子ども建築塾2024年度 後期第10回 いただきます島Ⅱ 発表会(前半クラス)
3月1日に行われました後期課題「いただきます島Ⅱ」の発表会(前半クラス)の様子を対話形式でお届けします!

【イントロダクション】
発表会の冒頭には、まちの課題の出題者である太田先生から、オーディエンスにあてて、課題と子どもたちの活動の概要、および成果に対する各賞の説明がありました。
子ども建築塾のカリキュラムは、前期が「いえ」、後期が「まち」の課題で構成されています。前期はソリストとして、自分が課題に対して、何を感じ、考え、どのように表現したいのかを存分に発揮してもらうことを目的にしています。一方で、後期はオーケストラ、チームのみんなの多様な意見やアイデアを合わせて、1つの音楽にまとめていくことが大切です。みんなでどんなまちがつくれるのか、自分の奏でる音だけではなくて、他者の音にも耳を傾けて互いに共鳴し合うことが必要です。実は10年ほど前に東大の大学院で出題していた課題と同じ課題なのですが、大学生は全然出来なかった。それほど難しい課題に子どもたちは一生懸命取り組みました。
「百人島」にはじまって、島の課題は4年目でこの「いただきます島Ⅱ」は課題としての集大成であると感じています。今回は、ムール貝のパエリア/蓮根のちまき/ザワーブラーテン/木こりのピザ/サボテンのタコスという5つのメニューを設定し、それらにまつわる農業、家畜などの畜産業、粉挽などの工業のある風景、何を生業にして暮らすのかを考えてもらいました。例えば、ザワーブラーテンという料理には、牛肉、レーズン、リンゴが必要です。牛の飼育やブドウ棚、リンゴのなる風景は素敵だろう、ということで設定しています。同様にムール貝のパエリアも、鉄の大鍋で料理をつくりあげる光景や水田、サフランの紫色の花が咲く風景を描いてもらいたい、ということで考えました。
どのグループも力作揃いで、賞を選ぶのは一苦労ではありますが、毎年最終発表会では、講師賞、伊東賞に加えて、オーディエンス賞を保護者の方に選んでいただいております。ご自身のお子さんをまずは賞賛したいという気持ちはやまやまであるとは思いますが、ここは冷静に、一番美味しそう、行ってみたいという島に投票していただきます。それでは、子どもたちの美味しいプレゼンテーションに移ります。
Aグループ「ザワーブラーテン|カラフルスター島」

Y.N(小5)|これからAグループの発表をはじめます。僕たちの島はザワーブラーテンを食べるための「カラフルスター島」です。ザワーブラーテンはドイツの肉料理で、ジャガイモ、赤キャベツ、牛肉、レーズン、リンゴを煮込んで作られています。そして、なぜ「カラフルスター島」というのかというと、色とりどりのカラフルな建物が四方八方に散らばっているのが、まるで星のように見えたからです。
S.K(小6)|まずは、畑について説明します。道を歩いているときに、ジャガイモ畑の緑と赤キャベツ畑の紫色を楽しみながら歩くことができます。次に、ブドウ畑についてですが、ブドウを干すための斜めの棚の下に居心地の良い作業スペースを作りブドウを干しながら海を眺められるようにしました。
M.N(小6)|牛小屋があって、牛を育てて大きくなったら工場に運びお肉に変えます。工場は光が入るように屋根にガラスを何箇所かはめています。周囲に合わせて色をカラフルにしました。
M.S(小4)|私がつくったところは「いただきます島」のレストランです。レストランでは、ここの住民たちがご飯を食べに来ます。窓は下側に置きました。なぜかというと窓からは牛小屋やブドウ畑が見えます。朝早くに来れば、朝日が見えます。こだわったところは、テーブルと椅子カラフルにして、レストランの雰囲気を楽しくすることです。
Y.N(小5)|僕は、このカラフルスター島のいえを紹介します。このいえを外から見ると、家型の屋根が連なったようなかたちをしています。様々なかたちや色を組み合わせてつくられている特別な屋根です。そしてなぜ、このような波のかたちの屋根になったかというと、島が海に囲まれているので、島が海とより一体化して、この島らしい特別な感じが表現できると思ったからです。また波のようにすることによって島の景観が損なわれないと思います。
このいえのおすすめポイントを紹介します。白い屋根の下は子ども部屋になっていて、そこには飛び込み台があり、いつでも海に飛び込んだり、釣りを楽しんだりすることができます。そして、いえの中から見える景色は、船着場、レストラン、畑、牛小屋などが見えます。
TA|全体のデザインについての考え方を補足説明します。まずはブドウを干す棚の斜めの要素が生まれました。そこから全体に「斜め」というアイデアを別の場所にも展開していきました。

