子ども建築塾2024年度 後期第10回 いただきます島Ⅱ 発表会(後半クラス)
3月1日に行われました後期課題「いただきます島Ⅱ」の発表会(後半クラス)の様子を対話形式でお届けします!

*このブログは後半クラスの内容です。発表会の【イントロダクション】は、前半クラスのブログをご覧ください。
【Fグループ「サボテンのタコス|アベニーダ・アマリージャ(黄色い道)」

TA|Fグループのメニューは「サボテンのタコス」ということで、タコスの生地に使うトウモロコシや具材に使うサボテンが島の風景をつくる大きな要素になっています。特にトウモロコシの黄色はこの島の名前の由来になっています。見晴らしの良い緩やかな丘の上にタコスを食べるレストランがあり、それを中心にトウモロコシ畑やサボテン畑が色鮮やかに展開しています。
E.K(小4)|この島の名前は「アベニーダ・アマリージャ」です。タコスはメキシコの食べ物なので、スペイン語で「黄色い道」を意味する「アベニーダ・アマリージャ」と名付けました。島の全体の配置を説明すると、(島の北西に突起した部分が)港、(反時計回りに)寝るところ、お風呂、トウモロコシ畑、レストラン、サボテンの道、豚小屋、豚を切るところ、みんなが休むところ、トウモロコシを干す工場になっています。僕が説明するところは、このオレンジの建物と青い建物です。オレンジの建物は、寝床で、三角形のかたちになっています。三角形はピラミッド→お墓→寝るところというイメージからこのかたちに決まりました。青い建物は、みんなの休む場所で、右手にタコスを持って、左手で本を読んだりパソコンを打ったりしながらタコスを食べるというスペースになっています。
Y.S(小4)|私が説明するのは、お風呂です。お風呂は海に近いところにあり、海がよく見えます。屋根が透けているので、周りをよく見通すことができ、360度の自然が楽しめます。トウモロコシ畑や寝る場所がよく見えるようになっています。お風呂の屋根を助けさせることで、(丘の上の)レストランからの眺めも良くなり、お風呂からの眺めも良くなります。お風呂は島の住民20人全員で入ることができます。
E.N(小5)|僕の担当するところはサボテンの道です。このサボテンは道にもなり、豚が侵入できないようにする対策にもなります。(この道を通ると)寝るところから高台のレストランに行くことができます。また、(このスケッチ)のように、(トウモロコシ畑への)豚の侵入を防ぐと同時に、(サボテンの柵の)中では、豚が自由に歩き回ることができます。
A.K(小6)|レストランでは、鉄板テーブルでトルティーヤを焼いて、好きな具を挟んでタコスにして食べます。鉄板には少し窪みがあって、火傷をしないようになっています。最初は窪みをつけていなかったのですが、タコスを焼く温度を調べて200℃であることがわかったので、窪みをつけることにしました。レストランの3つの入り口からは、トウモロコシ畑や港やサボテンの道が見えます。具材の入った皿は手で持って回したり、ワゴンに乗せてテーブルごとにサービスするので、その時にスタッフとお客さんの間でコミュニケーションが生まれるといいなと思っています。テーブル同士の距離もかなり近いので、座っているお客さん同士も話すことができます。

太田|模型の色がとても綺麗で、トウモロコシ畑の黄色とサボテンの緑とレストランの屋根がとても合っていると思います。この黄色い部分は何ですか?それから一部藪のように細い素材が立っている部分がありますがそれは何ですか?
A.K(小6)|黄色い部分は全てトウモロコシ畑です。立っている爪楊枝はトウモロコシの生えている様を表現しています。全てこの表現で統一したかったのですが、時間の関係で一部省略しています。
太田|レストラン内部のスケッチにある窓の外の風景について、説明してください。
A.K(小6)|窓の外には、トウモロコシ畑とサボテンの道が見えています。トウモロコシは、普通は緑ですが、収穫が終わって黄色く色づいた頃にトウモロコシ迷路のようなイベントがあると聞き、その様子を描きました。
太田|サボテンの道のルートを決めた理由と、サボテンの道を通ると何があるのかを教えてください。
E.N(小5)|寝て起きた時に、まっすぐレストランに行ってご飯を食べることができます。また豚の飼育場にも道は繋がっていて、同時に豚がトウモロコシ畑に入れないように柵の役割も持たせています。
太田|この先は感想なのですが、道と建物の関係、道と建物の掛け算という考え方があるのかなと思います。トウモロコシ畑とレストランは関係ができている、レストランとサボテンの道の関係があるとして、他にトウモロコシの道と建物の関係性ができている場所はありますか?例えば、港の白い建物はサボテンの道に向いていて、何か関係性がありそうだけど。
Y.S(小4)|この白い建物は、港の倉庫なので、出入り口がたくさんあった方が、物の出し入れがしやすそうだということで、出入り口が通りに面したかたちになっています。
太田|それでいうとお風呂と倉庫の位置が逆でもいいのかもしれないなと思いました。そして、道と建物の掛け算をもっと増やしていってほしいですね。サボテンの道はとても重要に思えるので、それを中心に構成するというのは面白いと思いました。

