子ども建築塾2018年度 前期第10回授業 「動物と一緒にくらすいえ」発表会(後半)

2018年12月03日

みなさま、こんにちは。9月29日に行われた子ども建築塾の前期発表会(後半)の様子をお伝えします。

※発表会(前半)の様子はこちらのブログからご覧いただけます。

■Aグループ
後半はAグループの発表からです。一緒にくらす動物はムササビです。

佐藤楓夏ちゃん「家族になれる家」
実際にムササビが住む森に観察に行き、誰よりも詳しくなったムササビ博士の楓夏ちゃん。季節・天気・気分によって自由に楽しめるように、何をするところかを細かく決めず、人と動物の区別を忘れてのんびりできるいえを提案しました。

一緒にくらす様子のスケッチを見せながらのプレゼンで「機能にしばられない自由」は伊東先生も建築を考える上でとても大事なことだとおっしゃっていました。

 

矢部泰旺くん「木漏れ日の家 光・音あふれる空間」
木々から差し込む光、川の音、鳥の声が聞こえてくる森のいえを提案したのは泰旺くん。
自然の中で高さによって空間にグラデーションをつくり、地上はにぎやかに泰旺くんとムササビが仲良く過ごす場、登っていくにつれてそれぞれが落ち着いてゆっくり過ごす場になっています。

先生方からは発表がとても明快で本当に音が聞こえてきそう、と感想が。「きれいに整理されているから、今後は分からない余地があるのも面白いよ。」と伊東先生からコメントをいただきました。

 

宮田葉くん「地上地中でムササビと暮らす家」
いつもダイナミックな提案をしてくれる葉くんは、地上だけでなく地中でもムササビと人が一緒に飛べるいえをつくりました。
ムササビは夜行性なので、葉が落ちることで暗くなる場所を設けるなど、ムササビの特性を捉えた特徴的な空間が散りばめられた作品となりました。

「地下という閉鎖的な空間と、開放感のある地上の寝る場所の構成が写真によく表れているね。」と太田先生。普通では考えられない地下に木の幹や滝があることについて「想像力豊か!」とアストリッド先生からコメントをいただきました。

 

米本千紘ちゃん「カーブになってる!食事を楽しめる家」
欠席のため、自宅で撮影したビデオを用いての発表でした。
赤・青・緑・黄に色分けした食料庫を階段状につなげ、食べること・寝ることを中心に考えた提案です。
ビデオでのプレゼンでしたが「このいえでムササビと一緒にくらしたいです!」と明るく発表してくれました。

「階段という建築の要素を使いつつ自然にうまく溶け込む姿がいいね。」と伊東先生からコメントをいただきました。

Aグループは、人間にはない「飛ぶ」という特徴がある中で何をどのようにとってきて食べるのか、などムササビについて細かく調べているので、自然にうまく溶け込む提案になっていました。柴田先生の「自分のつくったいえはどんな季節が一番過ごしやすいかな?」という質問に対して、それぞれが自分の作品の特徴を捉えて具体的に答えていた姿にもみんなの自信とこだわりを感じました。

 

■Dグループ
いよいよ最後、Dグループの発表。一緒にくらす動物はカンガルーです。

久枝ミウエンちゃん「SPONGE ふわふわ HOUSE」
ミウエンちゃんはカンガルーと一緒にトランポリンでジャンプできるいえを発表しました。
ふわふわな床と天井、雲の階段、ななめになった柱、カーテンの開閉による外とのつながり、隅々まで工夫が凝らされています。

「ぶら下がったやわらかい袋状のベッドで一緒になって寝るアイデアは面白いね!」と伊東先生からコメントをいただきました。

 

山口航くん「ふわふわの家」
山の中腹にやわらかい橋やトランポリンのあるいえをつくった航くん。
航くんは狭い空間が好き、ということで階段の下にも居場所をつくりました。
カンガルーのジャンプ力に頼らずに段を積み重ね、やわらかく包み込まれる空間に対して「優しさ」を感じるというコメントが多くありました。