太田|まずは最初にマスタープランついて確認しておきたいと思います。(北側)左のカラフルな屋根が屠殺場ですね。その左側は?
TA|ブドウ畑で、ブドウ畑で育てたものを入れておく倉庫もあります。
太田|その手前にあるのは?
TA|牛小屋で、屠殺場と牛小屋の間に水路があり、牛が自由に行き来できないようになっています。
太田|牛はどこで生活するの?
TA|牛は(水路で囲まれた)この辺りで生活しています。
太田|それから、レストランの左側にあるのは?
TA|ジャガイモ畑と赤キャベツ畑で、そのカラフルな風景を楽しむための道がうねって、レストランへと導いています。
太田|その手前が港で、岬の先にあるのが灯台のようなもの。
TA|そうです。目印の1つになっています。
太田|ありがとうございます。まずは、スケッチがとてもイメージが伝わっていいなと思います。素朴だけれど、海に飛び込むとか釣りをするみたいな、生活感が表れているのもいいと思いました。質問で、牛と遊んだりするのかということが1つと、港から見るとレストランに向かって階段のようなものがあるのですが、港からの全体の動線についてどのように考えたのか、歩いている風景というのを何か考えたのか、ということもう少し説明してほしいと思います。
S.K(小6)|まず港からレストランにいきます。レストランを通って牛のところや畑のところに行きます。レストランを中心にいろんな場所に繋がっているという感じです。
M.N(小6)|牛は、水路の中で遊ぶようにしています。本当はいろんなところに放牧したいと考えたのですが、畑のものを食べられてしまうと困るので、このようなかたちになりました。
太田|子どもたちは普段どういうことをしているのでしょう?
M.S(小4)|遊ぶことについては、いえの前に草原があるので、そこで鬼ごっこや、運動をするイメージです。スイッチのようなゲーム機ではなく、自然の環境の中で、自分たちでゲームをつくって遊ぶという考えを持っています。

伊東|質問だけれど、いえの模型ってどこにあるの?
TA|一番手前のボリュームが「いえ」の部分で白い屋根の下の子ども部屋の隙間から桟橋のような飛び込み台が飛び出しているというイメージで、ここがY.Nさんの一番のこだわりポイントです。赤いところも青いところまで全て「いえ」。みんなで集まって住むという設定で、他の部分には「いえ」を置いていません。
伊東|それと、ブドウ畑にもいくつか屋根があるのは?
S.K(小6)|ブドウ畑の下も活かしたいと思って屋根の部分をつくってみました。
TA|補足すると、ブドウを育てている場所に隣接して、収穫作業や休む場所のための日陰となる庇をつくりました。赤い道は、(ブドウを育てている人の)動線になっています。
伊東|僕は、大三島で実際にブドウを育ててワインにするワイナリーをやっているのだけれど、ブドウをワインにするまでのプロセスを調べましたか?ブドウの収穫はブドウ畑でやらなくてはいけないし、収穫したブドウは醸造所に持っていくから、そんなに立派な屋根は必要ないんじゃないかな。感想としては、Y.Nさんが最後に言った、海からの眺めというのはすごくいいなと思ったのだけど、なかなか模型だと伝わらない。それぞれみんないいことを言っているのに、模型にしちゃうと意外につまらないなという感じがしてしまいました。
アストリッド|私は、いつもカラフルだと「楽しく」なるということを伝えています。その通りに、カラフルでスケッチも素敵だけれど、気をつけてほしいのは色にも意味があるということです。ただカラフルであればいいというわけではないと思うんですよ。例えば、ブルーは落ち着いている色じゃない?オレンジや赤は、刺激的だったりにぎやかだったりするイメージ。なので、どうしてこの色をこの場所に使うのかということを考えた方がいい。色に意味を持たせるともっと面白くなると思います。
Bグループ「ムール貝のパエリア|グリーン・パープル・ピクニック〜〇〇のある風景〜」

