子ども建築塾 前期5回「見学会に行こう!」
みなさま、こんにちは。6月27日、梅雨空に薄っすらと晴れ間が差した日に、子ども建築塾第5回「いえ」の授業が行われました。
今回は、アストリッド先生が共同主宰している建築設計事務所「クライン・ダイサム・アーキテクツ」が設計した建築の見学会です。広尾駅の側にある有栖川宮記念公園に集合し、公園の中を元麻布のまちに向かって歩いて行きました。ゲストでいらっしゃったスウェーデンの建築家ステファン・ピーターソンさんが「よく知っている匂いだ」と話していました。雨で湿った森は、初夏の熱気をまとって独特の匂いを漂わせていました。
公園を出て坂道を登って行くと、交番のある交差点の角に、小さな白い建物が見えてきました。二階建てのファサードのガラスは、白いカッティングシートで描かれた竹やぶの模様で覆われています。アストリッド先生は「都会には緑が少ないから、この建物で街角に緑のある風景を生み出したかった」と説明しました。自然の豊かな有栖川宮記念公園を通り、その記憶が薄れないうちに、日光を反射してきらきらと輝く白い竹林が目を引きます。夜は内壁のグリーンがガラスを透過し、また違う装いを見せるそうです。
この建物には、アクセサリー・バッグデザイナーの坂雅子さんのショップ「acrylic」が入居しています。建物ができた後に、坂さんが自分のお店のイメージにぴったりと思い、入居を希望されたそうです。一方で、建物ができ上がる過程を、道の向かい側から見ていた交番のお巡りさんたちには、キャンバスにペンキを撒いたような不思議なファサードに見えていたそうです。そして、建物ができ上がった日はちょうど七夕だったので、アストリッド先生は「クライン・ダイサム・アーキテクツ」の所員さんたちと短冊に願いごとを書いたそうです。建物ができて使われていくまでには、色々な人の物語があることを伺いました。
建設時には、大きな敷地で行うように足場を組むことができなかったので、船を造るときのように、構造となる柱、梁、床等を溶接して組み合わせたそうです。建物の中に入ると、奥行きは子どもたちの背丈ほどしかありません。東京にはこうした極小の敷地に建つ建物も少なくありませんが、子どもたちもその極度の細さに驚きました。
さて、前期の授業も折り返し地点です。「ここは~な感じ」と、まるで模型の空間に入り込んだような子どもたちの語りに、はっとさせられることがありますが、今回のように小さな建物に入った経験、例えば光や影の落ち方や、隣の人との距離感、空間の肌触りのようなものが、「動物と暮らすいえ/動物と人が一緒に暮らすいえ」を考えている子どもたちへの刺激になると嬉しく思います。
子ども建築塾助手 田口純子