式地|サボテンの道が、サボテンを栽培しながら、トウモロコシ畑への豚の侵入を防ぐという池は、太田先生のいう掛け算ができているところですよね。
Fグループは、立ち上がりになかなか苦労していて、議論ばかりで手が動かない状況がつづいたけれど、議論で噴出したエネルギーがそのまま爆発して、模型に現れているという印象があります。これは、前半クラスでも言いましたが、最後の発表会の場というのは、評価はもちろんのこと、案の持っている可能性や秘めた力を引き出す機会でもあるのではないか、と考えています。それで言うと、住宅の機能を分解して20人で集団生活をするという設定の中に、みんなで集まって食事をするレストランと、みんなのリビングと言う、集団の中にいながらもひとりになって、くつろぎながらタコスを食べる場所が別になっていると言うのは、集団の中の個人の心理をよく理解しているなと思いましたが、そのあたりはみんなの中で話し合いがあったのですか?
子どもたち|…なんとなく。
伊東|寝るところも、お風呂もみんなで一緒のようだけれど、一体何人くらいで生活するイメージなのかな?
子どもたち|20人
伊東|昼間はみんなそれぞれの仕事をしているわけだよね。それで夜になったらみんなで一緒に寝るの?一人になりたいという時はどうするの?そう言う時はないのかな?
子どもたち|ありません。
一同|笑
伊東|このチームのいいところは、隙間がなく埋まっているところだね。特に黄色いトウモロコシ畑のところが綺麗だね。みんなで1つのものをつくると。「私はここ。」「僕はここ。」と範囲を決めて、間は空けていることが多いんだけど、このチームは全体がランドスケープとして埋め尽くされているところがすごくいいなと思いました。
アストリッド|もう少し全体的なマスタープランを考えた方がいいなと思いました。隣同士に何があるのか。レストランは見晴らしのいい丘の上でいいし、お風呂からも夕陽見ながらお風呂に入れてすごくいい。でも寝る場所だったら、もっと閉鎖的な場所で必ずしも海辺でなくていい。一番気になるのは、豚小屋の隣に、一人で静かに過ごす「みんなのリビング」があること。みんな豚は綺麗好きだと言うけれど、匂いが気にならないかな?とか。サボテンの使い方も賢いし、1つ1つはとても綺麗なのでもう少しお互いの関係性を考えたらよかったなと思いました。
Gグループ「ザワーブラーテン|Sauerbraten Insel 〜ザワーブラーテン島〜」

TA|Gグループは、ドイツ料理のザワーブラーテンを作ることをメインに考えた島です。メニューを選ぶ時も全員一致で決まりましたが、実はみんな食べたことはありませんでした。K.Sさんが食べに行ってくれたのですが、みんなは食べたことのない料理について一生懸命調べて島をつくりました。どうぞよろしくお願いします。
S.K(小6)|まずは全体の構成を説明します。島の北側に住まい、中央にレストランと調理するところがあります。L字の住まいが囲む海辺の庭にお風呂があります。島のくびれた部分に港があり、倉庫があり、食材に使うリンゴやブドウが入っています。食材には紫キャベツも使うのですが、倉庫の裏側に植えてあります。
K.S(小5)|僕の担当するレストランでは、島全体を眺めながらご飯を食べることができます。2階では、みんなが楽しく追いかけっこなどをすることができます。もう一つ担当している、牛のところでは牛がのびのびできるように放牧をしています。レストランで食べている時に、牛の姿を見ることができます。オレンジ色の屋根がかかった場所が、牛の屠殺場なのですが、生臭い匂いを防ぐために植物を植えたり、海風が通る場所を選んだりする工夫をしています。
M.Y(小4)|私が担当したのは、この道の部分です。道に沿ってリンゴやブドウ、赤キャベツが植えてあります。この名前が、なぜ「カラフルロード」なのかというと、道の部分がいろんな色であったり、植えられた作物や置かれたオブジェがカラフルだったりするので、「カラフルロード」と名付けました。ここでは、リンゴやブドウの木の下でピクニックをしたり、寝たりすることができます。
A.U(小5)|私が担当したのは、お風呂です。仕事で疲れた後にいえの道を通ってお風呂に入ります。浴槽の横がふわふわになっているので触ると気持ちがいいです。西の方角にあるので夕陽の時間に入るととても綺麗です。また海辺にあるので景色も綺麗に見えます。
S.K(小6)|僕の担当したいえについて説明します。先ほど「いえの道」と言いましたが、いえの内部に道があります。レストランと繋がっています。(レストラン側から見ると)内部は洞窟のようになっており、その先に明るいビーチが広がっています。光に導かれて行きたくなるかな、と思いそのような構造にしました。このスケッチは家の内部側からのスケッチなのですが、こちらも内部は暗くて外は明るい、「外に出たい」と言う気持ちにさせるように、このような設計にしました。さらに、屋上にはのんびり自由なことができるスペースが広がっており、バーベキューなどいろんなことに使えるようになっています。高いので、360°のオーシャンビューが見えるというメリットもあります。
最後に、ザワーブラーテンについて説明します。ザワーブラーテンは、野菜や香辛料を入れたマリネ液を作り、その中に牛肉の塊肉を入れて10日間ほど熟成させた後に、長時間かけて煮込む料理です。このようにザワーブラーテンはとても時間と手間がかかる料理です。島の人たちは食材の持つ味を活かすため、長い時間をかけて心を込めて肉を熟成する必要があります。これが島の人たちのお客さんに対するおもてなしの心になっています。肉をグツグツ煮込む間は、屋上広場で遊んだり、景色をのんびり眺めながらリラックスして過ごしたり、することができます。僕たちが作るザワーブラーテンは島で育てた牛、ジャガイモ、赤キャベツなど島の食材だけを使った世界に2つとない、この島特有の味を楽しめるのがメリットです。この島で育てたブドウで作ったワインと一緒に温かいうちに食べるのがおすすめです。

