2019年度子ども建築塾後期まち課題「みんなの商店街をつくろう!」発表会 後編

2020年10月21日

来は3月7日に予定されていたまち課題の発表会。後編です。

D班

萩田百香(4年生)「story cinema」

映画のフィルムをイメージしたユニークな断面の中に、つくりたい映画の題材を探すための図書館、映画の制作スタジオ、映画の上映室が入っています。天井や壁に映し出された「本を読んで、映画を作り、上映する」という発想力を伊東先生が、造形力をアストリッド先生が評価する一方で、「内部空間はどうなっているのかな。せっかく面白い屋根のカタチをしているのに、床で分断されてしまうのはどうかな?」と高度なアドバイスも。

 

矢野来歩(6年生)「MIERU」

当たり前のホテルではつまらない、まちに来る人に新しい体験をしてほしい。テントの中にテント、キャンプ気分を味わえる新感覚のホテルを提案しました。大きなテントはガラスで透明なので、中に小さなテントがならぶ風景がとても魅力的です。ここに宿泊する人は、きっとみんなの商店街の空気を満喫することでしょう。

「大きなテントの中に、小さなテントを張って泊まる、街ならではの構成で、安心感がある。面白いね」と伊東先生。

 

久枝ミウエン(5年生)「ぐるぐるPOOLシネマ」

プールのすべり台で遊びながら、映画を見るという提案です。不思議なかたちの2つの建物のすきまを、通り抜けながらウォータースライダーをすべり、映画が終わるころにはプールに飛び込みます。

独特な造形や色使いに先生たちも注目します。「どうしてこんなカタチになったの?」というアストリッド先生の問いには、「面白いカタチにしたいなぁと思っていたところにお椀があってそれをヒントにしました」という答え。

「どうしてこんな色にしたの?」という伊東先生には、「なんとなく目立つ色にしたかった。ぼやかしたのは、なんとなく一色で塗り分けるのはつまらないと思ったから。」自分の直感を大切に表現したことがうかがえました。

 

友田朝陽(6年生)「まちに伸びる広がるラジオTree」

商店街の魅力をみんなに発信する情報基地、ラジオ局の提案です。建物は木をイメージしていて、幹のようなタワーのまわりをらせん状のスロープで昇ると、ガラス張りのラジオブースと展望ルームがあります。

「ラジオブースや展望ルームもほとんど360°のビューが得られるし、情報の発信基地としてぴったりだね。」とアストリッド先生。バス通り側の商店街の入り口に位置するラジオ局を、しっかりとした構想力でまとめあげた作品でした。

D班の発表を終えて

「造形的にいろんなカタチにチャレンジしているグループ。一番交通量の多いバス通りに面している場所で。街の賑やかさをつくりだしている」と評したのは太田先生。

伊東先生は、ミウエンちゃんと朝陽くんを比較してこんな話をしてくれました。

「どちらも、カタチが魅力的で表現的に見えるけど、考え方は対照的で面白いね。ミウエンちゃんは感覚的に好きな色や面白いカタチをつくっているけれど、朝陽くんはとても論理的に建築の構成を考えているね。どちらも大切な考え方なんだよ。」

E班

山田あおい(4年生)「みんなのオアシスルーム」

だれもが満足できるまちのオアシスをつくりました。ビールをイメージしてつくった屋根の泡が人々をここに導きます。ゆったりバレエをみたり、温泉にはいったり、休憩したり。休みたい人、バレエを視たい人、遊びたい人、どんな人も楽しい世界へ導きます。

野村温大(6年生)「古墳ハウス」

古墳ハウスは古墳のかたちをしたブックカフェです。壁も天井も階段状になっていて、隙間から自然光が入ってきます。床も階段状に少し掘り込まれていてリラックスして本を読むことができます。古墳は昔のことや社会のことを知る宝や情報が埋まっている場所です。たくさんの情報がつまったブックカフェにふさわしいと思います。

米本千紘(6年生)「音を奏でる本棚」

音が出る本棚は、本をひくと音が流れます。本のジャンルごとに違う音が流れるので、自分だけの音楽を奏でることができます。建物の真ん中には吹き抜けの中庭があり、裏庭にはキッチンカーなどが来ます。

笹木縁(4年生)「MOJI MORI」

森をイメージした図書館です。木が生えている空間の中にはスロープがまわっていて、スロープの脇に本棚があります。来館者はスロープに立ったり、座ったりして本を読んだりお茶を飲んだりできます。店先でも、図書館の中の本を読むことができ、季節に応じて花見や焼き芋、雪合戦などのイベントが開かれます。

