子ども建築塾 前期第10回目

2012年10月11日

みなさま、こんにちは。東京大学大学院、村松研究室 修士1年の神谷彬大です。

子ども建築塾、第10回目の10月6日は、いよいよ前期の最終回。子どもたちは自分の作品について、たくさんの人の前で発表しました。

前回の授業に参加できなかった私は、まずそれぞれに魅力あふれる模型と、うまくまとめられたB2サイズのプレゼンテーションボードに驚きました。

どの子の案も、前に見たときよりもはるかにブラッシュアップされており、3分間のプレゼンテーションも、わかりやすく堂々と行うことができていました。
 

とても感性豊かでカラフルな模型を見せてくれた子もいれば、プレゼンテーションボードにとても精密な家のパースを描いていた子もおり、
それぞれが自分の得意なことをうまく生かして作品を完成させたことがよくわかりました。

また「光を取り入れる」「大きいお風呂がある」「地下に住む」「一人暮らしをする」というように、
それぞれに自分の一番伝えたいコンセプトがあり、それをしっかり説明することができていました。


 

柔軟な発想を引き出す「刺激」

このように大変すばらしい発表だったのですが、講評の際に太田先生もおっしゃっていたように、前期の授業が始まったころは、
子どもたちの案が固く、日常的な生活の範囲内での先入観にとらわれてしまっているのではないかと、少し心配していました。

例えば「食べる、寝る、遊ぶ、集まる」の4つのアクティビティを考えた時も、「集まる」のは必ずリビング、
「遊ぶ」といえばテレビゲーム…というように「LDK」の考え方や現代的な暮らし方に沿った発想が多かったようです。
 

しかし、藤本壮介さんが設計したHouse NAの見学に行ったり、太田先生のパプアニューギニアの話(前期第3回)を聞いたりするうちに、
「リビングで集まらなくても良いんだ」「部屋の仕切りがなくても良いんだ」「電気やガスのない暮らしもあるんだ」というように、
自分が思いもしなかった暮らし方を知り、受け入れる発想が子どもたちの中に生まれてきたのではないかと思います。

その結果、何人かの子どもは、例えばHouse NAの好きな所は取り入れ、そうでないところは自分なりに工夫して変えるなど、
House NAの見学やパプアニューギニアの話を直接的なヒントにして作品を作っていましたし、
他の子どもたちもみんな、House NAやパプアニューギニアから良い刺激を受けたようです。

自分の印象ですが、特にHouse NAに刺激されてか、空間を大きくつなげる作品が多かったように思います。
 

大人の私たちは、「子どもたちの自由で柔軟な発想」に期待してしまいがちですが、子どもたちにしてみても、まだ10年ほどの人生の中で、
例えば「広いマンションの部屋のリビングが一番快適」というような、先入観が作られてしまっている場合もあります。

もちろん子どもの発想は自由で柔軟です。だから、そこに少しの刺激が必要なのです。

少しの刺激を与えてあげれば、発想はどんどん膨らんで、今回のように楽しい作品がたくさん生まれるのだと思います。
 

 

他の人と評価し合って成長する

もうひとつ、今回大切だと感じたことは、他の人と作品を評価し合うことです。

今回は、その次に発表する子どもが発表者に必ずコメントをするようにし、また子どもたち全員が、お互いにメッセージカードを書いて交換するようにしました。

何かしら感想や評価を発言することは意外と難しいことですが、子どもたちの発言は、
他の人の作品を良く見て、しっかり作品のポイントをとらえることができていました。

発言をしていない時でも、ひとりひとりにメッセージカードを書くには、他の人の発表を集中して聴かなければなりません。

他の人の良いところを見つけることは、自分のためにもなりますし、たくさんの人の意見をもらうことは、次に向けた励みになります。

その繰り返しが、良い案をつくる力を効果的につけていくのです。

 

また、日本の学生はあまり発言しないとよく言われますが、実は私自身がその典型例。

その結果、突然意見を求められた時にうまく考えを伝えられずにもどかしい思いをすることが、今になってよくあります。

私自身の反省もふまえて、子どもたちには積極的に発言すること、常に何か言えないか考えておくことを習慣にしてほしいと思います。

 

さて、後期は渋谷のまちに出て、実際のまちのコンテクスト(性格)を読み取った上で設計をします。

自分の中だけの空想の家から、一歩先に進んで、周りのまちや他の建物との関係を考えなければならなくなります。

「まち」という刺激から、どのように子どもの発想が膨らんでいくのか、とても楽しみです。

後期も、どうぞよろしくお願いいたします。