太田|このケムケムは何でしょう?
M.Y(小4)|この部分が港で、どうして”もこもこ”しているか、というと港に入った時に何か特徴的な屋根で楽しめるように考えました。
柴田|小学生とは思えない落ち着いた発表で驚きました。島の全体のゾーニングがはっきりとして明快でいいなと思いました。南側はレストランや放牧されている牧場を中心に、人や動物や植物が賑わいを持った場所が生まれ、いえを境に北側は、波打ち際の静かな露天風呂といった場所性が生まれていいますね。大きく2つのエリアに最終的に色付けされているなというのがはっきり浮かび上がってきたので驚きました。はじめの方はレストラン側で、みんな右往左往していたじゃないですか、それが、ブドウとかリンゴとか紫キャベツを愛でながら道を進んでいくと、少し塞ぎ込んだような視界が遮られる様ないえにぶつかって先は何だろうと思っていると視界が広がってそこには、静かな海が待っている。そんなストーリーに行き着いたのが、このグループの勝因だったのかな。
はじめの頃は、一人一人がおうちで考えてきたことを、塾で集まったときに1つ1つかたちにするという進め方だったので、個別のものが出来ていく印象だったのですが、ある時から自分の案に固まらずに、他の人とも協働できるようなものをその場で一緒につくっては考えるというプロセスに変わっていったのが見えたのですが、そのことに自覚はありましたか?
太田|模型で話しはじめたと言うことじゃないかな。
S.K(小6)|はい。あのスケッチとかを描いて説明してもなかなか伝わりきれなかったのでまずは作って試してみようと思って再作しました。

アストリッド|やっぱり建築をつくる、建物をつくると言うことは3次元的なものなのです。もちろんスケッチもこんな雰囲気というのを表現するのに大切なのですが、そのスケッチから模型にするときに、やっぱりこうじゃなかったとか、構造的にどう支えたらいいのかという気付きがあります。それで、またスケッチに戻って考えるということを繰り返していたら、どんどんイメージに近づいていく。今回は住まいを担当した、S.Kさんが、ずっと一生懸命考えながら手を動かしているというのを感じました。考えすぎずに、やりながら考えるということがとても良かった。総合的に言えば、みんながいいバランスで協働できたと思います。スケッチも素晴らしいし、お風呂が柔らかいというアイデアも面白い。TAのガイダンスもうまくいったのではないかと思います。
伊東|牛のスケッチはすごくいいよね。でも模型だけで見せられたら、そういう風景はなかなか想像できない。だから模型をつくるということは難しい。今、アストリッドさんがいわれたように、S.Kさんが模型をつくっては壊し、つくっては壊ししていたということは、僕ら建築家がやっていることと一緒。僕らは一個の建築をつくるために何十個も模型をつくるんだよ。模型は最後につくるのではなく、スタディするためにつくるんだよ。だからそういうことができたのはすごく良かったと思う。ただ。僕は南側のレストラン部分と北側があまりにもはっきり分かれすぎているように思う。もうちょっと混ざっていたほうが楽しい島になったような気がします。
Hグループ「ムール貝のパエリア|橋の上のパエリア」

