塾生限定講座 夏期合宿(2日目)

2014年08月26日

7月28日、夏期合宿2日目が始まりました。昨日の猛暑を疑うかのようなあいにくの曇り空。昨晩の興奮が冷めぬまま、ホテルを後にし、本日の目的地、大三島へ向かいました。

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2日目の旅程は、
①  大山祇(おおやまづみ)神社参拝
②  大三島の「みんなの家」にてギャリートーク
③  今治市伊東豊雄建築ミュージアム(スティールハットの見学後、シルバーハットで昼食)
④  岩田健母と子のミュージアム見学
⑤  大三島ふるさと憩の家にてぺちゃくちゃ
⑥  バーベキュー
⑦  マーレ・グラッシア(海洋温泉)
と、かなり濃密なプログラム。旅のしおりを眺めているだけでも期待度が高まってきます。

大山祇神社と大三島の「みんなの家」でのギャラリートーク

瀬戸内の美しい多島海の中央に位置する大三島は、人口約6,300人が住まう、瀬戸内海で5番目に大きな島です。

ROOM1 床

その大三島の中心部に位置し、日本綜鎮守と呼ばれている大山祇神社。再建された総門を抜けると、樹齢2,600年の大きな楠が枝葉を広げ、その立ち振る舞いは参拝者たちを迎え入れてくれているかのような、とても堂々として素晴らしい樹木でした。

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本殿を参拝した後、古くから残る参道のまちなみを眺めながら、伊東豊雄建築ミュージアム開館三周年記念展「日本一美しい島・大三島をつくろうプロジェクト2014」のオープニングイベントのひとつである大三島の「みんなの家」ギャラリートークに参加しました。

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はじめに、伊東建築塾の古川きくみさんよりプロジェクト全体の説明、続いてプロジェクトスタッフの高野洋平さんから「みんなの家」の改修案の説明、そして、大三島へUターンで戻ってこられた菅穂高さんより、大三島でのまちおこしの活動についてのお話がありました。

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大三島の「みんなの家」は、もともと法務局だった木造2階建ての建物を、1階はカフェやゲストハウス、2階をオフィススペースへと改修する計画があります。伊東建築塾の塾生有志が集い、地元の方々と対話を重ねながら、この「みんなの家」を拠点にした活動を通して、時代の流れで閑散としてしまった参道に再び人の流れやにぎわいを取り戻していきたいという熱意が伝わってきました。また、会場のスクリーンには、今年のGWに開催された参道マーケットの映像が上映されており、地元のNPOや今治北高校大三島分校の生徒さんたちと協力しながら活動を行っている様子を伺うことができ、とても未来のある興味深い活動だなと思いました。

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「みんなの家」の前に来ていた移動型カフェ「LOCOBUS(ロコバス)」の大三島産レモネードで、乾いた喉を潤した後、次なる目的地、今治市伊東豊雄建築ミュージアムへ向かいました。

今治市伊東豊雄建築ミュージアム(スティールハット、シルバーハット)

島の先端に着陸した宇宙船のような今治市伊東豊雄建築ミュージアム。現在、開館三周年記念展「日本一美しい島・大三島をつくろうプロジェクト2014」が開催されています。

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館内に入ると、床や壁一面に、島内にある13の集落のそれぞれの文化や魅力が詰まったイラストや写真が展示されています。また、伊東建築塾の塾生有志を中心とした現在進行中のプロジェクトの紹介や、神奈川大学曽我部研究室、昭和女子大学杉浦研究室のメンバーによるプロジェクトも展示室ごとに分かりやすく展示されており、この宇宙船の中に大三島の素晴らしさとプロジェクトメンバーによる新しい提案や想いがギュッと濃縮されたような展示内容でした。

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日差しがようやく顔を出し始めた頃、シルバーハットでお弁当をいただきました。海を背景に心地よい潮風が通り抜ける半屋外の空間の中で食べたお弁当はとても美味しく感じました。そこに「ここでご飯を食べても大丈夫でしょうか?」と別の観光客が訪ねてきたり、天井には今年の春まで居た形跡のある燕の巣を見つけたりと、居心地の良い場所には人も動物たちも自然と集まってくるんだなと、緩やかに流れる時間の中で、大三島の素晴らしさをまた一つ発見したような気がしました。

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岩田健母と子のミュージアムとぺちゃくちゃ@大三島ふるさと憩の家

岩田健母と子のミュージアムは、旧宗方小学校(現在は大三島ふるさと憩の家という民宿として活用されています)の校庭の一角に建っていています。
館内に入った瞬間に、母と子をテーマにしたたくさんの彫刻と、天井のない丸く切り取られた青空や芝生の美しい緑が一瞬にして目の中に飛び込んできて、見事に直球三球とも見逃し三振してしまったかのように、呆然とその場で立ち尽くしてしまいました。

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外側の回廊でそっと耳を澄ましていると、潮風や波の音、話し声、そして、鳥のさえずりや木々のざわめきなどの周囲の音たちがこの円環状の建物の中へすうっと入ってきます。そして、音が壁や天井に反響することで、遠くの方でする笑い声や話し声がまるで自分の隣で行われているような、自分の居場所が一瞬分からなくなるようなとても不思議な体験をしました。

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中央の芝生に点在する一つひとつの彫刻たちが、それぞれ違う方向を見つめていて、鑑賞する人たちもそれらと歩調を合わせるかのように自由に動き回ったり、ベンチで作品を見つめていたりするその光景は、美術館全体が自然と混ざり合った一つの作品のようにも見えてきます。偶然にも、一組の母と子がこの空間の中で遊んでいて、その光景に微笑ましく思いながらも、きっとこの校庭という場所が持っている「子供たちのための居場所」から「大人たちが帰ってくる場所」へと繋がっていくような、上手く表現できませんが、人を惹きつける場所の力のようなものを感じました。

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14時半からは(なんだかんだいってもまだこんな時間)、大三島ふるさと憩の家にて伊東建築塾主催の「ぺちゃくちゃ」が開催されました。プレゼンターは、大三島在住の鍋島さん、越智さん、林さん、渡邉さん、重信さん、田村さん、小池さん、花澤さんの計8名で、限られた20枚のスライドの中で、思い思いに大三島の生活や魅力について素晴らしいプレゼンをしてくださいました。

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質疑応答の中で、「このような場に、(元々から住んでいる)島の人間が居ないのは寂しい」、「地元を忘れないでほしい」などといった島の方々の想い、そして私たちに対しての強いメッセージが含まれていて、このリポートを書いている今でも、自分の中の記憶として一番鮮明に残っています。
大三島に初めて降り立ち、大三島の美しさを発見し、その美しさに感動するだけではなく、島と様々な活動が結び合った美しさやそうしたものに対する手触りの感触を、まだまだ小さい種のようなものかもしれませんが、この「ぺちゃくちゃ」を通して感じ取ることができました。

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「ぺちゃくちゃ」終了後は、中庭でのバーベキュー。地元の食材に舌鼓を打ちながら話は弾み、あっという間に時間が過ぎていきました。マーレ・グラッシアの塩湯で海の恵みを受けた後、星降る夜空の下で寝転びながら、大三島での出会いと感動に感謝しつつ、美しい島での濃密な一日が静かに終わりました。

塾生 小迫欣弘

(撮影=高橋マナミ)