TA|Bグループはしまなみ海道の生口島という島をモデルに、ムール貝のパエリアをテーマにした島を考えてきました。
K.U(小6)|まずは、この島のタイトルでもある「グリーン・パープル・ピクニック」について説明します。グリーンは棚田の緑、パープルはサフランの紫をイメージしています。この島は家畜の飼育が必要ないので、必要な建物も少なく、島全体を広く使うことができること、パエリアは元々外で調理して食べることが多いので、外の生活を楽しむことといえば、「ピクニック」ということで、「グリーン・パープル・ピクニック」が島のタイトルになりました。
K.K(小5)|私からはサブタイトルのことについて説明します。タイトルについて話し合った時に違うアイデアが出たことから、実は、お気に入りの風景というのは人それぞれにあるのではないか、ということを感じて、島に関わる一人一人が自分のお気に入りを持てるという意味を込めて、〇〇の部分を変えることのできるサブタイトルをつけました。
K.U(小6)|サフラン畑について、お話しします。サフランの花のめしべを使ってサフランという香辛料が作られます。最初は2つの丘のそれぞれを棚田とサフラン畑にしていたのですが、サフランを大量に使うことはないので、棚田のあぜ道に沿ってサフランを植えることにしました。それを横から見た図がこちらです。サフランというのは機械が必要なく、人間の手で香辛料にするので、広場に集まって、みんなで楽しく作業をしたら楽します。工場などは設けていません。倉庫は港の近くにあります。島を一周するトロッコがあるので、港についた荷物や加工する必要があるものなどは、トロッコで輸送します。
K.K(小5)|パエリアは外で食べたいので、レストランは、半屋外のような空間です。みんなで集まって食べることを考えて、オープンキッチンを取り囲むような鉄板のカウンターテーブルをつくりました。キッチンの内側で準備された材料を、お客さんが自分で鉄板で、調理して、みんなで食べる場所をメインに、周囲には家族やグループでパエリアを楽しめる席もつくりました。ここでは、いわゆるフライパンのような丸い鍋でパエリアを作ります。広場があるので、大人たちがゆっくり会話を楽しんでいる側で、子どもたちは広場で遊んだりして、みんなが楽しいレストランをつくりました。
また、島の人も外から来た人も使える「温泉」もつくりました。お風呂を楽しみながら雑談ができる、話が弾めばみんな仲良く交流ができるんじゃないかと思いました。棚田とレストランの間にある橋はガラスの橋で、港を背にして、右側が棚田とサフランの畑、左が広場とレストランになっていて、そこからの風景も誰かのお気に入りになるのではないかと思いました。
Y.M(小4)|僕はトロッコとお魚について説明します。このトロッコは、島の人たちが使ったりできるので、移動が楽になるし、物が運びやすくなります。トロッコに乗ると島全体の景色が楽しめます。漁業は網や釣りを使って魚を捕えます。観光客も観光の1つとして釣りを楽しみます。ムール貝の養殖も必要です。船に乗って海底に棒を刺してムール貝の生育状況を確認します。
K.U(小6)|次に3人のいえの説明をしていきます。私のいえにはベランダがあって、海に面しています。私にとってサブタイトルの「〇〇の風景」というのは、海のある風景で、都会にはない海を感じたいと思って、海を眺めるベランダをつくりました。他にもスペースがあるのだから、地べたでゆっくりしたらいいんじゃないか、という意見もあると思うのですが、人間は高いところからみる見晴らしの良い風景が好きなので、つくってしまいました。ここでは、ご飯を食べたりできるかなと思っています。
K.K(小5)|私のいえは、風景を壊したくないという思いから、木をモチーフにしてつくりました。木の上の枝から海にダイビングしたいなぁと思ったり、そこでごはんを食べても、いいんじゃないかということで、木のようないえをデザインしました。
Y.M(小4)|僕のいえは移動式のテントが2個あります。漁業を手伝うのに、便利だったり、休日には、橋の下でゆっくりのんびり休んだりすることも出来ます。

柴田|発表はすごく聞きやすかったです。みんなが考えたことを言葉そのもので表現してくれたという印象です。Bグループはすごく議論が活発だったというイメージです。つくるということも大切なのですが、みんなで合意を図りながら納得した上でつくるということが、今日の発表につながっていたのかなと思いました。
一人一人に質問してみたいのですが、まずは、K.Kさんがサブタイトルについての説明で、人それぞれがお気に入りの風景「〇〇の風景」が持てるというお話をしていたことと、最後のそれぞれのおうちの説明のところでも3人のそれぞれの思い入れが表れていて、建築的にはバラバラでいいのかなという疑問も残りつつ、徹底しているなという印象を持ちました。それがもう少し具体的にスケッチで描けていたらいいなと思いました。
K.K(小5)|海のギリギリのところに建っていて、そこから直接海に入って遊ぶようにしたら、お母さんも子どもたちが遊んでいる様子がわかって安心だということを考えました。いえの中の風景や様子については、いえでもパエリアを作って楽しむために、パエリア作りに必要なオリーブやレモンをいえの中でも育てるということをイメージしました。
柴田|風景という言葉には、そこに見える景色というのと、そこに人がどのように暮らしているかという情景や、農業や漁業などの生業がつくるランドスケープなどが一体となるものだと思うのですが、そういうことをイメージできているのかなということを聞いてみたいと思いました。
緑色と紫色が一緒に見える季節はあるんですか?
K.U(小6)|2ヶ月くらいの短い期間ではあるけれどあります。その時期だけを目指した模型表現になっていますが、稲も黄色く実っていく時期にはサフランも枯れて次の世代に移っていくというのもいいんじゃないかと考えました。
K.K(小5)|季節ごとに、島のメインカラーが変わっていくのもいいのではないかと思っています。
柴田|ある季節にしかない、風景を目指して島に行くというのもいいですね。トロッコも島に高齢の方が来た場合には、丘の上の広場まで乗せて運ぶという話もあったと思うのですが、私から補足させていただきます。