E班の発表を終えて

「本をテーマにした作品が多くて、どれもこんな場所があったらいいなぁ、と思わせてくれます。同時に壁をつくることの難しさを考えさせられました。千紘ちゃんの『音を奏でる本棚』、本棚のカーブだけで構造、全体を作ってしまっても面白かったんじゃないかな。縁ちゃんも両側の壁をもう少し考えても良かったかもしれないね。あおいちゃんのは、両側に壁がなくて、外との関わりをうまく作っているね。」と太田先生。

「千紘ちゃんも、縁ちゃんも、外は固いんだけれど、内部空間は柔らかいんだよね。古墳はもっと不定形にするとか、ステップの角度を変えるとか、1つではなくていくつかの古墳の集合体にするとか、すると柔らかくなりそうだね。」とアストリッド先生。

「あおいちゃんの『ふわふわした屋根』をどうしたらつくれるかな。気候現象のようなものを建築に置き換えられたら面白いよね」伊東先生は、思い描くイメージや夢を損なうことなく実現する方法を考えつくすことが「建築する」ということなのだとおっしゃっているようでした。

 

すべての発表が終わり、3人の先生たちが悩みに悩んで賞を選びました。

アストリッド賞

久枝ミウエン(5年生)「ぐるぐるpoolシネマ」

独特なカタチにチャレンジしたこと、色のつけ方が面白いこと、感覚的に建築にアプローチしているミウエンちゃんに、この感性を大切にしながら、建築をもっと内部から考えて欲しい、という応援の気持ちで賞を贈ります。

太田賞

山田あおい(4年生)「みんなのオアシスルーム」

敷地に恵まれたという事もあるけれども、周囲をよくとらえていて、境界のつくりかたがとてもよく出来ています。外とものがの関わりはとても大切。泡のような飛んで、町に人を誘い込む、というものの見方や考え方も素敵です。

伊東賞

佐藤楓夏(5年生)「てくてくねこ町たんけん」

まずは、色がとてもきれい。そして、ねこの後をついていくという発想が面白い。「自分の好きなものだけを集めて、好きなように建てて余計なものは要れない」そんな建築の常識にとらわれないつくりかたがとても魅力的でした。

最後に、総評を頂きました。

高橋さん(恵比寿新聞)

子どもたちが思い描く未来のまちの姿にとてもわくわくしました。ビール坂商店街には「やおさく」という104年続いた八百屋さんがありました。そこに、自給自足をテーマとするお店が出来るのも新しい再生の方法だと思います。また、恵比寿には現在本屋さんが1軒しかありません。みなさんが提案したように、本といろんなカタチで関わりあえるまちになったら、とっても嬉しいです。こんなまちが実現したらいいな、と本当に思います。是非、頑張ってください。

柴田さん

私にとって恵比寿は、都会でおしゃれなまち。少し敷居が高いような気がしていたのだけれど、みんなの提案のおかげで、地元のひとたちが気軽に立ち寄れる、毎日通りたくなるようなやさしい道になりました。個人的には、3年間通ってくれた矢野来歩ちゃんの発想のユニークさにいつも驚かされていました。

 

アストリッド先生

今までの商店街とはまったくちがう、とても面白いまちになったと思います。大きくなったら、本当にこんな商店街をつくってほしい。子ども建築塾がフェーズ1だとしたら、もう少しリアリティも高めたフェーズ2、を期待しています。がんばってね。

太田先生

1つ1つの提案ももちろんですが、まち全体としてとてもいい案になったと思います。みんなの想いや気持ちが素直に表れていて、公園の遊具を延長したような提案になっていることと、みんながとても優しくて、自分自身の表現も大切にしながら他者への思いやりの気持ちが提案に表れているということだと感じています。そんなみんなの成長をサポートしてくれたTAのみなさんの貢献にも感謝をしたいと思います。

伊東先生

子ども建築塾も、10年くらい続けてきて随分レベルアップしてきたことに驚きました。そして、第1期、2期の塾生だった人たちがTAとして関わってくれていることにも手応えを感じています。

4年生くらいの子たちが、「私はこんなことをやりたい!」「好きだ!」という気持ちを、素直に表現にして、部分を寄せ集めていく一方で、6年生くらいになると「建築ってこういうものかな?」と建築の全体としての姿が見えてくるようになるんじゃないかなと思います。どちらもいい面と悪い面があって、両方を持ち続けることがいい建築をつくりあげるために必要なのだと思います。だから、夢を捨てないで頑張って欲しいです。

式地 香織