義では、開始前に遠藤先生が過去に使用されていたスケジュール帳や、打合せの参加者の席配置が書かれた手帳、実測の際に記したスケッチ等、貴重な資料がたくさん公開されました。この実測スケッチをもとに、当時の様子や菊竹先生とのやり取りを交えてお話しいただきました。

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はじめに、遠藤先生が菊竹事務所に入った経緯と、菊竹事務所在籍時代に関わられた建築について語られました。遠藤先生が若くして入所した当時、設計が全くできなかったのを見かねて、菊竹先生が「東京中央郵便局の実測を行ってきなさい」という一言から実測を始められたそうです。以降、現在に至るまで、興味のある建築を訪れては、実測スケッチを続けてこられたそうです。実測することで、自分なりにその建築の良さや改善点に気づくことができ、気に入らないところは会話の種になっているそうです。また現場でスケッチできると、何よりも説得力があり、職人とコミュニケーションができる強みになると語られました。

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次に、島根県立美術館や大津ショッピングセンターなどの話題を中心に、菊竹事務所在籍時代のお話を伺いました。菊竹先生からは「設計は考えれば考えるほど良いものができる」との教えを受けたそうです。また大津ショッピングセンターを担当した頃からスケジュールをメモされるようになり、「やった/やらない」等のもめごとの対策をされたそうです。

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続いて、実際に実測を行った建築のスケッチをもとに、体験談を語られました。スケッチというレベルではなく、詳細かつ丁寧に書き記されたその繊細さに驚かされました。印象的だったのは、解体前の旧東京拘置所での体験談でした。旧東京拘置所では実測をするために独房に入ったそうですが、部屋に足を踏み入れた瞬間、その荘厳さを前に思わず正座されたそうです。

実測は2mのコンべックスを使用するそうですが、足りないときには歩幅で大まかに測り、後で計算するそうです。場所も自分の興味のあるところを選び、用紙の種類を問わず、そこで手に入る紙を片手に実施されたそうです。

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最後は、菊竹先生の自邸であるスカイハウスの1/10スケールの断面図を、ホワイトボードに立てかけたA0を2枚つなげたパネルに、即興でスケッチしていただきました。遠藤先生は、寸法が全て完璧に頭に入っているため、ものの15分で断面図を書かれ、また、スカイハウスの収まりの良さに関しても解説いただきました。そして、ご自身の体験から、設計図は1/2の縮尺にするとプロポーションが良く見えてしまうため、必ず原寸で書くべきだと語られました。

今回の講座を通じて、建築の実測を行うことで、建築のスケール感やディテールの観察眼を鍛えることができ、自分の好みの建築をより知ることができる、また収まりの良い建築を設計するためのスキルを身につけることができるのでは、と感じました。

塾生 須永泰由