2011年9月13日
第7回 子ども建築塾
9月10日に第7回「子ども建築塾」がありました。
10日は前回の引き続きとして、模型製作が引き続き行われたのですが、それと平行して、模型が順調に進んだ人は図面を描いてみるという試みを行いました。図面といっても定規等で寸法を的確にわりだすというものではなく、スケッチのような感覚で自由に描きます。例えば上から俯瞰で見た平面図のようなスケッチを描いてきた子は、横から見た断面図などのように、自分がもともと描いてきたスケッチに無い構図を見つけ出し、それを描いてみます。
ただ子ども達の多くは、イメージが立体的に立ち上がる模型のほうが作業をしていて楽しいようで、模型製作の手がとまることはほとんどありませんでした。
子ども達の模型製作を手伝っていて非常に興味深いのは、こちらが何も教えていないのに、自分の作りたいものへと辿り着くための手順を意外にもちゃんと把握していることです。初めに自分が絵にしたイメージがどこまで立体として具現化できるのか、そのための試行錯誤には驚かされるものがあります。中には始めに描いてきたスケッチの実現性の厳しさに、模型を製作しながら案を修正する子もいました。修正する前の案も大変に面白いものでしたので、自由な発想で好きなように作っていけばよかったのかもしれませんが、少なくとも修正できるということはイメージがしっかりと構築されていることの表れでもあります。
模型製作の手順も人により様々で、平面プランを土台に貼付け、そこにスチレンボードで壁を立ち上げていくように作る子もいれば、建物全体を幾つかのボリュームに分割し、それを足し算するように作って子、また宮大工のように土台から順序だてて丁寧に組み上げていく子もいます。模型製作の手順は、彼等が最初に描いたスケッチと対応しており、平面プランを描いている子やパースだけの子、立面図のような絵で表現する子など、絵画の描写方法が模型再制作手順に影響しているのはおもしろいことです。
この先、これらの模型がどのように発展していくかが楽しみです。
2011年9月7日
子ども建築塾前期課題(いえ)進捗レポート…1
5月から開催されている子ども塾ですが、夏休みを挟んで、いよいよ9/10から活動が再開されます。
10月までつづく前期テーマは「いえ」です。
子ども建築塾で開催されてきた「いえ」の具体的なプログラムを以下、簡単にご紹介しましょう。
(以下カリキュラムに基づくが、天候その他で変更があります)
http://www.itoschool.or.jp/article/36
一番最初に塾生に出された課題「じぶんの住みたい家」に対して、それぞれ描いてきたスケッチから始まりました。
以下のテーマに基づいて進めてきています。
・「じぶんの住みたい家」を描くこと
・スケッチに盛り込んだ夢と工夫を、人に説明すること
・建築や家の寸法と身体の寸法を理解し、断面図として描くこと
・森山邸(西沢立衛さん設計)見学を通して多くの人と住むことの楽しさ、外部空間の使い方、小さな空間や空間構成を体験・観察すること
・模型づくりを通じてスケッチを立体化、空間化すること
・建築図面を描くことを通じて、リアリティを考えること、人に説明すること
今後、発表会を挟んで「じぶんの住みたい家」の模型づくり、さらに図面作成に取りかかっていきたいと思います。
2011年6月28日
子ども建築塾 森山邸見学
第3回子ども建築塾として「森山邸見学会」が行われました。
前回台風の影響によって中止になってから1ヶ月近く、やっと念願の森山邸に訪れることができました。設計者である西沢立衛さんが案内してくださり、森山邸が建ち上がるまでの話などをしてくださいました。
今回のボランティアは昭和女子大学、千葉工業大学、東京大学、東京理科大学、SFCの学生の皆様に行っていただきました。屋外講座という変則的なものでしたが、初めてのボランティアとは思えないほど、皆様的確に行動してくださいました。
初めて訪れた森山邸は、抱いていたイメージよりも心なしか大きかった気がします。おそらくそれは箱の隙間をぬって内側に入り込んだときに感じる3層目の高さのせいでしょう。
本当に居心地のよい空間で、スカスカかと思いきや、建物にしっかりと覆われている感覚があって、不思議な閉鎖感がありました。西沢立衛さんが話の中でもおっしゃられていましたが、意外と閉鎖的で、外から入ってくる人はそんなにいない。でも、近所のおばさんや顔見知りの人はそこを通り道として使っているそうです。一度完全に屋外に出ないと風呂にアクセスできないので、クライアントである森山さんは、風呂場から自室までいくのに、下着姿で屋外を横切るそうです。
森山邸は様々な機能が一つ一つ違った箱に収められ、それが完全に空間として分断されています。でもそれぞれの箱が関係性を持ちながら隣り合っているので、中庭は、「庭」というよりは「廊下」として機能しているかのようです。庭に雑然とおかれた洗濯機も、その廊下らしさを一段と強調していました。
森山邸のプランは妹島和世さんが「岐阜県営住宅ハイタウン」で行ったような個の自立を目指しているようでいて、少し違います。というのも「岐阜県営住宅ハイタウン」では家族という括りの中で個人を外部と直接繋げることにより家族からの自立を目指しています。その操作は家族という集合体の内部における関係性を劇的に変貌させています。しかし外部に対しては実はその関係性はさほど変わりません。家族という内側でその関係性を変えても、家族そのものを一括りにする装置として住宅が機能しているからです。
森山邸の場合、家族というもの、個人というものと外部との関わり方そのものに大きな変化を与えます。近隣の人々が自由に住宅の中を行き来できるというのは、地域に対する感覚をより穏やかなものにするのではないでしょうか。
2011年5月24日
第一回子ども建築塾
ついに伊東塾1回目の「子ども建築塾」が行われました。
全部で20名ほどのボランティアスタッフの学生の方々と、子ども達に保護者の皆様、見学者等、総勢80名ほどの方々が神谷町スタジオまでお越し下さいました。
1回目は子ども達が「自分の住みたい家」と題して造作した絵を、各自の自己紹介をふまえながら、見せ合いました。私も子ども達の絵は初めてみたのですが、非常に独創性に溢れたものが多い中に意外と現実的な案混じっていたりすると、不思議とそういったものはそれはそれで独創的に見えてしまいます。恐らく現実にそれが存在することを、より意識の中で具現化しやすいが為に、その不可思議さが際立つのでしょうか。
どの案も魅力的なものばかりで面白かった反面、ほぼ全ての子達が家というと壁があり屋根があり、窓がありという基本構成を忠実に守っていたことにもまた驚かされた気がします。なんならもっとそういった枠組みから脱却していてもよかったのかもしれませんが、しかしそういった基本を抑えていないものを果たして家と定義づけてといのかはわかりません。
これから子ども達は伊東塾で、空想の世界で作り上げた建築をいかに現実と調和させていくか、その道筋を学んで行くわけですが、空想を現実に落とし込む作業というのは基本に忠実になることではないような気がします。その基本概念というものすら打破するような現実を生み出すことは、空想をめげることなく蓄積し続ければ可能なのではないでしょうか。
少し支離滅裂な感想文になってしまいましたが、要約して言いたかったことは、元気な子ども達ばかりでしたので、これからの進展が楽しみだということです。