はじめに子どもたちから、島のパンフレットが配られました。
TA|パエリアを作るにあたって一番大事なのはお米、それとお米を黄色く着色するサフランが重要になってくるので、島の南側の丘の斜面に大きく農場を取るという大胆な配置になっています。また島の中央に配した道がエリアを分設しています。少人数での集団生活ということで、何か求心的なイメージが必要なのではということで、大きな並々の屋根の建物ができてきました。詳しい話は子どもたちにしてもらおうと思います。
A.I(小4)|タイトルは「橋の上のパエリア」です。
H.I(小6)|まずは絵の説明をしていきます。島の南東側の丘がサフラン畑と田んぼになっています。南西側にはお風呂があり、その海岸線の北側に広場、レストランは端のラインの中にあります。次に、島の住民のタイムラインについて説明します。漁師は朝の6時に起きます。海上にあるいえで、朝起きて網など漁の支度をして、船に乗って漁に出ます。8時に帰ってきて、網を干したり、道具を手入れしたりします。お昼はレストランで、みんなで食事をします。14時半には休憩。お風呂の時間は18時、男子と女子で分かれているお風呂があります。19時半にレストランで夜ご飯を食べて23時に寝ます。
E.H(小4)|サフラン農家の日常についてお話しします。6時半に起きて、17時まで仕事をして帰ってきます。18時にお風呂に入りにいきます。19時にみんなで夕食を食べます。次にサフランについてお話しします。サフランは一度に取れる量が少ないので、道の両側にサフランを植えました。
A.I(小4)|私はレストランで働いています。シェフの役割はまず7時に起きてみんなの朝ごはんを作って、みんなのところに持っていきます。昼ごはんは、晴れている時には端の上で、雨の日はレストランで、みんなで集まって食事をします。夕食もレストランに集まってみんなで食べて、食べた後片付けなどをして22時くらいに家に帰って、その後寝ます。次にレストランの説明をします。先ほど言ったように、晴れた日には端の上で、自由に食べて雨の日はレストランで食べます。人とたくさん話をしながらパエリアを食べていくという感じです。
H.I(小6)|次に漁師のいえについて説明します。実は、漁師のいえはこの大屋根のラインから外れたところにあるのですが、全体的に統一感がないという指摘があったので、色とかたちを工夫して統一感を持たせました。屋根の下が暗くならないように屋根に穴をあけたり、網の干場を設けたりしています。漁師のいえのポイントは屋根の上に登ることができ、港が近いので便利です。
E.H(小4)|サフラン農家のいえの窓はいつでもサフラン畑が眺められるようにつくられています。お風呂は男女分かれていて、日によって男女のお風呂の位置が変わります。男女どちらも海を見られるようにしているので、景色はいいと思います。
A.I(小4)|シェフの家はレストランの近くにあります。調理道具などはレストランにありますが、エプロンなどは自分のいえにしまうようにしています。
H.I(小6)|広場のことを説明します。海に面しているので、子どもたちも遊んだり、みんなで楽しんだりできます。レストランやサフラン畑か海が眺められるので、子どもたちが遊んでいる様子を見守ることができます。
A.I(小4)|港は、島の北東の先端にあります。外から来た人を歓迎する場所になっていて結構広いスペースになっています。

式地|ピンク色の楕円形のボリュームは何ですか?
E.H(小4)|サフラン畑の倉庫になっていて、サフラン畑から直接使いやすい場所にあります。
式地|ではもう1つ質問です。橋の下にはいくつかのインテリア空間があって、間には隙間があって屋根のある半外部空間があると思うのですが、そこはどのように使うイメージですか?
H.I(小6)|いろんなことに使えると思います。雨の日は子どもの遊び場になったり、道でもあるのですが、バーベキューなどもできると思います。
式地|他のグループに比べたら、建築の機能が1つにまとめられていてものすごく大きいのですが、その考えに至った経緯について簡単に説明できますか?
H.I(小6)|大きな島に、4人家族が何組か別々に住んでいるのですが、何か統一感というか、つながりを持たせたいと考えて大屋根という考え方に至りました。職業ごとに特色があり、みんな違うけれど、みんな(島の住民として)一緒だよ、ということを象徴したいと思いました。
式地|「橋」というキーワードをとても大切にしたと思うのですが、この橋は何と何を繋げているのでしょう?北の端から、南の端まで、両側の海に向かっているようですが。
H.I(小6)|つなげているというか、大きな1つの屋根というかたちなのですが、つなげているといえば、住んでいる人同士をつなげていると言えると思います。
式地|パンフレットまでつくって、自分たちの中でストーリーが出来上がっているようなので、少し意地悪な質問をしてみました。橋の上は島全体を見渡せる場所でもあるし、島の北側南側をつなげる要素になっているわけだから、もう少し、そういうことを意識的にアピールできるといいのではないかと思いました。

