子ども建築塾 前期10回「自然のようないえ」の発表会

2013年10月09日

皆様こんにちは。東京大学生産技術研究所村松研究室博士課程の田口純子です。
10月5日、子ども建築塾前期「いえ」の授業の発表会が行われました。

恵比寿スタジオに移転してから初めての発表会。当日は小雨の降る肌寒い日でしたが、子ども達、伊東先生、TA、スタッフ、そして保護者やゲストの方々が集まり、小さなスタジオが賑やかな空気に包まれました。子ども達が時間をかけて完成させた、個性豊かな模型やプレゼンボードも並び、会場に華を添えていました。

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発表会のはじめに、伊東先生が子ども達に問いかけました。
「水ってどんなイメージなんだろう。森ってどういうイメージなんだろう。水の中にあるいえではなくて、森の中にあるいえではなくて、『水のようないえ』『森のようないえ』って何だろう。」

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まさにこの問いかけこそが、2013年度前期「いえ」の授業の課題であり、子ども達に9回の授業を通して考え、表現してもらったことでした。課題は、「水のようないえ」「花のようないえ」「鳥のようないえ」「森のようないえ」「雲のようないえ」の5つのテーマから成り、その中から自分に合った1つのテーマを選ぶことができます。さて、子ども達はこの課題に、どのように応えてくれたのでしょうか。

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「私がつくったのは、『鳥の気持ちハウス』です。1階と2階をつなぐスロープを歩くと、空を飛んでいるような気持ちになれます。天窓や格子の入った吹き抜けを通して入ってくる光は、まるで木漏れ日を浴びているようです。」

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「水のようないえをイメージしました。外側の壁が半透明で、池の水面を下から見上げているような感じがあります。入口から入るとすぐに地下へ下りる階段があって、暗くなって、その後、一気に光が入り込んで明るくなって、開放される感じがあります。」

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「『フラワーハウス』をつくりました。すきまから風が入って涼しくて、光も入ってきます。いえの中はお花のすごくいい香りがします。明るい色の部屋と落ちついた色の壁があり、光が外から差したら、壁の色が部屋の中に透けてきます。」

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「最初はテーマを決めていなかったけど、だんだんつくっていくうちに、木のようないえになっていきました。出っ張っているところが木のように見えてきて、光の入ってくる様々な部屋をつくりました。」

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「水のようないえにしました。名前は『竜宮城』です。水滴のような形をしていて、それぞれの棟が水の一生を表しています。山から流れてきて、それを使って、海に出て、蒸発して雲になります。目の前に海が広がっていて、海を見ながらゆっくりできます。」

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「僕がつくったのは、雲のようないえです。屋根を工夫して、本当はやわらかいもので出来ているイメージでつくりました。梯子があって、1階から屋根まで一気にのぼれるようになっています。吹き抜けを通して、下の階の人の声も上まで伝わってきます。」

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「波のようないえをつくりました。屋根の形に合わせて、晴れた日に屋上で食事ができるような場所をつくりました。屋上からライブラリが覗けて、水上にいるような気持にもなります。仕切りをなくして広がりをもたせたので、どの場所にいても屋外にいるようです。」

20人の子ども達の発表はどれも、自分の気持ちやイメージを沢山詰め込んだメッセージとして伝えられていました。会場にいた聞き手の皆さんにとっても、自分の体験や記憶に重ね合わせられる場面が多かったことと推測します。子ども達が最終的に模型や言葉で表現したものもさることながら、はじめにイメージしたスケッチ、そして、模型をつくりながらその空間のなかに入り込んで考えていった過程も、とても魅力的でした。

「水のようないえ」「花のようないえ」「鳥のようないえ」「森のようないえ」「雲のようないえ」。これらのテーマには、子ども達が自然や身近な環境をどのように感じ取り、どのような気持ちになり、どのような夢を抱いているのか、そこから考え始めてじっくりと立体に落とし込んでもらいたいという、大切な願いが込められていたのです。子ども達の制作過程に寄り添う、TAの大学生や大学院生の皆さんにも、意義深い課題であったことでしょう。

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発表会の終わりに、課題に対して見事に応えてくれた子ども達に、伊東先生からメッセージが送られました。
「自分の頭の中にあるイメージを立体に置き換えようとするから、そこに感受性が出る。建築に限らず、何を考える時にも、自分の気持ちから、それがどのように、どうやったら建築らしいものになっていくか、ということを考えてみて。皆さんくらいの学年が一番いいなと思うことは、夢を自由に描けると同時に、それを理性的にちゃんと整理して組み立てていくことができる。その両方の力があって、それがミックスされているちょうどいい年頃。それがいいんだよ。」

さて、10月19日からは、いよいよ後期「まち」の授業がはじまります。前期の「~のような」に対して、後期では「~とともに」を考えます。たった4文字の言葉ですが、後期にも大切な願いを込めて、その成果を楽しみに待ちたいと思います。