伊東|発表はとてもよかったです。3人が本当に自分のやりたいことを自分の言葉ではっきりと説明してくれてすごくよかった。感心しました。大学生でもそんなに綺麗に発表できないよ。
K.Kさんの大きな鉄板でパエリア作るというアイデアはすごくいいんだけれど、なんか鉄板焼きになっちゃうんじゃないかと思ったんだよね。パエリアってスペインのバレンシア地方が一番有名らしいのだけど、僕がバレンシアに行った時には「ぜひうちのパエリアを食べていってくれ、そうじゃないと帰せない」と言われて、飛行機に乗り遅れることになる程、スぺイン人にとってパエリアは重要な食べ物なんだよ。その時も、レストランに行く前に米を作るところを見せられたんだ。日本の田んぼみたいに綺麗になっていなくて、草ぼうぼうの田んぼだった。でもパエリア作りには田んぼはとっても大事なんだと思うんだ。その部分の説明がみんなの中にあまりなかったというのは残念だなという気がしました。だけど、マスタープランを一枚の絵にしてくれたのもすごくよかったです。
Cグループ「サボテンのタコス|ほかチク ライム島」

Y.T(小5)|この島の料理はサボテンのタコスです。タコスの生地となるトルティーヤの材料であるトウモロコシやサボテンのソース意外にも合い挽き肉や様々な具材が必要です。
なので、それぞれに畑や加工工場などがあります。この島の名前は「ほかチクライム島」といい、「ほか」はタコスのほかほかで、「チク」はサボテンのチクチクです。海を見ながら、夕方に西日を受けるトウモロコシ畑を見ながら、タコスを食べるのがポイントです。
S.R(小6)|マスタープランを説明します。島の南側の高台にあるのが、レストラン+レストランオーナーの住まいです。シェルターで囲われている下に鉄板があり、みんなで集まってタコスを食べるようになっています。鉄板がずっとここにあるわけではなく、夜にはいえの中に鉄板をしまっています。サボテン畑とトウモロコシ畑の隣にも畑の世話をする人のいえがあります。このいえには特徴があり、紐で編んだような素材で、日陰をつくります。涼しいところが好きな人のためのいえです。寝床とテーブルがあって、庭を見ながらティータイムを楽しめます。加工工場は、上から見ると日本の日の字のようなかたちで、大きなガラスの屋根があります。日の当たらない涼しい場所もあり機械や棚があります。輸入した牛肉やチーズなどを加工する工場になっています。最後に島の北東にあるのは豚小屋と豚のお世話をする人の住まいです。透明なピンクのシェルターのスペースは、豚が雨が降った時などに避難できるスペースです。横から見るとちょっと面白いかたちになっています。前方と後方にドアがあって飼育する人の出入りがしやすいようになっています。この3つのそれぞれの住まいはシェアハウスなので、5〜6人が住んでいます。
R.H(小6)|僕は島の1日について説明します。僕が住んでいるのは、豚小屋に隣接するいえなのですが、朝起きると、全身で日の出を浴びることができます。その後に豚小屋にいる豚に餌をあげて、昼ごはんにはレストランでみんなとワイワイとタコスを一緒に食べて、夜は星空を眺めながら外で寝ます。住まいの屋根が波型をしていることがポイントで、この隙間を風が通り抜けて、気持ちがいいです。東の窓は日の出を見たり、夜は海を見たりします。

式地|質問です。島の名前の「ほかチク」についてはよくわかりましたが、ライム島の説明がなかったように思います。
S.R(小6)|島の色を見ていただくとわかるように、ほとんどが緑です。グリーン島、サボテン島というのも考えましたが、ちょっと直接的過ぎるような気がして、黄緑色を意味するライム島と名づけました。
式地|私は、メキシコ料理にはライムが必需品だし、コロナビールには絶対ライムだから「ライム島」なのかとも想像していましたが…
S.R(小6)|それも、思いつきました。タコスの中にとりあえずライムを入れたことにしておこうかと。
式地|中間発表の時はもっとメキシコ感があったというか、建物の特徴を説明するときにメキシコ特有の帽子の説明があったと思うのですが、それはどのように発展しましたか?
R.H(小6)|少しわかりにくかったかもしれないのですが、麻紐で編んだ建物は麦わら帽子をイメージしてつくりました。
アストリッド|ソンブレロじゃなかったんだ(笑)。
式地|ソンブレロはとてもメキシコらしくてインパクトのあるかたちで、そのかたちの可能性をもう少し考えてもらいたかったなと思いました。帽子にも様々なサイズや高さがあるように、帽子をモチーフにした住宅も、住宅とお店の組み合わせっだったりするわけだから、それぞれの場所に合わせていろんなスケールで展開してもまちなみとして美しく面白い風景ができるんじゃないかなという可能性を感じました。