太田先生は「山という大きいスケールを捉えつつ、そこに自分の好きな狭い空間をつくっているところに二面性があり、これからも好きな空間の追求をしてほしい!」と今後への期待も膨らませていました。

 

坂本知優ちゃん「日本←→オーストラリア」
欠席のため、知優ちゃんに代わってTAの野口さんが発表しました。
6年生の知優ちゃんは丘に見立てた屋根のあるいえを住宅街につくりました。
いえの中には、高さを調整することでベッドやテーブルになる可動式のゆりかごがあります。

太田先生からは「住宅街の中だと少し窮屈でかわいそうな感じがしてしまうかも。豊かなアイデアを生かして雄大な案にしても良かったね。」とアドバイスをいただきました。

 

佐藤彩花ちゃん「カンガルーと楽しく運動HOUSE」
欠席のため、自宅で撮影したビデオを用いての発表でした。
「カンガルー取って!」というキャッチコピーが印象的な、カンガルーと一緒に楽しく運動しながらくらすいえです。
椅子が付いていてカンガルーのしっぽを入れる穴があいた柱、トランポリンやマッサージの仕組みまでついたふわふわのベッド、草の上をイメージしたふかふかな床、とカンガルーのことをよく考えた細かい工夫がたくさん詰め込まれています。

柴田先生からは「周りも巻き込んでいくような楽しいエピソードがたくさん弾けている。カンガルーのことを考えながら自分のやりたいことを叶えていて、人と動物の新しいあり方だね。」と感想をいただきました。

Dグループの作品はみんな楽しくつくった様子が模型からも伝わってきて、パワフルなカンガルーの動きの中でも細かいスケール感やこだわりの空間がうまく表れていました。

全員の発表が終わり、最後は講師の方々からの全体講評がありました。

まず最初にアストリッド先生から

「今回の『動物と一緒にくらすいえ』という課題をみんなが分かりやすく素直に受け取ったことで、個性的に楽しくつくってくれたのだと思います。これからも“自分だったらどうするか?”を考えて表現していくことを続けてほしいです。」

続いて柴田先生から

「今回の発表の中には四角いいえはありませんでした。これは、みんなが自然を感じさせるように自由で感覚的なものがかたちに表れていたのだと思います。前期の授業でみんなが取り組む上で感じた、どうなっていくか分からないところに向かって走っていくドキドキ感や、やり遂げたときのワクワク感をこれからも大切にしてください!」

続いて太田先生から

「課題も面白いものだったこともあり、みんなが想像力を発揮して生活のイメージをしてくれたことがとても良かったね。人間のためにあるいえであっても、自然と一緒にくらしていることを改めて確認できるみんなの発表でした。アイデアだけでなく、色使いやプレゼンボードにも工夫が多く見られて良かったと思います。」

最後に、塾長の伊東先生から

「“動物と一緒に”と考えることで“いえ”という概念が常識から離れていくことを感じました。
常識から離れていくことが建築をつくる上でとても大事なんだよね。これからも自分の好きなことから考え始めるという建築の考え方を持っていてほしい。そのためには普段から考えながら遊んだり、街を歩いたりすることが大事だよ。この調子で後期も頑張ろうね。」

こうして、長時間に及ぶ発表会を終えることができました。

 

前期の課題では、普段の生活では一緒に過ごすことのない動物について知ることから始まり、一緒にくらすには何をするか、そのためには何が必要か、と考えることが重要でした。このことは、今回の「動物と一緒にくらすいえ」に限らず、他の建築を考える上でも大切なことだと思います。空間を使う人のことを考える、その“優しさ”が建築には必要なのではないでしょうか。今回の発表会の講評中にも“優しさ”や、 “常識にとらわれない”、“自由”といったキーワードが繰り返し出てきました。これらのキーワードは後期の課題にも共通して大切なポイントになってきそうですね。

後期は、「まち」の課題に取り組みます。今後は今まで以上にグループ内でコミュニケーションをとり、さらにはグループを超えた全体でのアイデアの共有に期待します!

前期の発表を終え、後期での成長を楽しみにして、TAとしても引き続き子どもたちに寄りそっていけたらと思います。

日本女子大学4年 塩田佳織