伊東子ども建築塾 福岡 第3回授業 イメージをふくらませよう①
前回は、屋外へ出て五感を使って言葉(オノマトペ)と空間の関係を探るフィールドワークでした。
耳を澄まし、聞こえた音をオノマトペやスケッチで表現するなど、全身で感じ取ったものを表現しようとするなかで、子どもたちは“オノマトペから生まれるかたち”を創造する土台をつくりました。
そして第3回。いよいよ、オノマトペが持つイメージをさらに深掘りしていきます。

◆授業の主な流れ
・今まで見つけたオノマトペを書き出してみよう
・オノマトペの特徴を整理して分類しよう
・レクチャー「うつくしいかたち」:末廣香織先生(九州大学)
・オノマトペから想像したことをスケッチしてみよう
この日のはじまりは「今まで見つけたオノマトペを書き出してみよう」。
紙とペンを手に、それぞれが思い出す言葉を自由に書き出します。
最初はポツポツと書き始める子も、誰かが「キラキラ!」「ぐにゃぐにゃ!」と言い出すと、空気がパッと華やぎ、次々に面白い音が飛び交い始めました。
「しゃりしゃり」「ふわぁ〜」「ぎゅっ!」
ひとつ出るたびに、「それいいね!」「こっちにも似てる!」と、言葉の連鎖反応が止まりません。
ある子が新しいオノマトペを発見した瞬間、「あっ!」と目を輝かせる様子がとても印象的でした。

次のステップは、見つけたオノマトペをグループに分けて整理していくことです。
大きさ、かたち、手触り、気持ちなど、子どもたちは自然と「どう感じるか」「どう見えるか」に意識を向けていきます。
子どもたちの思考がぐっと深まる時間です。
「これ、ふわふわだけど…さみしい感じもしない?」
「うーん、それって『見た目』なのか『気持ち』なのか…」
ときに迷いながらも、TAと一緒にあーでもない、こーでもないと考えるその過程そのものが、まさに「建築のはじまり」。
「これはどっちかな?」という講師の一言に、考え込む子もいれば、「あ!これ動きっぽい!」と即答する子も。「こんなのはどうかな?」「あー、それいい!」と盛り上がって、中には机に乗り出して、夢中で仕分け始める姿も見られました。

レクチャー「うつくしいかたち」
末廣香織先生(九州大学)

「自然には直線がないんですよ」と、末廣先生。
レクチャーでは、私たちの身のまわりにある植物や石、動物の身体、さらには炎や煙といった現象の中にも、規則性や形の“ルール”が隠れていることを、具体的な例を挙げながら教えてくださいました。
たとえば——
・木の葉っぱは、どの葉にも均等に太陽の光が届くように、複雑だけど理にかなった付き方をしています。
・波に洗われた石、近所に落ちている石、サハラ砂漠の石——一見バラバラに見える形にも、それぞれの場所に応じたかたちの“パターン”があります。
・植物の成長も興味深く、たとえばキウイの断面には細胞分裂の規則が、ミントやローズマリー、柳などはそれぞれ異なる形のルールでできています。
・ポップコーンは、とうもろこしの固い皮が熱で破れてふくらむ現象から生まれる形。自然の中にある物理の面白さが垣間見えます。
・杉の玉という彫刻作品には、古い木材の年輪、腐食、そして削れて色がついた部分など、長い時間をかけてできた自然の痕跡が見られました。
・昆虫(セマダラコガネ)の背中や、巻貝の渦、サンゴのかたちも、数学的なルールに従ってつくられた美しさの一例です。
・炎や煙は、空気の流れ=気流を“見える形”にしてくれる自然の現象。目に見えないものの動きがかたちになった姿です。
こうした自然界の「ルール」に目を向けることで、「美しい」と感じる形の秘密が見えてくる。美しさとは感覚だけでなく、数学的な構造や自然の仕組みに裏打ちされている。末廣先生のお話は、子どもたちにとって、身のまわりの空間や素材の面白さにも目を向けるきっかけになったようです。
子どもたちは静かに、でも目を輝かせながら耳を傾けていました。
授業の後半は、いよいよ想像をかたちにする時間です。
分類したオノマトペからイメージをふくらませ、スケッチに取り組みます。
「ぐにゃっ」ってどんな形?「どう動く?
講師やTAも一緒に「こうかな?」「面白いね」と話しながら、次第に子どもたちのスケッチがどんどん個性を持ちはじめます。
じっくり時間をかけて考える子もいれば、一気にイメージを描き出す子もいて、それぞれのペースで“オノマトペ”が“かたち”になっていきました。

一人ひとりの感性が輝いた一日でした。
次回は、このスケッチから「空間」へと発展させていく予定です。
どんな世界が生まれるのか、どうぞお楽しみに!
佐藤 茜 (ブログ取材担当)