アストリッド|マスタープランがいいなと思いました。それぞれの機能に住宅もついてる。レストラン、豚小屋、畑、それぞれをお世話する人の住まいがあるというのはすごくいいと思います。R.Hさんの住まいは日の出を見る窓があると話してくれましたが、他のいえは少し閉鎖的ですよね。住まいの内側から見る風景というのも楽しめたらいいなと思います。島は暑いというイメージがあると思うのですが、台風や雨もあるのでそういう時に建物の中からどうやって外を楽しめるのかということも考えてもらえたらいいなと思います。
太田|(島の所々に配置された丸いかたちのものを指して)その丸いものはなんだっけ?
S.R(小6)|スタディの過程で使った発泡スチロールのドーナツ型の物体が、灯台や日時計になったりしていたものを、オブジェとして敷地全体に展開してみたのですが…
太田|置くのはいいんだけれど、その説明はあまりうまくないなぁ。たとえば、遊具とか。後付けでもいいから説明が必要だと思います。
伊東|Y.Tさんのスケッチすごくいいね。すごく綺麗な色だね。力強いし。あとの二人も、ちゃんと自分の生活を表現できているところがとてもよかったですね。自分で、そこでどのように暮らすのか、実感のこもった説明ですごくよく伝わってきました。本当に良かったです。
Dグループ「木こりのピザ|ようこそピザ街道へ」

TA|しまなみ海道の南側に位置する伯方島をモデルにしています。最初はなかなか議論がうまく進まなかったのですが、後半はコミュニケーションが進んで素晴らしいオーケストラになったのではないかと思います。木こりのピザというテーマなので、各所にピザの魔法がかかっています。それをうまく伝えられたらと期待しています。
Y.S(小6)|島の全体の説明をします。レストランが丘の上にあって、波型の屋根をしている海岸沿いの建物がいえになっています。港と灯台の脇にあるのが倉庫で島のシンボルのようなかたちをしています。港の西側にあるのがチーズ工場でその北側に粉挽小屋と公園、レストランの(南側)隣には牛舎があり、水牛を飼っています。
A.S(小5)|私が説明するのは、港からレストラン続く、この道です。カットしたピザのピースのようなかたちの石畳が人々を誘う「ピザ街道」です。
M.K(小4)|私が説明するのはグランピングです。広場の中央に大きなグランピング施設をつくりました。開放感のあるガラス張りの建物が私のお気に入りです。この施設ではみんなで料理をしたり、星空観察をしたりなど、誰もが参加できるワークショップがあります。みんなで協力したり、学んだり、人と人とが繋がれる安心感や喜びを感じられる場所になればと考えました。地平線から昇る朝日が見られる灯台は、私たちにとって特別な場所です。港では毎日朝市が開かれ、島民だけではなく隣の島からも大勢の人がやってきて活気があります。私たちの島で採れたキノコやミルク、チーズなどが食べられて、港は島民のコミュニティ広場でもあります。
H.K(小5)|私が担当したのはチーズ工房と粉挽小屋です。チーズ工房とは、チーズを作る工場で、粉挽小屋とは豆や麦などの穀物などを挽いて粉にする場所です。この島では公園としても利用できます。工夫した点は、建物の色です。それぞれの建物の色を目立たせて、どこが何をする場所かわかりやすくしました。チーズ工房の1日は、朝には牛乳を加熱したり殺菌したりしています。昼には、かたちづくりや塩水につけたり熟成したりをしています。夜には、確認や包装、工房の掃除などをしています。島のお気に入りの場所はチーズ工房の屋根のかたちです。ダンゴムシのようで可愛いからです。もう一つは、チーズ工房や粉挽小屋の周りの植物です。理由は建物の周りの環境や空気が良くなるからです。
Y.S(小6)|僕が担当したところはレストランです。レストランでも、グランピング施設でもピザが食べることができるようになっています。周りは小麦畑になっていて、小麦が実る季節には、360度小麦が黄金色に輝く風景を見られるようになっています。夕方には、夕日に反射してより一層小麦畑が輝くのが売りになっています。
M.K(小4)|次に島の倉庫について説明します。島で収穫したものや輸入したものを保管する島の大切な建物です。カラフルなアーチが交差した屋根が特徴で、島民からとても愛されています。
H.K(小5)|この島にはピザを食べられるところがたくさんあるので、たくさんの場所で集まって食べることができます。

