子ども建築塾 前期2回「自然を体験してみよう!」

2014年05月05日

みなさま、こんにちは。千葉大学大学院 修士2年の伊藤里佳です。

4月19日、子ども建築塾 前期2回目の授業が行われました。
前回の授業でどんな感じがするのかイメージをふくらませた、前期「いえ」のテーマである「星」や「虹」を、今回はスタジオの中で実際に“体験”しました。身体全体を使って「自然」を感じる授業です。

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光と風を体験しよう!

授業の開始時間が近づき、子どもたちがスタジオに集まってきましたが、まだスタジオの中には入れません。今回のスタジオにはある仕掛けが施されており、いつもとちがう空間になっています。子どもたちは、中の様子がわからないスタジオに興味津々。太田先生の説明を受けて、グループごとに順番にスタジオに入っていきます。

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スタジオに入ってみると、中は真っ白!「光と風の実験」をするためにスモークで満たされていたのでした。まずは「光の実験」です。光のかたちは見えるかな?

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懐中電灯をつけてみると、「ビームみたい!」との声が。光が直進しているのがよくわかります。虫眼鏡や手鏡をあてると、歪んだり曲がったりして光のかたちを変えることができました。プロジェクターから出る光には色がついているのが見え、光にCDをかざすと虹のような反射光を見ることができます。2階に上って見下ろすと、光のかたちがよく見えました。

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次に「風の実験」です。風はどんな動きをするのかな?

スモークで真っ白の空間になったスタジオの扉を徐々に開けていきます。煙はゆっくりと動いていましたが、まだ風に流れていない様子。もう一カ所、天窓を開けてみるとスモークが上の方へ動いているような・・・?スタジオの外から天窓を見てみると、勢い良くスモークが流れていくのが見えました!2階から天窓を見てみても、風が流れていくのがよくわかりました。太田先生から、風は下から上へ流れること、風をつくるには入り口と出口が必要なことを教えていただきました。

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続いて、段ボール箱でできた空気砲を使い、みんなで順番に実験ました。箱をたたくと空気の固まりが勢いよく飛び出します。段ボール箱の口のかたちで空気のかたちも変わるようです。「ハート型にしたい!」との声を受けて、実際に口のかたちを切り取ってみると、見事にハート型になりました。

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体験装置をつくろう!

授業の後半は、グループで協力して「山」「水」「空気」「星空」「風」を体験する装置をつくります。段ボールや黒い布、透明のアクリル板、プチプチシート、サテンの布、土など、様々な材料を使ってつくる大きな装置。身体全体を使って空間を体験してみると、どんな感じがするのだろう?

Aグループは、「山の体験装置」をつくりました。まずは山の土台として、段ボールを円形に切り取ることになりました。どうやったらきれいな円を描くことができるかな?という問いかけに対し、「巨大コンパス!」と元気よく答えて、早速材料を集め始めました。凧糸とマジックをくっつけて巨大コンパスづくりをする子、中心を押さえる子とマジックを動かして回る子と分担しながら、みんなで力を合わせて大きな円を描きました。その後は、カッターの扱いに注意しながらみんなで少しずつ円をくり抜きました。

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そこでやっと土の登場です。土台の上に袋から土を出して、まずは山のようなかたちに盛ってみました。土は「湿っていて少し暖かいね」「ふわふわしている」「虫がいるね」と土を観察しながら1つの小さな「山」をつくりました。

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「山なら、木が生えていないと!」そう言って雑草を摘んできて木を植える子、「川をつくりたい、雨を降らせよう」とジョウロで水をかける子、それを受けてダムや橋をつくる子等、創作意欲に火がついて個性的な「山」ができました。土遊びをしながらも「山にはいろいろな生命がいること」「山のかたちは雨や風等、自然の影響でできていること」「人間がそれを制御しようと山に手を加えること」等を学びました。

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また途中に、「みんなで山の上に登ってみよう!」と4人で「山」の上に乗ってみました。一生懸命固めたつもりだったけれど「山」はまだ柔らかくて、4人で足踏みするとまるでパンの上を歩いているみたいに、ふわふわと安定しない足下に不思議な気持ち。小さな「山」でコンクリートの地面とは違う踏み心地を体験しました。(小森陽子)

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Bグループは白いサテンの布を用いて「風の体験装置」をつくりました。まずは長いサテンの布を3mに切っていきます。切り終わった3枚の布を、今度は針と糸で縫いあわせます。子どもたちは自分たちの身体よりも大きな布に苦戦しながらも、力を合わせて作業していきました。このグループ作業によってコミュニケーションがより活発になり、先頭に立って引っ張る子や自分のペースで仕事をきちんとやる子など、前回よりも自分を出せているように感じました。

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できあがった装置は、3m×3mの大きな布!これを使って風を体験するにはどのようにすればいいのかみんなで考え、とにかくやってみる!大きくひろげて掛け声に合わせて勢いよく上に引っ張ります。ぶわっと起こった風は布をドームのようにひろげていました。他にも、途中で手を離してみたり、小刻みに動かしてみたり。

