子ども建築塾 前期1回「いえ」って何だろう?

2014年04月11日

みなさま、こんにちは。東京大学大学院 村松研究室 修士2年の神谷彬大です。
子ども建築塾も今年で4年目を迎えます。4月5日、恵比寿スタジオにて新年度最初の授業が始まりました。今年度はどんな子どもたちが、どんな作品をつくってくれるのでしょうか。

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「いえ」って何だろう?
スタジオに集まってきた20人の子どもたちは、まず5つのグループに分かれて座りました。学校も学年も違う他の子どもたちや、たくさんのTAのお兄さん、お姉さんに囲まれて、新しく塾に入った子どもたちは緊張した様子。一方で、昨年度から参加している子どもたちは、初めて会う子やTAの方たちともすぐに打ち解け、各グループの雰囲気を盛り上げてくれました。

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一通り自己紹介した後、伊東先生の「いえって何だろう?」という問いかけから、レクチャーが始まりました。子どもたちの答えは「寝るところ」「生きるのに必要」「みんなと一緒に生活するところ」・・・伊東先生もおっしゃっていましたが「みんなと生活する」、つまり、自分だけ良ければいいのではなく、いろいろな人とともに暮らすことを考えるのが、大切なポイントになるようです。

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さて、前期のテーマは「星/山/波/虹/火のようないえ」。そんな不思議な建物、本当にできるのでしょうか?伊東先生は、いくつか実際にある建築の例を見せてくださいました。

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周囲の環境に合わせて星のように光る「風の塔(設計・伊東豊雄)」、平坦な埋立地に「山」をつくってしまった「ぐりんぐりん(設計・伊東豊雄)」、波のような外観でまちに生き生きとした印象を与えるスペインの「カサ・ミラ(設計・ガウディ)」など・・・確かに見た目も「星/山/波/虹/火」をイメージさせるものが多いのですが、それらの建築の機能や効果もまた、「星/山/波/虹/火」の性質とよく似たものになっています。

自然をイメージしよう
伊東先生のレクチャーの後、「星/山/波/虹/火」の中から各グループのテーマをくじ引きで決めました。すぐにイメージが湧いた子もいれば、「一番難しそうなテーマになっちゃった・・・」と悩んでしまった子もいたようでしたが、どのテーマも、大人でも考えるのが難しいものです。そこで、まずは「いえ」を考えることからいったん離れて、「星/山/波/虹/火」について自由にイメージをふくらませていくことにしました。初めて会うグループのメンバーと協力しながら、できる限り多くのイメージをふせんに書き出していきます。

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私が担当した「火」のグループでは、最初は主に「熱い」「ゆらゆらしている」「焼くために使う」というように、実際の「火」の機能や性質が意見として挙がっていました。そこで、TAが子どもの発想をふくらますような問いかけをしていきました。「火にはもっと他のイメージもあるよね。例えば『燃えるような人』っていう表現もあるし、『生命』を火に例えることもある。」すると、「火の鳥」「幽霊」「かっこいい」といった、それまでとは少し違った意見も出てきました。

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その後、各グループが前に出て発表を行いましたが、どのグループもたくさんのふせんが貼られており、単純にもののかたちや目に見える現象にとどまらない鋭い見方や、ユニークな意見も出ていました。

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「自然のようないえ」って何だろう?

では、次回から取り組む「自然のようないえ」とはどのようなものになるのでしょうか。授業の最後に太田先生が、かつてご自身が研究のために訪れたジャングルでの経験を語ってくださいました。「真っ暗な森の中で、遠くにとても明るい光が見えて近づいてみると、たった1本のろうそくだった。そのときにちょうど月が出て、驚くほど明るくなった。その光景は忘れられない。」

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そして伊東先生も「子どもの頃、僕が生まれ育った諏訪湖で見た『水平虹』が忘れられない。」とおっしゃっていました。
「自然のようないえ」とは、太田先生や伊東先生の体験のように、はかなくも心に残るものなのかもしれません。そんな作品をつくってほしいと思います。

次回は「星/山/波/虹/火」を実際に“体験”します。小さな恵比寿スタジオの中で、果たしてそんな体験ができるのでしょうか?

私たちTAにとっても難しく、そしてやりがいのある課題です。これから一緒に考えていきましょう!