太田|要素がとてもちゃんと拾えていて、粉挽小屋とかチーズ工房とかがきちんと考えられているなと思いました。一方で、要素と他のものとの関係が気になっていて、例えば一番気になるのが公園の位置で、実は公園と粉挽小屋との関係が逆なんじゃないかとかそんな気がしてならないんです。チーズ工房は少し小高い丘の上にあって、その眺めのいいところから少し離れたところに公園と粉挽小屋がある。ピザ街道とチーズ工房がどのような相乗効果を生み出しているのか、掛け算になるのかが知りたいんですね。
実は粉挽小屋と公園が逆転すれば、ピザ街道と公園が関係を結ぶし、公園といえというのもつながる、公園の中に住むという掛け算になると思うんですね。チーズ工房は、かたちは面白くていいと思うんですけど、ここにあることで、他とのどういう掛け算になるのかということについて何か考えがあれば教えていただきたいと思います。
T.A|チーズ工房は、島の目玉として港からすぐにアクセスできる近い場所ということで、ここに設定されています。本来はチーズ工房の周りにも食べられるところがあれば良かったのですが、時間の都合もあって実現できませんでした。
太田|そういうことであれば、チーズ工房に隣接して、お店があるとかショーウィンドウがあるとか、補足していただけるといいと思います。それから、この3つの屋根のある場所はなんでしょう。
M.K(小4)|ここも公園の一部で、遊具があります。
太田|もっと全体の繋がりを考えた時に、いろんな場所へアクセスできる道の集まったいい場所でしょ。テーブルもあって人が集まれる場所。そういう場所の意味を考えて計画してほしいと思いました。
式地|今の太田先生の話の続きになるのだけれど。ここは公園、ここは街道としているけれど、この丘の周辺全体が公園にも見えてくるのね。レストランやグランピングが丘の上にあっていろんな活動があって、それをつないでいる。一方、街道と関係のない場所がバラバラとあるじゃないですか。例えば、牛とチーズは本来関係がある。街道で繋がっていると、説明されれば理解できるかもしれないけれど、牛乳をチーズ工房に運ぶイメージはなかなか見えにくい、本来はもう少し近い位置にあった方がいいのかもしれないよね。粉挽小屋も水をつかうじゃないですか、チーズを作るのは水牛のミルクで、水牛は水浴びをさせないといけない。だったら、レストランの周辺を水路が回っていて、水路で、牛小屋もチーズ工房も、粉挽小屋も繋がるかもしれないよね。
これはみんなのアイデアがダメとか不十分だとかと行っているわけではなくて、ここまでつくったからこそ見える可能性なんだよ。すごくいい創作をできたからこそより高度な要求というか期待を、皆さんへのエールとして、伝えさせてもらいますね。

伊東|一番気に入ったのは石畳だね。すごく綺麗だね。一方で、レストランの屋上は見晴らしがよくて素敵な場所だと思うけれど、その下の部分はどんな場所になっているのかな。高速道路の下で食べているような感じがあって、グランピングも含めて何かを高く持ち上げた時には同時に下のことも考えなくてはいけないよ。それと波型のいえというのはどんな場所なの?
Y.S(小6)|少しでも何かインパクトのある空間にしたくて波型にしました。
伊東|うん。ちょっとどういう場所なのか見えてこないね。もうちょっと時間があれば考えたんだろうね。その石畳はすごく好きだね。
アストリッド|繰り返しになるんですけれど、全体的にどうやったら面白くなりかということを一生懸命に考えたんですね。それが素晴らしい。それぞれの屋根に特徴があるということで、特にY.Sさんは色が綺麗ですごくセンスがいい。けれど、気をつけないと(建築ではなくて)彫刻公園になってしまうんですね。もう少しそれぞれの屋根が機能から生まれたらいいなと思います。今はみんな上から見て、こういう屋根が面白いなということしか考えてない。だからもう少し自分が小さくなって、それぞれの住まいの中で屋根を見上げたらどういう感じになるのか、ということをもうちょっと考えていただければ面白い屋根にも意味が生まれると思います。でも頑張って面白くしようと努力したところはとてもいいと思います。
柴田|中盤ぐらいまで、バラバラに進んでいたけれど、「道で繋ごう」とA.Sさんが石畳の道をつくりはじめたことから何か、一体的になったように感じています。その道も、当初はまっすぐな街道というよりは一部が広がって広場になっていたり、蛇行していろんな建物や要素と接続しようとしたりする検討もあったと思うのですが、最終的には一本道になってしまった。でも、この道のあり方でもっと可能性が生まれただろうし、このグループはもっと出来たように思います。個々の要素を高めることも大事だけれどお互いの要素をどのように組み合わせて共鳴し合うように持っていくかも後期の重要な課題なので、それに対する意識を持っていてほしいと思います。
Eグループ「レンコンのちまき|TOUR DE CHIMAKI」

