子ども建築塾 前期4回「見学会に行こう!」

2013年08月01日

みなさま、こんにちは。横浜国立大学大学院修士2年の孕石樹理です。

6月8日の子ども建築塾前期4回目の授業はスタジオを飛び出し、onishimaki+hyakudayuki architects / o+h(大西麻貴さん・百田有希さん)が設計された「二重螺旋の家」の見学会に行きました。梅雨どきとは思えない晴天に恵まれ、東京・谷中の町を前半・後半の2グループに分かれて散策しながら見学に行ってきました。

IMG_8240

まず、住宅までの谷中の町を、大西麻貴さんに案内していただきながら進んでいきました。谷中は木造家屋が数多く残り、細い路地がたくさんあります。この路地に人が休憩していたり、草花があったりするところがとても素敵だと思った、と大西さんが最初に谷中に訪れた時の印象をお話ししてくださいました。子ども達は配布されたプリントに載っているスケッチを片手に、きょろきょろと辺りを見渡し、「本当にこんなお家あるの〜?」と目的の家を探していました。

IMG_8252

10分ほど歩いたところで「二重螺旋の家」に到着しました。

「二重螺旋の家」はいわゆる旗竿敷地となっており、細い路地の先に大きな敷地があるような形をしています。最初に大西さんからこの家についての説明を受けました。

「谷中の町の魅力である細い路地が延長したように家に入っていき、そのままぐるぐると家のまわりに巻き付いたような形になっています。その路地が細くなったり、広くなったりして、図書館や勉強のスペースになっていたり、暗いところや明るいところなど、たくさんの場所があるのが見所です。」

IMG_8262

そして、ついに家の中に入って見学です。

中に入るやいなや、子ども達、そして私たちTAからも「わぁー」と歓声があがりました。少しずつ階段をあがっていき、窓から外をのぞいたり、真ん中のそれぞれの部屋を見てみたりと興味津々に目を輝かせていたのが印象的でした。一度上まであがると、その後は自分のお気に入りの場所を見つけようと、階段を降りたり上がったりしていました。

IMG_8311

『本の読めるスペースが好き』『屋上にあがる階段が好き』『クッションがたくさん置いてあるデイベットが好き』と、それぞれお気に入りの場所をたくさん見つけていました。

IMG_8308

自由に見学した後は、3階のリビングスペースに集まって、大西さんや住んでいらっしゃるご夫婦と2人のお子さんに質問タイムです。

住んでいらっしゃるご家族には、
Q「この家でお気に入りの場所はどこですか?」
A「1階のキッチンが好きです。一番下の子は、玄関が見える窓からよく顔を出して、お姉ちゃんの帰りを待っています。」
ご家族それぞれがお気に入りの場所を見つけていました。

Q「大きな照明がないけど、夜暗くて不便だったりしないんですか?」
A「少し暗いけど、それはそれでとても素敵ですよ。本を読むときは手元に灯りがあれば十分です。」
昼も夜も、いろいろな光、明るさを感じることのできる家でした。

Q「屋上では何をするんですか?」
A「夏には花火大会があるから、家族でお弁当を食べながら花火を見たりしました。でも、芝生を敷いたのは最近なんです。」

この質問に対しては大西さんも、「この家はできて5年くらい経つけど、もっと住みやすくなるように、少しずつ手を加えています。」とおっしゃっていました。

IMG_8294

設計者の大西さんには、「構造はどうなっているんですか?」「なんで網戸や引き戸がないんですか?」「なんであそこの屋根が斜めなんですか?」という具体的な質問があり、思わず大西さんも「どうしてだろうねぇ」と苦笑いしてしまうような場面もありました。

他にも、
Q「色んな大きさの窓があるけど、どうやって決めたんですか?」
A「ここから外が見えたらいいなぁとか、周りに住宅があるけど3階まできたらあまりないから大きく窓を開けたり、いろいろなことを考えて決めました。」

Q「なんで大きな部屋をつくらずに、こういう階段ばかりの家にしたんですか?」
A「元々6m×7mの小さな敷地だから、ここに大きく部屋をとろうとしてもそんなに大きくないんです。だから大きな空間は無理だけど、空間体験としてぐるっと長いものになって、いろいろなところで生活が展開されたら良いなと思いました。」

IMG_8298

子ども達の素直な質問に対して、伊東豊雄先生もこのような言葉を付け加えて下さいました。

「普通につくったら意外と階段がスペースをとってしまって、上手く広く使えないんだよ。だけど、階段をメインに考えるだけで、こんなに素敵なお家ができるんだよ。」

設計課題を考えるとき、階段は端っこにあって、昇り降りする手段としか考えていないような私たち大学生にとって、階段と廊下がメインになった家は「不便じゃないのかな」などと考えてしまいます。しかし「二重螺旋の家」では、狭い敷地の中に豊かな空間が広がり、とても素敵な住まい方をされていると思いました。

帰り道、子ども達が、「こんな家に本当に住んでいるのかなと思ったけど、すごく楽しかった。私もこんな家に住んでみたい!」「家全体がアスレチックみたいだった」「毎日楽しそう〜」と次々に感想を言ってくれました。

今回の見学が、子ども達の発想にどう生かされていくのか、これからの授業が楽しみです。

そして次回の授業は、新しい恵比寿スタジオでの初授業です!
今回の宿題になっている「二重螺旋の家」の気に入った場所のスケッチや感想を発表します。そして、「二重螺旋の家」の10分の1スケールの模型をつくり、スケールについて学びます。
ついに完成した恵比寿スタジオ、子ども達の発表、どちらもとても楽しみです。