太田|あの緑色は?
E.H(小4)|ここは港で、建物は船の倉庫です。
伊東|模型でみているとすごくダイナミックで、すごくはっきりしていて良さそうに見えるんだけど、どうして、地面がたくさん余っているのに、わざわざそんな大きな屋上をつくらなくちゃいけないのかが疑問だな。
H.I(小6)|海の景色や島の景色を見るために、屋上をつくりました。
伊東|その屋上はとても気持ちがいいと思うんだけど、下の部分はさっき、雨の日にバーベキューができるとか言っていたけれど、なんか高速道路の下のようで嫌な空間だよ。僕はそんなところに住みたくはないな。想像できる?下のこと。上は誰でも想像できるんだよ。一見ダイナミックで、縁取りも緑で綺麗にされていていい感じだんだけど、お金をかけてそんなに大きな屋根をつくる必要があるのかな?と思っちゃう。下の土地はどうなるんだろうな?ものすごい空地があるじゃない。というのが気になるのと、漁師と農家とレストランをやっている人の生活が随分違うじゃないかと思う。漁師が6時なんかに起きていたら、魚なんて取れないよ。レストランの人は夜遅くまでやって朝はのんびり寝てるはず。農家の人も朝早くないとダメだよね。特に今、熱くなっちゃっているから朝早く仕事をしないと効率が上がらないからね。そういうことをもう少し想像してほしいなと思いました。その海辺の広場はいいよね。
太田|厳しいコメントだったけれども、伊東さんが本気になっていって下さることはとてもいいこと。だから、「伊東さんの方が違っています」と反論できるくらいもっともっと、組み立てていくといい建築になると思います。
伊東|下の方もスケッチも描いてみるといいと思うけれど。
H.I(小6)|最初のスケッチでは、屋根に木を通すための穴を開けていく計画だったのですが。
伊東|そうなるとだいぶ印象が変わってくるね。
太田|このスケッチにある窓の下に並んでいる椅子みたいなのは、いいね。意外と居心地がいいんだろうな。いいイメージをもっと育てていただけたらと思います。
Iグループ「木こりのピザ|キノピオ島」

TA|島の名前はキノピオ島、一文字ずつ頭文字をとった名前です。キは「木こり」のキ、ノは「農業」のノ、ピは「ピザ」のピ、オは「大島」のオということで、この島の「いただきます」の風景は、ピザをみんなで囲んで食べるという風景をスタートに森や畑ができました。大まかな構成としては、島の南側にピザの生地となる小麦畑があります。北側の大きな丘の部分にはこの島の象徴でもある「キノコの森」があります。その北側が畜産エリアとなっており、キノコの森と小麦畑の間の大きく開けた平地の中央に広場にレストランがあり、みんなでピザを食べる場所になっています。その間に住宅が点在しています。島の東端には灯台、湾を囲むように港があります。
G.T(小6)|まず森について説明します。森は、木こりのピザに使うキノコを栽培するところであり、島の中を流れる川の源流があります。森というのは酸素を増やせるので、動物たちを育てるのに適しているので、森を広めにとっています。
Y.I(小4)|牛の小道について説明します。牛の小道はキノコの森の周りにあって、牛が草を食べながら歩きます。牛舎では、牛が7頭くらい飼育されています。牛が景色を見ることができるように、窓の高さが低くなっています。牛舎ら森や海が見えます。屠殺場はキノピオ島で飼育されている動物の命をいただいてピザの材料にします。
G.T(小6)|港では、2つの船を使います。主に、食べ物を輸入する輸送用と、ずっとピザを食べているわけにいかないので、魚も食べようということで、漁業用途があります。灯台は、機能的には必要ないのですが、住宅の上に灯りをつけて周囲を照らそうというイメージです。
K.T(小4)|広場から説明します。キノピオ島の中央で、みんなで座ってワイワイピザを食べます。温泉は男女別で分かれています。ロッカーがあってその奥が浴場になっていいます。シャワールームは壁で分けられていて、ロッカーは25個くらい設置されており男女合わせて50人くらいが利用できます。お風呂は各家庭にありますが、僕は、ずっと同じところでお風呂に入るより、大きなお風呂に入って、西向きに開けた窓から夕陽を見ながら、お風呂に入りたいと思っています。
M.M(小6)|おうちと小麦畑について説明します。小麦畑は3段階になっていて、小麦を収穫するところ、粉挽小屋で小麦粉にするところがあり、キノピオ島名物のキノピザにします。小麦をたくさん使うので粉挽小屋はおうちと同じくらいの大きさになっています。おうちも粉挽小屋も、加工場も、温泉も同じようなデザインにしているのは、島全体で統一感を持たせるためです。屋根は同じ色ではなく、カラフルにして見栄えをよくしています。おうちの中は、ベッドしかありません。なぜかというと、温泉やキッチンは共有してみんなでワイワイ楽しんで生活できるように工夫をしていて、いえにはただ寝るためだけに帰るという設定です。

アストリッド|すごく熱心で情熱的なプレゼンテーションでしたね。「お風呂がないと生きられない」ね。聞いていて思ったのは、そんなに統一感を意識しなくてもいいのではないかということです。牛小屋と人が住むところは違っていて当たり前じゃないかと思えるのです。統一感というのは、ボキャブラリー。つまり言語。ピザというのはイタリア語、だとしたら、同じ言語の中にも様々な名詞や形容詞があるように、それぞれの建築も同じ言語で語られながらも、特徴や個性があってもいいと思います。
この島は方角を意識していて、牛小屋でさえ夕陽を楽しめる窓を開けているのはいいなと思いました。森もあって、川も流れて、灯台もすごく灯台らしくて目立つ。そこで統一感がなくてもいいんじゃないかと思いました。色々考えながら頑張りました。ロッカー数もちゃんと、観光客用にあるね。
太田|色の統一感もあるんですがスケールの統一感もあって、大き過ぎたり、小さ過ぎたりといった違和感が感じられない、すごくリアリティがあると思います。特にこの食べる場所というのが本当にいい場所、きっと気持ちがいいのだろうと思います。ちゃんと家具も置いて、ピザ窯もあって屋根の高さとかもすごくいい。一点、お風呂を上がった後に、縁側のような場所で、みんながピザを食べている風景を見たりするような風呂上がりの風景も考えてもらえると風呂と食べるところの関係性が生まれてもっと良くなるのではないかなと思いました。そういうことを指摘できるようなすごくよくできた模型だと思います。

