塾生限定講座「建築はどのようにつくられるのか|伊東建築塾恵比寿スタジオ(ディスカッション)」

2013年07月09日

7月5日、前回の講座での伊東建築塾恵比寿スタジオについてのレクチャーを受けて、伊東豊雄塾長、伊東豊雄建築設計事務所の古林豊彦さん、近藤奈々子さん、環境エンジニアリングの和田隆文さん、塾生全員でディスカッションを行いました。

新しく完成した伊東建築塾恵比寿スタジオの建築を中心としながら、「みんなの家」や「HOUSE VISION」の取り組みの意義にも踏み込みつつ、これからの建築のあり方について盛んな議論がなされました。主要な論点に沿ってレポートいたします。

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現場から完成までを通じて見えてくること”

はじめに、以前行った現場見学から完成後までを通じて恵比寿スタジオを体感したことから得られる感覚について意見交換をしました。それぞれの感覚は少しずつ異なりますが、「現場の時と完成後のイメージの差が少ない」という意見が印象的で、この建築が持っているある種の仮設のようなたたずまいが、建築のプリミティブなすがすがしさに繋がっているように感じました。

IMG_7810建設中の現場見学の様子

風が抜ける建築、居場所を選びたくなる建築”

恵比寿スタジオは3辺が閉じていますが、前面道路に向かっておおらかに開いた構えと、上部の高窓から気持ちよく風が抜けて行きます。少し奥深い平面ですが、かなり奥の方にいても気流を体感することができることが驚きです。和田隆文さんからは、「原点回帰型進化」というキーワードをいただきましたが、なるほど納得です。塾生からは「ほとんど外にいるみたいだ」という声が多くあがりました。伊東塾で働くスタッフの方はその日の気持ち良い場所を選び取って過ごされているとのこと。機能毎に場所が定められた近代建築の考え方から、環境とともに場所を選びとる建築に魅力を感じます。

IMG_8677恵比寿スタジオの日常の様子

これらのテーマの他にも、
・切妻屋根と陸屋根の問題
・建築の内外の問題
・環境から建築を考えたこと
・建築の体験(写真と実際の違い)
・恵比寿スタジオの建築素材
など、尽きることなく議論が交わされました。

 建築の本当の価値を考えなおす”

後半では、恵比寿スタジオのコンセプトにも関連した建築として、「みんなの家」についての話題になり、近代建築がこれまで競い合ってきた偏った新規性のような考え方をいったんリセットしたときに、「どのような価値で建築を捉えていくのか」ということを全員で議論しました。これからは「建築をつくるプロセスが大事である」という伊東塾長のお言葉がありましたが、個人的にはその建築の価値を、つくり手、使い手が一緒になって話し合い、それを共有してつくっていくことから、これからの建築の姿が見えてくるのではないでしょうか。

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脱近代の5原則”

最後に伊東塾長から、脱近代の5原則が語られました。
①内外の境界をあいまいにする
②内と外の中間に半屋外空間をつくる
③場所の違いをつくる
④風のとおる道をつくる
⑤自然素材を再考する

これから全員で深く考えていきたいテーマです。

塾生 高野洋平