塾生講座 公開発表会

2017年03月31日

3月18日、塾生講座の公開発表会が恵比寿ガーデンプレイスにある「COMMON EBISU」にて行われました。今年度の発表会は大三島ではなく、伊東建築塾のホームグラウンドである恵比寿が会場となり、一般の方や大三島への移住希望者にも島の魅力を伝えるための、まさに「島と都市をむすぶ」発表会となることを目指します。ゲストには今治市長・菅良二さんや建築家の乾久美子さんをお招きし、会場は100名を越える大勢の人たちでにぎわい、本番前の塾生たちの表情から緊張感が漂っています。

さあ、塾生たちによる、大三島のための、年に一度のお祭り。いよいよプレイボールです。

はじめに、菅市長のご挨拶と伊東塾長による伊東建築塾と大三島でのプロジェクトの紹介がありました。続いてブランディングチームが企画・演出を担当した「こっそりと大三島 小さな自分たちの計画」というショートムービーの上映がありました。伊東建築塾が構想する“こんな島になったらいいな”というストーリーで、島の美しさと人々の笑顔が印象的な9分間。ネット上でも公開されていますので、このブログを読み進める前に、ぜひご覧ください。

いかがでしたでしょうか。それでは、私たちが一年間の活動を通して考えた、大三島のための小さな10の提案をご紹介します。

① みんなの家を一日一度は必ず寄ってみたい場所にします
大山祇神社参道にある旧法務局を改修した「大三島みんなの家」。2016年5月からカフェとワインバルがオープンし、島の人々や観光客が立ち寄れる場所へと生まれ変わりました。春から移住予定の塾生によるプレゼンで、カフェの新メニューとして薬膳カレーを提供することや、島の誕生日会などのイベントを開催し、一日一度はみんなの家に寄ってみようかなと思わせる、心温まるプレゼンでした。

② 「物々交換」によって都会と島の記憶を交換します
大三島みんなの家で始まった物々交換の提案です。スタッフの久保木祥子さんからのビデオメッセージが届きました。人や「もの」が島の中で少しずつつながっていく、小さなきっかけから新しい「こと」や関係が生まれていく、「もの」や「こと」の大切さを教えてくれる素敵な提案です。

③ 「参道」を花と光で夢の道に変えます
かつてにぎわっていた大山祇神社から宮浦港を結ぶ参道を、花や光で彩り、明るく歩きたくなる参道にする提案です。

塾生がセルフビルドでつくった小さな屋台は参道マーケットや野菜の無人販売などで活用しながら、たくさんの花で彩られた明るくにぎわいのある参道へと、ハナミチ計画が始まります。

④ 「公民館+図書館」を「みんなの広場」に変えます
宮浦港近くにある公民館と図書館のエントランス部分の改修提案です。「みんなのキッチン」や「鷲ヶ頭山テラス」、「おおきなテーブル」などを設置した「みんなの広場」に、子どもたちや島の人々が楽しく過ごせる場所をつくります。ここから新しい出会いや時間が生まれる、島の未来にとって大切な場所へと生まれ変わります。

この提案を具体的に伝えるために、現状模型とエントランスの改修提案の模型も制作して展示しました。



⑤ 島から発信!海、山、畑に囲まれた新たな農業ライフ
大三島の美しさの理由は、自然とともに人々が営んできた農業です。個性豊かで魅力的な農家さんが多い大三島ですが、後継ぎがいなかったり、耕作放棄地が増えたり、害獣に悩まされたりと深刻な問題を抱えています。「島の恵みセットの販売」、「大三島ひとマルシェ」、「のうぎょうスクール」など、農業にかかわる5つの提案がありました。2017年2月には、実際に島の自然・郷土を詰め合わせたイノシシレモン鍋を企画・販売しました。春からは大三島で暮らしたい、農家になりたい方を農家さんたちとつなげていく、就農希望ひとサービスを始めたいと構想しており、一層移住しやすく、農業が盛り上がっていく環境を整えていきたいと思っています。



⑥ 2020年に瀬戸内初のワインで祝います
伊東塾長自ら熱意のあるプレゼンテーションを行いました。ぶどう畑が新たに開墾され、先日第2回目の新植祭も盛大に開催されました。2020年に大三島で育ったぶどうのワインで祝えるように、伊東さんをはじめ、苗木オーナーや島のみなさんと盛り上げていきます。第2期苗木オーナーも募集中ですので、この機会にぜひ、大三島のワインで乾杯することを夢見て入会してみませんか。