TA|Eグループではしまなみ海道の大島のかたちをベースに、レンコンのちまきを食べる島をつくりました。みんな個々にしっかりとした意見を持っていて議論も紛糾したのですが、最終的には1つの島としてまとまったものが出来たと思います。
T.N(小4)|この島のタイトルは「TOUR DE CHIMAKI」、自転車で回る島なんですけれど、全体図はこのようになっています。南側に田んぼがあって、水車で精米所の動力を発電しています。その北側が池になっていて、池の辺りにレストランがあります。島のあちこちに蒸し場があります。ちまきの材料は主に餅米で、その餅米はこの田んぼで栽培され収穫されています。ちまきの具材になるニンジンやゴボウ、大豆などは畑で栽培し、豚肉は養豚場で育て、食肉加工場で食肉にします。海には養殖場があり、エビやホタテを育てます。池ではチマキの材料になる蓮根とちまきを包む蓮の葉を収穫します。調味料のお酒、みりんや醤油はお米と大豆を樽で発酵させて作ります。干し椎茸とうずらの卵とウスターソースと筍と油と砂糖と塩は輸入します。食肉加工場は、周りからここで屠殺が行われていることを見えないようにするために海側に大きく窓をつくりました。工場で働いている人も海を見ながらリラックスして開放感を味わいながら作業ができると思います。肉に加工するのは少し残酷なことでもあるので、それを感じさせないようにするために、工場を半分地下に隠して、屋根の上に芝を生やして公園や広場のようにして、上で遊んだりすることができるようにしました。
D.G(小6)|この島ではお昼になると、いろいろな蒸し器のところで、みんなが自分たちでお気に入りのちまきを作るので、島のあちらこちらから、いろんなちまきの匂いが漂ってきます。いえは各家族の寝る場所として与えられているので、集会場がみんなの集まるリビングで、いつもにぎやかです。自転車で回る島なので、スピードを調整しながら、今の景色、天気、風を楽しむことができます。池は港から入ってきた時、港を出る時にいつも見えるようになっています。ご飯はピクニックみたいにみんなで仲良く集まって食べれるようになっています。
S.T(小5)|島民の1日について説明します。朝起きてベッドから出ます。いえで着替えて、集会所に行ってみんなで朝ごはんを食べます。終わったら一度、いえに戻って支度をして、学校に行ったり、仕事場に行ったりします。
N.T(小6)|昼は、いえで食べるのではなく、天気がいい日は島の好きなところにレジャーシートを敷いて、ピクニックをします。雨の時はレストランの中でランチをします。
H.N(小4)|夜は夕日を見ながら、食べます。夕日を見るために、外にレジャーシートを敷いても構わないし、レストランの中にはテーブルも椅子も用意してあるので、みんなで集まってワイワイ食べることもできます。
N.T(小6)|夜は、各自のいえで寝ます。
S.T(小5)|いえは、食事をしたりはしないで、寝ることに特化していて、主な食事はレストランや外で食べます。配置は、それぞれの職場に近い場所になっています。

柴田|みんなで一緒に住むのだけど、憩いの時間は、集会所やレストランに集まったり、こっちのいえに行こう、あっちのいえに行こう、と移動しながら住むということがこの島の良さなのかなという風に思いました。配置を考えるときに、まず蓮池の場所からはじまりましたよね。
N.T(小6)|池がこの位置になったのは、かたちによるもので、港に人が入ってきた時に池に包まれる感じがするように、三日月型にしました。
柴田|島の観光客を出迎える風景として、三日月型の池をつくろうとなった時に島のテーマが「水」という共通の認識を持ててアイデアが広がっていったと思います。蒸し器がシンボルの1つですよね。
N.T(小6)|蒸し器は島のいろんなところにあって、お気に入りの景色を見ながらちまきを食べるために、蒸し器をまわって観光を楽しみながら、自転車で移動します。
柴田|ちまきは場所によって味が違うのかな。
D.G(小6)|そういうことではなくて、蒸している時間に周りの風景を楽しむ、風景が違うということです。自分のお気に入りの場所でちまきが蒸しあがるのを待つということです。

式地|H.Nさんが冒頭に説明してくれた島の産業や流通の関係図がとてもわかりやすくて、感心しました。それを、ふわっと「TOUR DE CHIMAKI」という言葉でまとめ上げた D.Gさんの描いた絵にも、発想の豊かさにすごく感動しました。素敵で楽しい島だということがわかりました。一方で、一つ一つの建物や要素がバラバラで、それが楽しいという考えもあるんだけれど、島全体の風景を一言で言い表すとしたら、どんな島なんだろう?という視点が持てると一層案が深まると思います。例えば、蒸し器の場所は同じデザインに統一されているじゃないですか。そんな風にデザインの方向性を示すようなキーワードが見つけられるといいと思います。他のグループの講評でアストリッドさんがおっしゃっていたように、カラーリングの意味を考えると、島を観光する人にとっても良いガイドになるかもしれないよね。色やかたちは、人の行動を誘発することができるから、それも含めてデザインを決定することができるようになると、もっとすごい楽しい島になると思います。
伊東|レストランの屋根がカラフルなのは、どういうイメージですか?ステンドグラスのような屋根なのかな。
D.G(小6)|はい。いろんな人がくるから、光の差し方が場所ごとに違うので、お気に入りの場所を見つけてご飯を食べれるようなイメージで考えました。
伊東|H.Nさんが持っている関係図のようなものを最初に設定して、案をつくったというのはすごくいいよね。すごく論理的にできていると思いました。全体のマスタープランとしては、今までの中で一番、いいと思うよ。TAの人が持っている絵はどんな絵かな。
D.G(小6)|みんなが思っている「いただきます」の風景を集めて、コラージュにしました。
伊東|それもいいね。グループとしてすごくうまくいっていると思いました。
【前半クラス 受賞作品】
講師賞:Aグループ「ザワーブラーテン|カラフルスター島」
本当にみんなが頑張ったので、どのグループにするのか選ぶのにとても苦労しました。その中で、全体的にどうやって暮らすのか、どんな環境で仕事をしたらいいのか、ただカラフルで楽しいだけでなく、かたちにも理由があって、頑張って考えたことが、表れていると思いました。色にはやはり意味があるので、今後の課題としては色の意味や効果も含めて全体を考えていけると素晴らしいと思います。本当に頑張りました。