そして、布の下に入って空間を体験!風は常に動いているので、同じ状態の空間を体験することはできません。その代わり、毎回ちがう体験をさせてくれます。子どもたちは、多様に変化する空間をとても楽しんでいるようでした。(伊藤里佳)

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Cグループは「空気の体験装置」をつくりました。まずは緩衝材に用いられるプチプチTMシートから直径約2メートルの円を何枚も切り取る作業を行いました。しかし、直径2メートルという自分の身体よりはるかに大きい円をカッターで切り取っていく作業は思いのほか大変で、子どもたちにとって全身を使っての肉体作業。

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今度は切り取ったプチプチTMシートを層になるように重ねていくことで空気の層をつくっていきます。そのためにプチプチTMシート一枚いちまいに両面テープを貼って、接着します。効率よく作業をするため、男の子、女の子、2組に分かれて作業を進めます。女の子たちは省くことのできる工程は省いて要領よく作業を進めています。男の子たちは…テープを隙間なく貼ることに集中しすぎたかもしれませんね。目の前にあるプチプチTMシートをぴったりと貼りあわせることに専念していたようです。それでも、作業をするスペースが足りない中、みんなで力を合わせて協力していたのには感心しました。

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ミルフィーユのように重ねたプチプチTMシートが完成すると、シートの上にのって足でプチプチ感を感じてみました。普段目に見えない空気を感じるためには、空気を一か所に閉じ込めてつつも、その中で空気が移動できるようなゆとりをつくることが必要だということが、わかったかな?(長谷川香苗)

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Dグループは「水の体験装置」をつくりました。まずは大きなアクリル板とアクリル棒を専用の接着剤で丁寧にくっつけて、正方形の水盤をつくります。下からも観察できるように、水盤の四隅を椅子に乗せて浮かせました。接着のすきまからの水漏れには悪戦苦闘。でも、なんとかうまく工夫して止めることができました。

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子どもたちは水盤をたたいて水を揺らしてみたり、葉っぱを浮かべてみたりと、思い思いの方法で「水」を体験していきます。もちろん子どもたちにとっても、単に波紋ができることや軽いものが浮かぶということだけでは普段の生活から予想できる範囲を超えません。しかし、まっすぐなアクリル棒の縁に波がきれいに反射する様子や、水盤の直角をたたくと同じように直角の波が生まれることは、このような装置だからこそはっきり見られる、普段の生活では見えづらい現象で、みんな「すごい!」と歓声をあげていました。また、水盤の下から揺れ動く世界を見ることはプールの中とも少し違う不思議な体験だったようで、子どもたちは何度も水盤の下に潜り込んでいました。そして、さらにいろいろとやってみるうちに、下から水盤を一斉にトントンとたたくとスポンジのようなトゲトゲの波が生まれるということがわかりました。このとき、ある子が「水ってただの液体だと思ってた!」と叫んだように、子どもたちは普段思っていたイメージとは違う水の振る舞いを発見し、驚いていました。(神谷彬大)

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Eグループは「星空の体験装置」をつくりました。前期課題でも「星のようないえ」がテーマのEグループの子どもたちにとっては、課題のヒントにとなる貴重な体験ができました。

まずダンボールを貼り合わせて、直径1820mmの円形を2つつくります。1つつくるのも大掛かりな作業となるのため、2グループに分かれて作業を進めました。一人ひとりの作業が多いので、それまで控えめだった子も率先して取り組むようになり、作業が遅れていた子は、自分でやりきれない部分を割り振って、皆で一丸となって作業を進めていきました。

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次に16mの黒い布を4mずつ切り分け、切ったものを全て両面テープで貼り合わせ、4m×4mの大きな布をつくりました。このあたりで、他のほとんどのグループでは装置が完成し、空間を体験して歓喜の声が上がる中、そちらの声に気を取られつつも、自分たちも早く体験がしたいと思い、作業スピードが一段と早くなりました。切ったダンボールの円を2つ重ねて貼り合わせ、そこに黒い布をかぶせて貼り、光の通る穴をあけて、ようやく完成です。

体験装置の中は、昼間でも暗く、穴から漏れる光の表情にみんな「おぉー」と声を出していました。懐中電灯で上から照らしたり、装置を持ち上げたりして、光の漏れ方の違いを検証しました。

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中に入ったまま、みんなで感想を話し合ってみると、「光がきれい」「キラキラしてる」「ここで寝たくなる」などの意見が挙がりました。自然と出てきたこれらの感想ですが、実は前回の授業で「星」のイメージについて出していた意見と一致していました。「イメージ→体感」につながった経験が、今後、子どもたちの作品づくりにどのように影響するのか、とても楽しみです。(山口絵莉一)

 

今回の授業では、いつもは見えないものを、スモークを使って見ることができました。また、自分たちの手でつくり出し、操作することができました。普段見えないものを見ることができたとき、自分の手でさわることができたとき、それらはより身近なものとして受け取ることができます。今回の授業で体験した「自然」のかたちや動きを思い出しながら、自分の作品をつくってほしいと思いました。

次回は、早くも中間発表会です。どんな「虹/山/波/火/星のようないえ」が描かれるのでしょうか。とても楽しみです!