⑦ 島の食材、島のワインで島の人の誕生日を祝う「オーベルジュ」をつくります
瀬戸地区のぶどう畑から西へ向かった場所に、オーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)をつくる提案です。植物に囲まれた温室のような場所でワインを楽しんだり、島の人々と誕生日パーティを開いたり、採れたての柑橘や野菜が食べられるレストランをつくり、美しい夕日を望みながら、島の自然や穏やかな時間を感じることができるオーベルジュの実現を目指します。

⑧ 海辺の小学校をロマンティックなホテルに変えます
宗方地区にある宿泊施設「大三島ふるさと憩の家」の改修提案です。旧宗方小学校の校舎だった2階部分を中心に、雨漏りする屋根の改修や耐震補強、風呂棟の新設や1階客室の洋室化など、宿泊施設としてより良い快適な場所へと生まれ変わります。2018年春のリニューアルオープンを目指して、現在設計を進めているプロジェクトの提案です。

⑨ 島の景色をゆったりと楽しめる電気自動車「縁側」を実現します
ヤマハ発動機が開発したデザインコンセプトモデルの提案です。ちょっとそこまでお出かけしたくなる電動アシスト付き自転車「05 GEN」と、ゴルフカーをベースにした“動く縁側”のような「06 GEN」。06GENのような新しいモビリティが公道を走れるようになると、島北部にある盛港から島を一日かけて周遊できたり、バルや居酒屋で楽しく過ごした後に島内の宿や自宅まで送迎してくれたりと、大三島をよりゆっくり、より楽しく過ごすことができます。


伊東豊雄建築ミュージアムにて行われた「06GEN」の試乗会風景

⑩ はじめてみよう大三島ライフ 小さな移住計画
都市での生活と大三島での生活を比較するため、一ヶ月の生活費や一日の生活サイクル、家の間取りを家族構成別にまとめてプレゼンしました。都会で生活するためにはお金が必要だったり、部屋にゆとりがなかったり、都会と同じ時間が流れていても、島で生活するとこんなに魅力的で、豊かな時間が過ごせることを分かりやすく検証していて、移住してみようかなと思わせるおもしろい内容でした。気になった方は、4月1日から京橋のLIXILギャラリーにて開催される展覧会「新しいライフスタイルを大三島から考える」にてぜひご覧ください。

各プレゼンターの発表後に、伊東塾長の進行によるディスカッションを行いました。

伊東塾長より真っ先に指名を受けた乾さんからは、「小さなことをやっていこうという姿勢や、できることから動き始めていることに感銘を受けた」「一つひとつがささやかではあるが、リアリティがあって、これから大三島がダイナミックに変わる予感がする」と、勇気づけられるコメントをいただきました。

そして、菅市長からは、「どの説明者もとてもすばらしい提案だった。自分も若い頃に地元の青年部を立ち上げたり、大三島町長時代には伯方の塩を誘致したり、ラントゥレーベン(滞在型就農施設)をつくったりと島の活性化のために奔走してきた。3期目当選を果たした今後は、しまなみ海道を活かしたツーリズムをさらに盛り上げるためにも、大三島ふるさと憩の家の改修をはじめ、大三島公民館・図書館の改修提案やトランスポーテーション(交通)も前向きに検討したい。そして、自由な時間の多い農業をもっと面白くしていきたい」と、来年度の活動の励みとなる、とても心強いコメントをいただきました。

大三島にIターンした林豊さんからも感想をいただき、盛況だった発表会は静かに幕を閉じました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。

結びに、今年度の塾生講座は、この発表会をもって全カリキュラムが終了しました。各チームとも島へ足繁く通い、島の人たちと対話を重ね、これで良いのか?島のためになっているだろうか?と自問自答を繰り返しながら活動した一年間でした。誰もがあっという間だったと言うくらいに、熱量のある仲間たちと有意義な時間を過ごせました。春からは「大三島ライフスタイル研究講座(島研)」として、一つひとつ小さな提案をさらに前へ、そして、よりリアリティのある活動へと進めていきます。それぞれが発表した提案はこれで終わりではなく、始まりの鐘が鳴っただけに過ぎません。たとえ小さな活動でも自らが行動し、たとえ少しずつであっても、共感する仲間を増やしながら、前を向いて進めていくことが大切だなと改めて感じた一年でした。でも、一番に大切なのは自分自身が大三島を楽しむことだと思います。

より近く、よりゆっくり、より寛容に。大三島と私たちの活動はこれからも続きます。

塾生 小迫欣弘


塾生講座6期生 集合写真