伊東|まずは、ゾーニングというかそれぞれの施設の配置の具合がうまくできているね。それがすこくいいと思いました。あとプレゼンテーションの中で、Y.Iさんが「牛の命をいただく」といったのが、すごくいいと思ったんだよ。そう言うふうに食べるもの、魚でも肉でも命をいただいて僕らは生きていくんだから、いつもそれをありがたいことだと思って生きていくべきで、自然と「命をいただいて」といったのがすごくいいなと思いました。「西日を見ながら風呂に入りたい」と言うのには共感するんだけど、その四角い箱みたいな建築は少し物足りないな。もうちょっと、君の言うお風呂の楽しさを味わうには、もう少し自由なつくり方があったのではないかな。それを考えてみてほしいと思います。でも全体はすごくよくできていると思いました。
アストリッド|このプレゼンテーションボードもピザスライスのような感じで構成されているのがとてもいいと思いました。
Jグループ「蓮根のちまき|湯けむり島!〜池と虹のレストラン」

TA|Jグループのメニューは、蓮根のちまきなのですが、蓮根のちまきは「いただきます」をするまでに、水の要素がたくさん出てきてきます。池があったり、水田だったり、温泉があったり、湯煙が立っている風景を工夫しています。
K.S(小6)|この島の1番の特徴は、大きな蓮根の段々畑で、もう1つは名物料理である蓮根のちまきを蒸すときに、この島に温泉が沸いているという設定で、温泉の蒸気を使って蒸す湯気です。もう1つはステンドグラスでできた大きな橋を兼ねた屋根です。
E.S(小5)|まずは全体の説明をします。北側が、蓮の池で、蓮の池の真ん中あたりに、ちまきを気持ちよさそうに食べられるレストランがあります。そのレストランの上にはステンドグラスの屋根兼橋がかかっています。島の南側は温泉になっています。温泉は全部の角度から違う風景が見えます。また、住宅街は全部の施設に行きやすいところに設置されています。
M.K(小4)|温泉は、2階が更衣室と温泉、1階に露天風呂があります。この温泉は水着で入るので、男女どちらでも一緒に入れるので会話が広がります。1階と2階の温泉からは、田んぼや住宅などいろんな景色が楽しめるので観光名所にもなります。
K.S(小6)|島の名物料理とレストランの説明をします。島の名物料理は「蓮根とエビのちまき」です。まず必要となる蓮根と蓮根の葉っぱは、レストランを取り巻く蓮池で収穫されたものです。もち米を蓮根を葉っぱで包んで、島の温泉の蒸気で蒸します。島でとれたお米を醤油とエビの出汁で味付けをしています。エビは養殖場で取れたもので、ステンドグラスの橋の上で干しエビに加工します。レストランは、蓮池全体がレストランなのですが、料理を作る場所はこの真ん中の円形の場所です。ここには、温泉の蒸気を使って蒸すかまどがあって、ここで出来たちまきをみんなが取って、思い思い好きな場所で食べることができます。おすすめの場所はステンドグラスの橋や、水の上に浮いている席、そして小舟に乗って風景を楽しみながら食べることです。
F.K(小5)|住宅のことをお話しします。住宅は、海の上に建てています。蓮池や田んぼをできるだけ大きくとるためです。住宅は島で取れる素材を使っていて、それぞれかたちが違っていて、景色も違って見えます。そしてこの島は、砂浜があって、住宅の真横から蓮の池を回って島の北端まで続きます。砂浜は観光客が楽しめます。
E.S(小5)|こちらの虹の橋はこの島の特徴です。虹の橋は島民が仕事をはじめる時と終えるときに通り、気持ちよく虹色の光を見て元気を得てリフレッシュする場所です。レストランは蓮の池の上にあります。夏には蓮の花が綺麗に咲き、浅瀬では水遊びができます。
M.K(小4)|田んぼではちまきを作るためのもち米を育てています。一部は棚田になっており綺麗な景色を温泉やレストランからも見ることができます。
K.S(小6)|補足で、このステンドグラスの橋にした理由がもう1つあって、蓮根のちまきを作るためには蓮池が必要で、ステンドグラスの光が水面に反射したら綺麗な風景になると思って、ステンドグラスの橋兼屋根をつくりました。これで発表を終わります。