オーディエンス賞:Eグループ「レンコンのちまき|TOUR DE CHIMAKI」

伊東賞:Eグループ『レンコンのちまき|TOUR DE CHIMAKI」
チーム全体がまとまって、みんなで一緒につくりあげたということが一番表れていた良いチームでした。そのことを一番に評価しました。

【前半クラス 総評】
式地 香織
「生業から暮らしを考え、島の風景をみんなでつくる」という本当に難しい課題です。加えて共同制作、4〜6年生の子どもたちが対等に議論する場というのを担保するのには努力が必要です。島の日常や生活の小さなスケールから島全体の構想という大きなスケールを行ったり来たりしながら考え続けることに、真摯に向き合った子どもたちに敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。さて島の課題は4年続きましたが、中でも今回スケール感がほどよく素晴らしい。これは講師が口を酸っぱくして言い続けたこともありますが、子どもたちの身近にいるTAが提案してくれたり、調整してくれたりした成果だと思います。10回という限られた時間の中で、プロジェクトを進める渦中にいると、つくりあげることにどうしても一生懸命になってしまいます。この講評会の場が、俯瞰してプロジェクトを見直す機会だと捉えてほしいと思います。それゆえに、少し厳しいコメントや高度な要求がありましたが、子どもたちへの期待の表れです。本当に頑張ってくれました。ありがとうございます。
柴田 淑子
「半年間お疲れ様でした」とみんなに心から言いたいです。
前期は、個人個人で好きなものをつくりましたね。後期は、それぞれオリジナリティを持ちながら、みんなで何をつくるの?というみんなの答えを見つける作業で、いろんなわからないことを扱ったと思います。「農業」「漁業」「暮らす」ということにしたってリアリティを持てないところ、自分では経験していないことを想像してストーリーとして紡いでいかないといけないのは、結構大変だと思うけれど、ある時期、例えばEグループだったら「蓮池の景色が素敵だよね」とか、Aグループだったら「レストランから見える景色をみんなで共有しよう」とか、あるところでみんなが共感できて繋がれる瞬間を、どのグループも実感できたのではないかと思います。10数年の人生の中で、その瞬間に立ち会えた半年の経験というのは、すごく貴重だったと思います。これからは学校でも、他の子どもたちを巻き込むような人になってほしいと思います。ありがとうございました。
アストリッド・クライン
本当にみんな頑張りましたね。自分で振り返って、マスタープランをつくるとか、建築をつくるとか、いっぱい意識を高めましたよね。その中でパーフェクトな建物をつくるよりも、面白いとか、楽しいとか、心地よい場所をどうしたらつくれるのか、景色や風景、方角などに気をつけながら建物を考えていく、本当に意識が高まったと思います。みんなが建築家にならなかったとしても、もっと学校がこういう空間だったらな、毎日過ごす場所をこんな風にしたらもっと気持ちがいいのになどとみんな建築の中で「生きている」、建築とともに「生きている」ということを意識し続けられたらいいなと思います。本当にありがとうございました。
太田 浩史
本当に難しい課題で、大学院生に出してもこんな風にいかないんじゃないかと思います。本当に皆さんグループワークを頑張ってくれたと思います。何回か言ったけれど「掛け算」がとても大事で、1つの建物のアイデアがあってそれが他とどう繋がるかということも意識してほしいんですね。この建築塾に来たからには、これからもいろんな建築を見ると思うんですけれど、まちなみとかまちも見てほしいなと思います。僕は先週、草加せんべいの「草加」というところに行ってきたけれど、割と良かったです。街道の宿場町。それと一番好きなまちは岐阜の郡上八幡というまちなんですけれども、そういうまちにいくと、一つの建物だけではなくやっぱりグループでまちができているということを実感するんですよ。いえと橋とか、いえと川とか松並木とかというものが関係を結んで切るので、いろんなまちにも行くようにしてください。
伊東 豊雄
さて、総評をする前に、まずは、僕はすべてのプロセスを知っているわけではなくて、この場で直接見たり聞いたりした印象でお話ししているということをお断りしておきたいと思います。すごく頑張っていろんな議論をして、このようにまとめ上げてくれたのだと思うのですが、いきなり最後の成果だけ見て、あれがいい、これがいいと言ってしまっている状況です。ずっと面倒を見てくれている柴田さんが、これも言っておけばいいのに、あれも言わなくちゃと盛んにフォローしてくれていたので、申し訳ないと思っています。
今回一番難しかったのは、チームでやるということだったのではないでしょうか。僕の設計事務所でもチームで仕事をするということを大切にしています。僕がボスでありながら、若い人のアイデアや案を評価することもあるし、自分ではあまり納得していなくても頑張っているスタッフの意見を受け入れることもあります。だから自分とは異なる意見をお互いに認め合うということが必要になってくると思います。その時にTAの役割が大きかったのではないでしょうか。シンポジウムなんかをやって複数の人が議論する場合に、司会が上手くないと議論が面白くならないので、TAもそうした責任を担っているということを自覚してほしいと感じました。

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講師 式地香織