子ども建築クラブ 「折ってつくる強い形、柔らかい形」

2016年04月25日

以前に伊東建築塾スタッフ、および子ども建築塾TAを務めていた山本至です。
2016年1月31日に行われた子ども建築塾クラブという、子ども建築塾OBの子どもたちを対象にしたワークショップに参加したので、久しぶりに伊東建築塾のブログを書かせていただくことになりました。

今回のワークショップでは、東京大学から舘知宏(たち・ともひろ)先生をお招きして、紙を用いた建築構造について学びました。

IMG_1298

久しぶりの建築塾ということもあって、みんな朝から興奮気味でした。当時は少し消極的だなと思っていた子どもたちも、中学生、高校生になって自立心がいっそう芽生え、能動的に周りの人たちとコミュニケーションを取っていました。この年齢のみんなを子どもたちと表現するのははばかられますが、あくまでも「子ども建築クラブ」です。みんな子どもに戻った気持ちで建築を楽しむというコンセプトだと僕は解釈しているので、便宜上ここでは子どもたちと呼ばせていただきます。

IMG_1311

子どもたちは5つのグループに分かれ、まずは舘先生のレクチャーに耳を傾けます。先生は計算機科学を用いたアルゴリズム手法についての研究をされている方です。といっても具体的に何かよく分からないと思います。簡略化して言うと、折り紙のようにある素材を折り曲げていっただけで、どのように構造的に担保された空間がつくられるか、というようなことを実験されています。例えば、横浜の日本大通りにある「大さん橋」は鉄板が複雑に折り曲げられていますが、それによって広大な内部空間が柱も梁もなく形成されています。ある一つの部材を折り曲げるだけで、あれだけ丈夫な建築がつくられてしまうのです。

舘先生はレクチャーでそのようなことを大変分かりやすく解説してくださいました。一枚の平面的な鉄板に折り目をレーザーカッターでつけて、それを丁寧に折り曲げていくと、とても不思議なかたちが出来上がります。その折り目のつけ方を細かく計算していくと、動物のかたちもつくり出すことができます。3Dモデルを用いてその生成過程を再現してくださったのですが、最新技術をみんな食い入るように見つめていました。

IMG_1319

ここからようやく子どもたちの作業が始まります。先生のレクチャーを受けて待ちきれない様子の子どもたちは、まず単純に紙を重ね、それだけでどれだけの強度が出るかを実験しました。普通のコピー用紙を机から徐々にはみ出させていくと、重力によっていずれ下にだらりと垂れ下がるのは誰もが想像できる通りです。この紙を何枚貼り合わせると、どのくらいまで垂れ下がらずに机から張り出すことができるのか。非常に単純な実験ではありますが、紙という柔らかい素材でも、使い方によっては構造として成り立つことがみんな感覚的に理解できたと思います。

次に、一枚の紙に山折りにする線と谷折りにする線が記されており、記載通りに織り込んでいくと複雑なかたちが形成される折り紙キットのようなものを、先生が用意してくださいました。実は、先生がレクチャーで見せてくださったものの簡易版です。ある法則によって、その紙をたくさん織り込んでいくと、紙でも丈夫な構造体ができることも分かりました。

IMG_1323

ここまでの体験から、子どもたちは紙の使い方や加工の仕方、紙を構造として使うというのはどういうことなのかを学んだと思います。

お昼休憩を挟んで、午後からはグループごとに、紙でつくる橋という構造体を設計し、組み立てることに挑戦しました。最も軽くて強度の高い紙橋をつくるため、グループごとに競います。

IMG_1346

紙でつくった構造体を2枚の厚紙で挟んで台の上に橋のように安置し、その上に水の入ったペットボトルをどのくらいの重さまで載せていけるかで勝敗がつきます。ただ単に一人で紙をいじっていてもうまくはいきません。グループのみんなで話し合って、最も合理的な方法を見出さなければならないのですが、すっかり成長したみんなは話し合いもスムーズにできるようになったと思います。小学生の頃はワンマンプレーが目立った子も、他の子たちと構造設計について真剣に頭を悩ませていました。

IMG_1334

紙の折り目を増やしてみたり、強度を上げるために筒状の構造体をつくったり、軽くするために三角錐の構造体をつくったり、さまざまな創意工夫が見られました。先生のレクチャーの中で、紙には曲がりやすい方向があるというヒントがありました。紙を寝かせると自立せずに曲がってしまいますが、紙を立てると伸縮しない方向なので、一辺さえ固定していれば自立するということです。この性質をうまく生かして紙という材料をなるべく縦方向に使うという提案もあり、そのような作意が発揮できたグループはうまくいっていたように思います。一位のグループは4kg近くの荷重にも耐えられる構造体をつくっていました。また、極力部材を軽量化した構造体や、形状としての美しさを目指していたグループもあり、5つのグループとも大変独創的な構造体を見せてくれました。

IMG_1360

建築の構造と意匠が実は密接な関係性を持っていたということ、美しい構造体をつくると必然的に意匠も美しくなるのだということを、総合的に学ぶことのできた、僕たち大学院生にとっても有意義なワークショップでした。

ワークショップが終わった後、みんなで飲み物やお菓子を囲んでのお楽しみ会を開きました。久しぶりに再会した友達と話せる機会をみんな充分に堪能していたようです。

子ども建築塾を卒業した後も、みんなが新たなワークショップに参加し、楽しんでいたことを大変嬉しく思います。このように過去の塾生たちが積極的に参加してくれるのも、建築を学ぶということだけではなく、伊東建築塾で学んでいたという体験そのものが楽しかったからではないでしょうか。

IMG_1368

子どもたちの中には設計することの面白さにすっかりはまり込み、将来絶対建築家になるんだという子もいましたが、だからといってみんなが一様に建築家になるわけではありません。最も重要なのは、仮に建築家にならなかったとしても、子どもの頃に体験した建築の設計が楽しい行為であったと記憶していることではないでしょうか。そして、そのような体験を共有している人たちがたくさん社会に出てくれることは、建築をやっている人も嬉しいはずです。

IMG_1325

かつてこの場所に通っていた子どもたちの成長を見て、伊東建築塾がみんなにとって楽しい場所にちゃんとなっていたことを確認できて、スタッフOBとして嬉しく思います。

また次回のワークショップがありましたら僕も参加したいと思いますので、伊東建築塾で再会できるのを楽しみにしています。

山本至