柴田|このグループは中間発表の時から蓮池をすごく大きくとろうということが決まっていましたが、それは蓮のイメージをグループ全体で共有できていたからでしょうか。
K.S(小6)|蓮のイメージというか、まずはステンドグラスにしようと言うことで、みんなで「いいね」「いいね」となって、その時からこのイメージは模型をつくる前からみんなの中にありました。
柴田|そうした建築的なモチーフを活かそうとしたときに池が大きくなっていったと言うことですか?
K.S(小6)|はい。
柴田|それで、この島にとっては「水」と言う要素が大切だという気づきが蒸気だったり水田の水だったりに繋がっていったわけですね。
K.S(小6)|はい。建築に「水」の要素を取り入れたいと考えていたので、この島にとって「水」は重要な要素でした。
柴田|池に小舟を浮かべて、ちまきを食べるというアイデアも中間発表の時からすごくいいなと思っていました。温泉もそうなのだけれど、座っていると視線が低くなって立っている時よりも。低い視点から全体の風景が繋がっていく、そのことで全体がオーバースケールにならずに人にとっても動植物にとっても良いスケール感になったのではないかと感じています。
式地|蓮も水田もほとんど「水」だからそれをメインに考えていこうとする、すごく大胆で思い切ったコンセプトだと思います。水とか水蒸気といったいわゆる「現象」を見えるかたちにする工夫が、蒸し場であったり温泉であったり。温泉も普通だったら平面に展開していて脱衣所なんかで死角ができてしまうところを、2階を脱衣所にして全方向のビューを確保した問題解決力が多様で創造性に満ちているのが、心から感心しました。ちょっと住宅が海の上というのが、少しね。ずるいというか、もったいないというか。
太田|蓮池とか水田とか素晴らしいイメージに住宅も参加した方がいいよね。海に出すんだったら1箇所に固めずに分散させるとかね。
K.S(小6)|最初住宅は島の中にあったのですが、蓮池やレストランを考える上で、だんだん外に追い出されてしまって、でもこの島の人たちは蓮池を第一に考えて大切にしているという設定にしました。

伊東|湯気という発想は、大分の温泉とかを参考にしたの?
K.S(小6)|ちまきが蒸し料理なので、大分県の地獄釜のことを知ってなんかいいなと思ってつくりました。
伊東|僕は実際に地獄釜に行ったときに、こういうふうに湯煙があちこちで上がっている風景ってすごいと思ったんだよ。硫黄の匂いがして。
蓮根の池は段々畑になっているわけだよね、段々池という発想がユニークだよね。普通は低いところに池をつくるもんね。その全体がレストランというのもいいね。その段々があるとどんなレストランになるのかということまで絵で描いてもらえると面白かったよね。
K.S(小6)|はい。今度また考えてみます。
伊東|全体は素晴らしいよ。発想の豊かさというか、オリジナリティがあるというか、大胆でちょっとみたことのない風景になりそうだね。
アストリッド|ここでとってもいいと思ったのは「夢を見た」ということですよね。
ステンドグラスの光が水面に落ちてキラキラしたり、柔らかい煙が上がったりとか、ポエムのような風景になっている、そういうアプローチがとっても大事なのではないかと思うのです。ちまきは他のパエリアやピザに比べて、すごく地味な食べ物じゃないですか。それをすごく上手に逆転させたの。小舟に乗って水面に浮かびながら、ちまきを食べるなんて本当に最高じゃないですか。本当によく出来たと思います。
【後半クラス 受賞作品】
講師賞:Iグループ「木こりのピザ|キノピオ島」

木こりのピザの材料であるキノコの森を中心とするマスタープランが印象的でした。ピザということに徹底したプレゼンテーションへのこだわりも素晴らしい。統一感にこだわった建物の屋根が、職人がまわすピザの生地のように柔らかなカーブを描いていて浮遊感がありますが。この屋根のカーブが内部空間にどのような効果をもたらしているのか、ということまで表現できるのが建築家の仕事です。これからも頑張ってください。
オーディエンス賞:Jグループ「蓮のちまき|湯けむり島!〜池と虹のレストラン」

伊東賞:Jグループ「蓮のちまき|湯けむり島!〜池と虹のレストラン」

他の案とは圧倒的に違うオリジナリティに感動しました。「湯けむり」という発想は、想像もしなかった。みんなが本当に楽しそうで、みんなが「いいなぁ」と思いながた作り上げたんじゃないかと想像できるのが素晴らしいと思います。
【後半クラス 総評】
式地 香織
「生業から暮らしを考え、島の風景をみんなでつくる」という本当に難しい課題をやり遂げた子どもたちに心から感動し、尊敬の意を表したいと思います。途中厳しいコメントや高度すぎる要求もあったように感じていますが、それもみんなに対する敬意と期待の表れと受け止めてほしいと思います。そして、賞というのも決してかけっこの順位やペーパーテストの点数、優劣の話ではなくて、様々な観点の評価があるということです。別の観点で審査したら、全く違う評価があってもおかしくはありません。答えが一つではないからこそ、異なる意見があるということ、異なる意見があるから面白い、楽しいということを理解してください。様々な課題をデザインで解決し、多様な意見をデザインでまとめあげる、その力は「デザイン」だけではなくいろんな人生の局面で活かすことのできる力です。みんなと一緒に過ごせた1年間はとても楽しく豊かなものでした。感謝しています。これからも、子ども建築塾での経験を活かして、頑張ってください。

柴田 淑子
半年という長い期間、同じメンバーで一緒に何かをつくりあげるというシチュエーションはなかなか他には経験していないことだとは思いますが、子どもたちがとても楽しそうで、ずっとこの時間が続いてもいいのではないかと感じるほどでした。意見やアイデアの違いだけではなくて、ペースという違いもあり、同じイメージを共有したり共感したりするに至るまでにはなかなか難しい道のりもあったことでしょう。どこかで、自分の意見やこだわりを手放して、他の人のアイデアに乗っかってみる、という決断も必要だったに違いありません。それができたということは凄い力、自慢していいこと、大人の言葉で言うと「自負」していいと思います。色々なアイデアがたくさんある中から「このアイデアでいこう」とみんなで決断できる瞬間があったはずです。例えば、Jグループは「小舟を蓮池に浮かべてちまきを食べる情景」をみんなが共有できたと瞬間。例えば、Gグループでは「洞窟のような空間を抜けると静かな海が広がっているという物語」を共有した瞬間。そういう感覚的な「共感」はとても大切です。建築塾で、学問としての建築に触れる一方で、日常の中の小さな感動や発見に感覚を研ぎ澄ますことも大事にしていってほしいと思います。

アストリッド・クライン
1年間があっという間でしたね。1年前、今日こんな日を迎えると想像していましたか?みんなで、力を合わせてこんな素敵でカラフルな「いただきます島」をつくり上げる、ということをイメージしていたでしょうか?本当に、みんなすごく成長したなと思います。今まであまり意識してこなかっただろう、空間のサイズやスケール、心地よさや面白さに気づくことができたのではないでしょうか。それらと真剣に向かい合って、素晴らしい「いただきます島」ができました。この感覚を大切にし続けて、そして周りの人たちにも伝えて欲しいです。
もっと気持ちのいい空間にしよう、居心地のよい場所にしよう。
もっと面白い、カラフルな町にしよう。1年間、ありがとうございました。

太田 浩史
本当に、どこの島もいい島になりました。そして、何よりもスケール感、みんなが島の住民となってそこで暮らしている情景が思い浮かぶほどです。僕は、月に4都市ほどまち歩きを続けています。建築を見ることももちろん大切なのですが、是非みんなも、建築を見るだけではなく、まちを歩いて、感じてほしい。例えば、岐阜には伊東さんの素晴らしい建築「みんなの森ぎふメディアコスモス」という図書館がありますが、その周りにはお城があり、長良川があり、柳ヶ瀬商店街がある。それぞれの場所に役割があり、特色のある音を奏でていて、まち全体としてオーケストラになっています。その音楽の中で、伊東さんの建築がどんな役割を果たしているのか、どんな音を奏でているのか、という視点で建築と向かい合うのもとても大切なことなのです。

伊東 豊雄
1年間お疲れ様でした。前期は「いえ」、後期は「まち」ということで、特に後期のグループで1つのものをつくりあげるということはとても難しいことだったと思います。僕は、プロセスを見ないで、この場でプレゼンテーションを見た印象で勝手なコメントをしているので、誤解や飛躍があるかもしれません。その点は申し訳ない、お断りしておきます。
僕らの設計事務所でも、住宅のような小さなプロジェクトであっても、4〜5人くらいのグループで取り組んでいます。「このプロジェクトに対して、どんなアプローチをするのか」事務所に入ったばかりの若い人から、長年勤めてくれているベテランまでみんなで徹底して議論しあいます。経験や立場の違いを超えて、所長である僕も含めて対等に話し合うのです。一番若い人の、アイデアを「いいね」と言ってみんなで育ててみる、明くる日には全然違うものになっていることもある。毎日毎日、どんどん変わっていく。最初のスタートとは全く別の案になることもたくさんあります。でもグループのみんなが対等にアイデアを出し合っていくと、不思議と全員が「この案がいい」と共有し共感する案になっていくのです。これは、建築だけではなくて大きな会社のプロジェクトでも同じことが言えると思います。「あいつ、いいこと言っているな。よし、一緒に考えてみよう。」そういうことが仕事の楽しさだと思います。
みんなのプロジェクトもとても面白かった。グループのみんなのいい連携が出来ていて、楽しいという気持ちが伝わってきました。特にJグループには楽しい雰囲気が強く感じました。建築をやるには、楽しまなくてはいけない。そして、建築の楽しさは多様な意見やアイデアを持つ人たちが1つのプロジェクトに向かい合って、対等に議論し合うこと。この経験を糧にして、これからも頑張ってください。

講師 式地香織